静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

JFLの洗礼を受けた開幕戦vsソニー仙台FC

「東部からJリーグへ」そう聞いてすぐに理解できる人は、あまりいないと思う。いきなり何のことだろう? って。だからこそ、大きな声で言いたいことがある。「みんなでJリーグを目指すときが来たんだ!」

“サッカー不毛の地”に芽吹く僕たちのチーム

サッカーが盛んな静岡(ここ10年を鑑みるとサッカー王国と言えないのが辛いところなんだけど)にあって、最も地位が低い静岡県・東部地区。選手権大会、高校総体、このすべての県大会において、東部地区の高校が頂点に立ったことはないし、清水エスパルス、ジュビロ磐田、Honda FC、藤枝MYFCはいずれも中西部に籍を置くチームだ。かつて東部を拠点にするジヤトコというチームがJFLにいたことがあったが、在籍5年で解散してしまった。

“東部”とはそんな地域だった。“王国の中の不毛地帯”なんて呼ばれることもあった。沼津市の小野伸二は、清水商業高校へ。三島市の高原直泰、富士市の川口能活や小林大悟は東海大一中へ。函南町の内田篤人は清水東高校を目指したように、東部地区のサッカーが上手い中高生は、中部の学校やクラブチームに行くのが“当たり前だった”。ここはあえて過去形にしたい。なぜならその東部からJリーグを目指しJFLを戦うチームが現れたから。

その名もアスルクラロ沼津。

チームは1970年代に創設され、2012年に東海社会人リーグ2部に参入し初年度でいきなり昇格。2013年には東海社会人リーグ1部を戦った。2014年からは4部にあたるJFLを戦い、来年度のJ3を目指しているチームだ。

アスルクラロ沼津のJFLが開幕!

アスルクラロ沼津の開幕戦は、0-2という結果に終わった。しかし、「やれないことはないことがわかった」と、ボランチ高野の試合後のコメントにもあったように、決して下を向くような内容ではなかったとも言える。
 
3月16日、ここはユアテックスタジアム仙台。初めてJFLを戦うアスルクラロの開幕戦の相手は、経験豊かなソニー仙台FC。
 
今期から監督に就任した望月一仁監督は、「一点差勝負の厳しい戦いになる。どれだけ我慢できるかがカギ」と試合前に語っていたが、そのプランは早々に崩されてしまうことになる。
 
ソニー仙台のキックオフで始まった試合は、出だしこそまずまずのできで、チームは落ち着いているかのように見えた。岡庭のスピードを活かしたドリブルがあったり、右サイドバックに入った犬塚が起点になったりと右サイドを中心にリズムある攻撃も見られた。
 
しかし、前半22分、27分とソニー仙台のフォワード内野の右足とヘディングで繰り出されたシュートが、アスルクラロのゴールを割ってしまう。それは15年以上このリーグで戦ってきたチームからの、“JFLの洗礼”とでも呼ぶべきものだったのかもしれない。選手たちは一様に、天を仰ぎ見た。
 
望月監督が「守備の要」と呼ぶキャプテンマークを付けた東間の予想外の交代が痛かった。初めの15分で負傷し苦渋の顔を見せたチームの大黒柱は、前半17分でベンチに引き下がる。この交代は、“JFL1年生かつ開幕戦”というアスルクラロにとって、致命傷になってしまった。そこから守備の足並みが揃わず、ソニー仙台の両ワイドを広く使った攻めに翻弄された。
 
均衡が破られるのは時間の問題だった。左サイドをタッチライン際まで攻めこまれた22分にはグランダーからのクロスボールをダイレクトシュートで。27分にはコーナーキックからの流れで、キーパーのクリアーが小さくなったところをヘディンシュートで。早々に2点のビハインドを背負ったアスルクラロは、前線の動きが足りず、攻撃の流れがつかめないまま前半終了のホイッスルを聞くことになった。

息を吹き返した後半の戦い

両チーム交代なしで始まった後半。前半のシュートが2本で終わったアスルクラロにあって、後半開始3分でのエースナンバー10番を背負う小暮のシュートは、何かを予感させるものだった。
 
「もうね、行ってやろうと思ったんですよ。攻めるしかないでしょ」ジュビロ磐田などで活躍したチームで最も経験が豊かな犬塚が、試合後にそう話したように、右サイドを中心とした攻撃にリズムが出てくる。29分には、右サイドを突破し、中央で待っていた小暮がシュート。このシュートは大きく枠を外れたが、チーム1の技量を持つ彼がボールに触る機会は前半に比べて格段に増え、チームにリズムが生まれた。
 
何とか一矢報いたいアスルクラロは、後半33分には岡庭を下げ村上を投入。高野を最終ラインに小暮をボランチに下げて、身長の高いセンターバック西村を前線に配置し、パワープレイに出る。
すぐに右サイドからビッグチャンスが生まれるが、ソニー仙台の粘り強い守備でシュートを打たせてもらえない。35分、38分の柳澤と犬塚によるミドルシュートもゴールを揺らすことができない。終了間際には、小暮の決定的なシュートが放たれるも、相手キーパーの好セーブに阻まれてしまい、そのまま試合終了のホイッスルを聞くことになった。

3月23日ホーム開幕戦に向けて

前半は中途半端だった守備の意識。「きちんと構えてからプレスに行こう」とハーフタイムに話し合った結果、後半は修正することができた。「開き直って攻めに行こう」と思い切って攻め上げることで、両サイドの攻防戦で優位に立つこともできた。後半に見られたチームの躍動は、今後の明るい兆しを感じさせるものだった。
 
3月23日に愛鷹広域多目的競技場でむかえるホーム開幕戦。駆け付けてくれたサポーターに良い結果を見せるため、チームは前を向いて突き進む。
 
「今日の敗戦は受け止めたうえで、切りかえてホーム開幕戦を戦いたい」そう語る望月監督の目は、熱を帯び、しっかりと前を見据えていた。
 
東部地区からJリーグへ。彼らの戦いはまだ始まったばかりだ。
 

DATA

試合結果

JFL ファーストステージ第1節 (会場:ユアテックスタジアム仙台)
ソニー仙台FC(2-0)アスルクラロ沼津
得点者:内野裕太22” ,27”(仙台)

メンバー)
FW 11.緑悟(→6.真野亮二[後半13分]) 9.畑直樹 MF 10.木暮郁哉 14.柳澤隼 17.岡庭和輝(→7.村上聖弥[後半23分])20.高野光司 DF 8.犬塚友輔 3.西村竜馬 2.東間勇気(→29.奥田秀吉[前半17分]) 25.馬場将大 GK 30.石田良輔

ページの先頭へ