静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

価値ある"新静岡ダービー"vs Honda FC

ここ20年、静岡ダービーといえば「清水エスパルス対ジュビロ磐田」だが、その歴史は深い。JFLの前身であるJSL。このリーグでの静岡ダービーは「ヤマハ発電機対本田技研工業」だった。アスルクラロ沼津の望月一仁監督自身も’80年代には、ヤマハの一員としてこの旧静岡ダービーを戦った1人だ。そんな静岡のダービーマッチ史に、「アスルクラロ沼津対Honda FC」という新たな1ページが生まれた。

“勝ち点1”より遥かに価値のある引き分け

「力の差があるホンダという格上相手に、選手たちはよく守り抜いてくれたと思います」(望月一仁監督)

JFL最多優勝を誇り、開幕から2連勝で波に乗るHonda FCに対して、一試合通して互角に渡り合うことができたアスルクラロのリーグ第3戦。
結果的には、豪雨と強風のなかでは当然とも言えるスコアレスドロー。しかしその最悪に近いピッチコンディションということを差し引いても、この勝ち点1はアスルクラロにとって数字以上の価値がある。

試合後に見られた選手たちの充実感あふれる顔。それがすべてを物語っていたと思う。

オレたちは十分に戦う力がある──。

選手たち、監督、サポーター、チームスタッフ。誰もがそう感じたに違いない。

 

豪雨、強風というなかでの激しい戦い

ホンダの本拠地・浜松に乗り込んだアスルクラロ。
試合前に、「両サイドがカギになる」と望月監督が話していた通り、両サイドバックの尾崎瑛一郎と馬場将大が、集中力のあるプレーでチームに落ち着きをもたらす。

試合開始5分を過ぎた頃から雨脚が強まり、ピッチは水浸し。グラウンダーのパスやドリブルがままならない状況に、両チームともボールを前線へと放り込む戦いが強いられる。

先にチャンスを作ったのはホンダ。前半29分に、連動性のある攻めでアスルクラロのゴールに迫るも、シュートまでは至らない。

「まずは守備から。前節までの反省を踏まえ、飛び込まずに我慢することができた」
約10年ぶりにキャプテンマークを巻いたという犬塚友輔。この日ボランチに入った彼が、試合後にそうコメントした通り、課題だった“守備の統一感”が改善され、ホンダのテンポある攻撃を上手く封じていた。

前半39分。左サイドを駆け上がった畑直樹からパスを受けた、岡庭和輝がシュートを放つも枠を捉えきれない。

両チームとも決定的なチャンスをつかめないまま、前半終了のホイッスルが鳴った。
 

“決定的チャンス獲得”も得点には至らず

「守備から入って、カウンターを狙っていこうと話しました」と岡庭和輝が語ってくれたように、後半に入ると、この日先発復帰を果たした彼と尾崎のいる右サイドが試合の中心になる。
「ハーフタイムには、ピッチコンディションが良い右サイドを中心に攻めようという話をしました。もちろん、相手も同じサイドから攻めてくるだろうと思っていましたけど」と試合後の尾崎。
経験豊かな彼が、闘志溢れるプレーで相手のサイド攻撃を押さえると、その右サイドでビッグチャンスが生まれた。

カウンターからの岡庭のドリブルによって生まれた決定機。シュートには至らないが、そこで得た間接フリーキックは、相手ゴールまで約5メートルの距離。

ゴールは確実と思えたこの日最大のビッグチャンス。しかし、あと少しというところで、ホンダの執念のブロックによってはじき出されてしまった。

その後は、再三にわたってホンダのリズムあるコンビネーションが見られた。幾度となくペナルティエリアに侵入される。対するアスルクラロも最後の最後で体を投げ出してブロック。

両チームにゴールが生まれないまま、試合終了のホイッスルとなった。
 

“アウェイ”を感じさせない戦いができた理由

コンディションの悪いピッチがモロに影響する“細かなパスワーク”が特徴のホンダ。その意味で、地の利があったのはアスルクラロだ。それにもかかわらず、「いい状態のグラウンドでホンダとやりたかった」と監督も選手たちも口をそろえて言っていたのが印象的だった。

きっと“JFL上位陣とも互角に戦える”という確信を得たうえでのコメントなのだろう。試合終了後には、自信に満ちた彼らの表情があった。

開幕2戦を終え、バタつきを乗り越えたというのもある。急造だったチームに一体感が出てきたこともある。

だが、もっと大きいのは、アウェイにもかかわらず駆け付けてくれたソシオ(サポーター)の姿だろう。彼らの声が、アスルクラロの背中を押したのは間違いない。

次節は、そんなソシオの声が数倍にもなるホーム第2戦。相手は東海社会人リーグ時代からの宿敵FCマルヤス岡崎。昨年は2連敗と苦汁をなめた相手なだけに、絶対に負けられない。

体調不良で今節スタメンを外れた木暮郁哉が、Honda相手に引き分けたチームに上手く融合すれば、勝利は遠くないはずだ。

DATA

試合結果

ファーストステージ第3節(会場:Honda都田サッカー場)
Honda FC(0-0)アスルクラロ沼津
メンバー)
FW 11.緑悟 9.畑直樹(→27.真野直樹[後半25分]) MF 17.岡庭和輝 14.柳澤隼 8.犬塚友輔 6.真野亮二 DF 25.馬場将大(→4.西田翼[後半4分]) 20.高野光司 3.西村竜馬 GK 30.石田良輔
 

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