静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

"アスル劇場"の始まりだ! vs 栃木ウーヴァFC

-JFLセカンド・ステージ第3節(2014.08.02)-

開幕から2戦続けて「勝点3」を取りこぼしたアスルクラロ沼津が、栃木ウーヴァFCを相手に求められるものは、ただひとつ。勝利のみだ。ファースト・ステージは敵地・栃木での試合だった。試合内容で圧倒しながらも悔しい引き分けに終わったことを筆者は鮮明に覚えている。きっとアスルクラロの選手たちもあの試合の悔しさを忘れていないだろう。そして、Jへ突き進むためにも、ここから連勝を重ねていくほかないことも自覚しているはずだ。この試合で流れを作り、上位進出への足がかりとしてほしい。

選手全員で掴んだセカンド・ステージ初勝利!

「(セカンド・ステージに入って)バランスということに引っ張られて思い切ったプレーが消えてしまっていたので、今日はみんながアグレッシブなサッカーをしようと声を掛けました」という望月一仁監督の言葉通り、この日はチーム全員が、躍動感あふれるプレーでグランドを駆け抜けた。
 
特にセカンド・ステージに入って、少し積極性を欠くようになってしまった両サイドの攻撃が、勢いを取り戻した。望月監督は言う。
 
「中央でタメを作りながら両ワイドの背後を取るというサッカーをしたかったので、両サイドのハーフがどれだけスペースに飛び出せるかが大切だと思っていました」
 
この試合で生まれた2ゴールが、村上聖弥と蔵田岬平という両サイドハーフによるものだったことも、先の望月監督の言葉を裏付けるものだ。
 
残り5分で決めた勝ち越しゴールを守り切ったアスルクラロは、セカンド・ステージ初勝利を掴んだ。そして、ここから連勝を積み重ねていくことを期待させる素晴らしい内容でもあった。

チームを鼓舞してきた尾崎瑛一郎が不在の中で

「前の試合では、尾崎さんが中盤の底のポディションでバランスを取ってくれていたので、センターバックとしては、背後と斜め横だけケアすれば良かった。ツーボランチの間を突かれると、僕らセンターバックが吊り出されてやられてしまうと思ったので、しっかりそこを締めてもらうようにしました」
 
アンカーのポディションで相手の攻撃の芽を摘んできた尾崎瑛一郎が、出場停止による不在という中で、センターバックの西村竜馬はしっかりと連携を強めることができたと話す。
 
普段は中盤でプレーする中野翔太が右サイドバックを務めるなど、変則的なポディションだったにもかかわらず、チームは立ち上がりから問題なく試合に入っていったのは、守備の意思統一がしっかり取れていたからに違いない。
 
次第に、試合のペースはアスルクラロが握るようになる。特にボランチに入った木暮郁哉が、長短織り交ぜたパスでチームにリズムを生んだ。
 
前半23分には、先発に復帰した柳澤隼が前線でタメを作り、真野亮二へ。真野が放った右足でのシュートは、相手ゴールキーパーの意表を突くニアに。しかしこれは惜しくもポストに弾き返されてしまう。
 
立て続けに攻めるアスルクラロは、ついに前半29分。相手の裏のスペースに抜け出した蔵田が体を張ってボールをキープし、駆け上がってきた村上に丁寧なラストパスを渡す。これをきっちり決めたアスルクラロが先制点を奪取。
 
しかし、その直後の34分。自陣でのミスで相手にボールを奪われ、セカンド・ステージでも得点を奪われた安間ム月に同点ゴールを許してしまう。
 
「相手のショートカウンターに対してもっとリスクマネジメントを取っておけば、失点の場面も防げたと思うので、そこをもっとディフェンスラインで詰めていきたいですね」とセンターバックの西村は反省の弁を述べる。
 

残り5分での勝ち越しゴール!

前半を1対1のまま折り返すと、暑さのせいか試合はこう着状態に。そんな中、チームのリズムを作っていた木暮が負傷交代。それでも後半17分には、蔵田の突破でフリーキックを得る。しかしこのチャンスは再びポストに阻まれてしまう。
 
セカンド・ステージで引き分けた記憶が頭をよぎり始めた後半40分。ついに勝ち越し弾が生まれる。
 
途中交代で入った地元・沼津出身の真野直紀が豊富な運動量でスタジアムを沸かせると、こちらも後半途中から出場した緑悟が、相手ペナルティエリアで粘り強くキープして、逆サイドで待つ蔵田へパスを送る。
 
このパスを蔵田は得意の左足を振りぬく。そして、ボールはゴールへと勢い良く滑り込んだ。勝ち越し弾だ!
 
「ここ2試合、チームに貢献することができていなかったんですが、今日ようやくチームのために結果が出せました」と試合後、蔵田はホッとした面持ちで、ファンに挨拶をした。
 
ロスタイムを含めた残り10分は、栃木のパワープレーによる捨て身の攻撃に出るも、東間勇気、石田良輔を中心としたアスルの守備は集中力を切らさない。
 
そして試合終了。何よりも欲しかった勝点3を手にした。内容も、失点シーン以外は完璧に近い。ここから“アスル劇場”が始まる予感をさせる試合であった。
 

PICK UP

J1、J2、年代別日本代表と経験豊富な木暮郁哉が目指すもの

「自分の特徴は、ボールにたくさん触ってリズムを作ること。なので、今日みたいにより低い位置でボールを動かして、チームを上手く機能させられればと思っています」
 
そう語る木暮郁哉の表情は、ファースト・ステージのときに比べて明らかに柔らかい。それには理由がある。
 
「ファースト・ステージは、自分の個人の結果にこだわりすぎていました。今は、チームのことを第一に考えるようになりました。その中で自分の結果も伴えばいいなと思っています」
 
Jリーグ経験者、年代別日本代表と輝かしい経験の呪縛のようなものから解き放されたのかもしれない。自分の将来のためにも、チームへの貢献が重要だ、という頼もしさを感じさせる言葉も出てきた。
 
「より多くの得点、アシストを決めたい気持ちはもちろんありますし、目に見える結果を残したいと思っています。一方で、Jリーグを経験している自分たちみたいな選手がこのチームを引っ張っていかないといけないと感じています。自分の経験をチームに還元して、それがチームのためになればそれが一番。それは結果的に自分のためにもなると思うので」
 
もちろん、チームのクオリティをもっともっと上げないと上位進出が難しいことはわかっている。
 
「チームの方針としては、ボールをポゼッションしながら攻めて行くというものですけど、自分たちがグランドの中で判断して攻撃の狙いを変えていく。そういった状況判断力を上げていけば、もっともっと良い攻撃ができるようになるのかなと思います。あとは、相手のペースになった時間帯に、どう自分たちのリズムに戻すかをもっと詰めていきたいです」
 
最後に静岡県東部・沼津のみなさんに一言。
 
「沼津のみなさんにすごく楽しいサッカーを見せられれば、自然とサポーターもついてきてくれると思うので、常に一生懸命頑張っていきたいです。ぜひ今後も応援よろしくお願いします!」
 

DATA

試合結果

セカンド・ステージ第3節(会場:愛鷹広域公園多目的競技場)
アスルクラロ沼津(2-1)栃木ウーヴァFC
メンバー)
GK 30.石田良輔 DF 16.中野翔太 2.東間勇気 3.西村竜馬 25.馬場将大 MF 31.尾崎瑛一郎 32.蔵田岬平 10.木暮郁哉(→8.犬塚友輔[後半14分]) 7.村上聖弥(→緑悟[後半40分]) 20.高野光司 FW 14.柳澤隼(→真野直紀[後半34分]) 6.真野亮二

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