静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

スルガ銀行マッチでみせたアスルクラロ沼津の"意地" vsレノファ山口FC

-JFLセカンド・ステージ第5節(2014.08.24)-

勝ち続ける以外に、Jへの道筋は開けない。そんな気持ちで挑んだ第3節は、見事に勝利をもぎ取ったが、第4節のMIOびわこ滋賀戦は台風の影響で延期。勢いに乗りたいアスルクラロ沼津にとっては少し不運だったと言えるかもしれないが、チームに対する沼津のサポーターの期待は大きい。この日は2,883人というたくさんの観客が、愛鷹の地に駆け付けた。今節の相手は、アスルクラロと同じくJを目指すファースト・ステージ6位のレノファ山口FCだ。勝利への期待値はいつもにも増して大きいのだが……。

20本のシュートを放つも勝てなかった理由

前半に6本、後半は実に14本というシュートを相手ゴールへ浴びせるも、シュート数7本のレノファに3-4で敗戦を喫したアスルクラロ。
 
経験豊富なレノファのミッドフィルダー平林輝良寛の鋭い切り込みにセンターバックの西村竜馬が、堪らずPKを献上し、前半11分に失点。2失点目は、センターサークル付近からのフリーキックを押し込まれる形で、後半16分に奪われた。ただ、その時はまだ“勝てる”という思いが望月一仁監督にはあった。
 
「2点失っても、1点取れば逆転できるくらいのイメージは持っていたので、焦らずにやってほしかった」と望月監督。実際、試合の主導権を握り、多くのチャンスを掴んでいたのはアスルクラロだった。
 
しかし、まだいけるという監督の気持ちとは裏腹に、チームは自陣でのパス回しでミスが出る。簡単に相手へとボールを譲り渡すと、なす術なくレノファにゴールネットを揺らされてしまった。痛すぎる3失点目。この時点で残り時間は約20分。
 
「2点取れたといっても、チームが勝たないと何も意味がない」と残り10分で2つのシュートを相手ゴールに突き刺したボランチの木暮郁哉も厳しい表情を浮かべる。
 
木暮の2得点を含むファースト・ステージ第9節以来となる3ゴールを奪うも、アスルクラロの反撃は一歩及ばす。3-4という結果に終わった。
 

PKで失点するも、試合の主導権を握ったのはアスルクラロ

キックオフと同時に主導権を握ったのは、風上に位置するレノファだった。その攻撃力は、ファースト・ステージの「25」という得点が証明している。序盤、レノファの勢いに圧倒されたのか、アスルクラロのディフェンスラインはいつもより少し下がってしまった。
 
前半10分。レノファがビッグチャンスをつかむ。キャプテンマークを巻いた平林輝良寛が左サイドからディフェンダーの懐に入るような鋭い切り込みを見せた。対応したアスルクラロのセンターバック西村竜馬は、堪らず相手を倒してしまう。主審・池田一洋の判定はPKだった。
 
キッカーは岸田和人。右隅に飛んだシュートにしっかりと反応したアスルクラロのゴールキーパー石田良輔だったが、わずかに届かずボールはゴールへ吸い込まれた。
 
しかし、この失点でアスルクラロは目を覚ました。すぐに自分たちが目指す繋ぐサッカーの歯車が噛み始める。
 
「(アスルクラロ)沼津さんは、組み立てやビルドアップがうまくて、対応に疲れました」とレノファを率いる上野展裕監督も話したように、主導権は完全にアスルクラロにあった。実際、レノファの記録されたシュートは、PKでの1本のみだ。
 
25分には左サイドから崩し、今節は試合開始からフォワードに入った蔵田岬平が得意の左足を振り抜くも、シュートは枠の外へ。31分には、右サイドからの横パスを受けた左サイドハーフの村上聖弥が、中央に切り込んでミドルシュート。得意の左足でのシュートだったが、これも枠を捉えられない。
41分には、うまく裏に抜け出した右サイドハーフの岡庭和輝がセンタリングを上げる。
 
このボールに反応したのは逆サイドの村上だ。「背は高くないんですけど、ヘディングは得意なのでいつも狙っています。前半のチャンスは決めないとダメ」と村上が話すように、シュートはわずかに枠の左を抜けていった。会場からは思わず大きな溜息が漏れた。
 
試合を支配していた割に、相手ゴールを脅かすようなシーンは少ないまま前半終了のホイッスル。
 

残り10分で見せたアスルクラロの意地

「前半は、みんなが裏を狙いすぎてしまい、なかなかチャンスにならなかった。そこをハーフタイムで修正して、フォワードが中央でタメを作る役割にまわった。前線にいい段差が生まれて、後半は裏を取れるようになりました」
 
そう試合後に話したのは村上だ。実際に後半最初のチャンスを掴んだのもアスルクラロだった。
後半4分には、右サイドからうまく組み立てたボールが中央で待つ村上へ。しかし、枠にいったシュートも、レノファゴールキーパーの一森純がきっちり防ぐ。
 
「ハーフとサイドバックの距離感が良かったので、両サイドともよく侵入できていた。お互いに一人ではなくコンビでやろうという意識もあったと思う」と望月監督が話すように、後半13分、左サイドバックの馬場将大から裏に出されたパスに反応したのは、同サイドの村上。うまく中央で待つ岡庭にクロスボールを上げるも、センタリングを予想していた一森に阻まれる。しかし、そのこぼれ球が右サイドバックの尾崎瑛一郎にこぼれてくる。相手ゴールキーパーはまだ倒れたままだったが、このシュートは枠を大きく外れてしまう。
 
上野監督が「ハーフタイムにはカウンターで点を取ろう、そうすればまた有利に試合を運べるぞと話しました」と語ったように、したたかなサッカーを狙っていたレノファの攻撃が、功を奏する。
 
後半16分、50メートル近くの距離を残すフリーキックをゴール前まで蹴り込み、宮城雅史、岸田と繋ぎ、最後は宮城が右足を振り抜くと、ボールは見事にアスルクラロのゴールへ入っていった。
 
さらに、前掛かりになったアスルクラロは後半22分。自陣でボールを奪われ、この日2点目となる岸田のゴールを許してしまう。これで3点差だ。
 
「3点目の失点が痛かった。もっとリスク管理をするというところで、まだまだ足りないのかなと思います」とは望月監督。
 
「うちのように繋ぐサッカーをするうえでは、3失点目のような繋ぎの段階でのミスは必ず出てくる。そのときのディフェンスのリスク管理や自分(キーパー)の準備が大切なのだと思います」と悔しそうに語ってくれたのは石田だ。
 
繋ぐサッカーを目指すうえで、ミスは付きもの。それを見越して、リスク管理をしていかないといけない。それは望月監督がこれまで何度も口にしてきたことなので、チーム全体で意識していたはずだ。おそらく2点目を失ったことで怠ってしまったのだろう。
 
さらに後半37分には、西村がこの日2枚目のイエローカードで退場。アスルクラロは窮地に立たされた。
 
しかし、ここから“意地”を見せる。退場劇のわずか1分後に、ボランチの中野翔太から蔵田へと繋ぎ、最後は木暮の地を這うようなシュートが、ゴール右隅に突き刺さる。
後半45分、一瞬の隙を突かれ1-4と再び3点差にされるも、アスルクラロは挫けない。
 
ロスタイムには、足が止まったレノファに対し、次から次へとゴール前に入り込んでいくアスルクラロの攻撃陣。途中交代で村上の替わりに入った地元沼津出身の真野直紀が泥臭くボールを繋ぐと、こちらも途中交代で入った真野亮二がミドルシュート。このシュートが相手の足をかすめて、相手キーパーの頭上を越し、ゴールへ吸い込まれていく。しかし、クロスバーに弾かれてしまうが、岡庭と替わって入った緑悟がヘディングで押し込んだ。
 
さらにその2分後には、中野、蔵田と繋ぎ、右サイドで待ち受ける尾崎へ。尾崎のシュートは相手ディフェンダーに阻まれるも、ボールは勢いで勝るアスルクラロ木暮のところへ。これを執念でゴールに蹴り込み3-4。
 
残り1点差にまで追いつく。会場はこの日一番の盛り上がりを見せ、いよいよ同点かと思われたが、アスルクラロに時間は残されていたなかった。そのまま試合再開とともに試合終了のホイッスルが鳴った。
 
「最後はヒヤヒヤした」というレノファの上野監督の言葉通り、同点まであと一歩だった。この日は“スルガ銀行マッチ”で、初めてゴール裏も開放された。そのかいあってか、観客は2,883人も駆け付けた。残り10分のアスルクラロの勢いは、その誰の目にも焼き付いたことだろう。
 
もちろん勝たなければいけない試合だったことは間違いないが、それ以上に戦う姿というのもサポーターに印象づけた。残り9試合。アスルクラロのイレブンには、誰一人として「J」を諦めている者はいない。優勝するのは奇跡かもしれない。ならばその奇跡を起こすまでだ。そのためにもこれまで以上の声援を選手たちに送りたい。
 
 

PICK UP

左サイドバックで躍動する馬場将大の目指すもの

「リーグ序盤で捻挫をしてしまい、なかなかメンバーに入れず、チームに貢献できませんでした。でもしっかりとトレーニングを積んだ結果、今は試合に出させてもらえています。だからなんとかチームに勝利をもたらしたいと思っています」
 
昨シーズンはアスルクラロの敵である東海1部リーグのFC岐阜セカンドに所属していた馬場将大。しかし、もっと上のレベルでサッカーがしたいとアスルクラロにやって来た。
 
「前の選手がプレーしやすいようにサポートすることを意識しています。繋ぐサッカーをする中で、サイドバックの僕がパスに絡むことは多いですが、単純にダイレクトではたいてしまうのではなく、しっかりと相手を引き寄せてからパスをするようにしています。それから、自分は体力があるほうなので、前の選手を追い越すような動きでオトリになったりするのが自分の役目だと思っています」
 
持ち前の体力を武器に、90分通して左サイドを駆け上がる。オトリになれればと謙虚に語るが、サッカー選手に必要な“欲”も併せ持っている。
 
「得点にも絡みたいですね。どちらかと言えば、攻撃的なサイドバックを目指しているので、攻撃面でもチームに貢献したい。そろそろ得点やアシストといった、得点に絡むようなプレーも出さないといけないなと思っています」
 
今年で24歳。JFLで留まるつもりはない。
 
「もっと上のレベルでやるという目標を持っています。そのためにも、まずはここアスルクラロの勝利、そして昇格のために一生懸命頑張りたい。もちろんセカンド・ステージ優勝を狙いますが、まずは1試合1試合を勝っていく以外ない。しっかりと切り替えて、次のFCマルヤス岡崎に勝ちたいと思います」

DATA

試合結果

セカンド・ステージ第5節(会場:愛鷹広域公園多目的競技場)
アスルクラロ沼津(3-4)レノファ山口FC
メンバー)
GK 30.石田良輔 DF 31.尾崎瑛一郎 20.高野光司 3.西村竜馬 25.馬場将大 MF 16.中野翔太 10.木暮郁哉 17.岡庭和輝(→11.緑悟[後半33分]) 7.村上聖弥(→27.真野直紀[後半39分]) FW 14.柳澤隼(→6.真野亮二[後半26分])32.蔵田岬平

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