静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

来年こそJへ! vsソニー仙台FC

-JFLセカンド・ステージ第12節(2014.11.02)-

今季のホーム最終戦の相手はソニー仙台FC。アスルクラロ沼津にとって初のJFLの試合となった今季開幕戦の対戦チームでもある。3月16日のあの時は、“JFLの洗礼”ともいうべき展開だった。試合時間のほとんどをソニー仙台に圧倒され、アスルクラロは自分たちのサッカーがほとんどできなかった。あれから20以上の試合経験を経て、チームは確実に変わってきている。その手応えを確かなものにするために、そして来季の飛躍のために、チームはホーム最終戦で勝利を目指す。

悔やまれる逆転負けでホーム最終戦を終える

「最後の試合に勝てなかったこと、この1年間結果が出せなかったことは非常に悔しいですが、チームに携わってくださったすべての皆さまに感謝しています。この結果は選手1人ひとりが重く受け止め、今後に繋げていくしかないと思っています」
 
試合後、ゲームキャプテンを務めた尾崎瑛一郎は、サポーターに向けてこう話した。しかしチームは確実に成長しているというのも事実だ。反省点ばかりではない。
 
「開幕戦は前半からソニー仙台に圧倒されて、後半も自分たちのサッカーがほとんどできなかった。それに比べれば、自分たちの時間も作れたし、先制点をあげることもできました」と望月一仁監督が話すように、開幕戦で圧倒されたソニー仙台に対して、一歩も引けを取らなかった。
 
前半11分には、蔵田岬平がチーム最多となる今季6点目をあげた。約30メートルのフリーキックを左足で一閃。ボールは、雨で濡れたグラウンドを滑り、相手ゴールへと吸い込まれていった。
 
しかし、そこから流れは15年以上をJFLで戦うソニー仙台のものになる。スピードを活かした攻撃で、右サイドを中心にアスルクラロを攻め立てる。するとついに35分、ファースト・ステージでもアスルクラロ戦で2得点をあげた内野裕太が同点弾を放つ。
 
さらに後半残り10分を切ったところで、途中交代で入った村田純平が逆転ゴール。シュート数では同数だったものの、決定力に勝ったソニー仙台が2-1で接戦を制した。
 

できたこと、できなかったこと

雨に濡れたグラウンドを上手く利用し、先制したのはアスルクラロだった。キック直後からアグレッシブな戦いを繰り広げ、久々の先発となった畑直樹や中野翔太も積極的なプレーをみせる。前半5分にはボランチの中野からパスを受けた畑がミドルシュート。わずかにゴール左に外れたものの、チームは勢いに乗る。
 
すると、前半11分に蔵田が倒されてフリーキックを得る。この30メートル級のフリーキックで蔵田自身が直接ゴールを狙うと、スリッピーなグラウンドを滑ったボールは、左ポストにあたってそのままゴールイン。1-0、先制点はアスルクラロだった。
 
しかし、早々にあげた先制点が選手たちの積極性を失わせてしまい、ソニー仙台の攻勢が始まる。特に右サイドを中心に攻めこまれた。
 
この日もボランチで、豊富な運動量と高い技術でバランスを取っていた木暮郁哉は言う。
 
「相手が右サイドから攻めてきている。それならばどうするべきなのか。それをピッチの中で選手自身が気づいて、自分たちで修正していくということができなかった。これは今後チームが成長するためには不可欠なことだと思います」
 
監督からのコーチングだけでは、試合の流れを変えることはできない。グラウンドに立っている選手全員が、同じ意識を持ってチームを立て直す。それができないとさらなるレベルアップはできないのかもしれない。
 
そうした中で、前半35分には同点弾を浴びてしまった。後半に入ってからも、試合の流れを取り戻すことはできなかった。ただ、球際の激しさや戦う意識は確実についてきた。
 
最終的には、ソニー仙台のリズムの良いパス交換からの村田のシュートで逆転されてしまったが、後半38分まで相手の勢いに乗る攻撃を凌ぐことができたのは、そうした気持ちの部分がチームに根付いてきたからだろう。
 
逆転されたあと、最後の10分間には相手ゴールに迫ることもできた。諦める選手は1人もいなかった。「来年こそJへ行くんだ」という気迫のようなものが、スタジアム全体を包んだ。
 
結果は1-2と、ホーム最終戦を勝利で飾ることはできなかったが、今季1年間での成長が見えた試合でもあったことは確かだ。試合後の会見で望月監督はこう締めくくった。
 
「皆さまのサポートのおかげで、選手たちは成長し、最後まで諦めないで戦えるチームになることができたと思います。力強さ、球際の激しさも出てきて、セカンド・ステージには順位もあげていくことができました。ただ、これよりも上にいかないとJ3にはいけません。そのためには、より突き詰めたサッカーをしなければいけない。でもきっと来年、選手たちはJ昇格という目標を成し遂げてくれると思っています。このチームがJ3に上がれるよう、来年も選手たちに寄りそうような応援をよろしくお願いします」
 

11年間アスルクラロの顔だった川村淳一の引退

地元・沼津出身で、アスルクラロを11年にわたって引っ張り、支えてきた川村淳一が、今季限りでの引退を表明した。ホーム最終戦のあと、彼の功績を讃えて、引退セレモニーが執り行われた。
 
静岡県リーグ、東海リーグ、そしてJFLへとアスルクラロがステップアップできたのは、この川村のおかげだといっても過言ではない。川村は愛鷹に駆けつけたサポーターに向けて、次のように感謝の意を述べた。
 
「今日はアスルクラロホーム最終戦に来ていただき、ありがとうございます。今シーズン限りでアスルクラロを退団し、現役を引退することに決めました。11年前にこのクラブに来て、地域を盛り上げるため、そして子どもたちのため、夢のあるプロサッカーチームを作りたいと活動してきました。
 
(昇格していく中で)夢が目標に変わり、現実のものとなってきました。夢をここまで進めてこられたのは、アスルクラロの山本社長をはじめ、スポンサーのみなさま、サポーターのみなさま、今まで携わってくれたスタッフ、選手のおかげです。
 
今シーズンはJに上がることは叶いませんでしたが、ここから先は後輩たちに託したいと思います。必ず夢を実現してくれると思います。そのためにもみなさまのサポートが大きな力となります。どうかこれからもアスルクラロの応援をよろしくお願いします」
 
そう語ると、昨年東海リーグを共に戦った真野直紀と佐野幸正や友人、家族らから、花束を受け取った。その目には熱いものが流れた。
 
川村の意思は残った選手たちが受け継ぎ、必ずやチームをJへと導いてくれるだろう。
 

PICK UP

山本浩義クラブ代表の来季に向けた意気込み

──1年間JFLを戦ってきて、手応えはいかがでしょうか。
 
「今シーズンは、昨シーズン(東海リーグ)を戦ったメンバーから一気にメンバーを入れ替えました。そうした中でファースト・ステージは、非常にチーム作りが難しく、なかなか勝ちきれない状況が続きました。しかし、セカンド・ステージは、何人か選手を補強したりして、安定した力を出せるようになり、勝てるようにもなってきました。ここにきてやっとチームの基盤ができあがったのかなという印象です」
 
──今年J3に昇格することは叶いませんでした。Jを目指すことはもちろんなのですが、クラブが目指す大きな方向性というものはあるのでしょうか。
 
「基本的には育成をしていきたいと思っています。それがうちのクラブの良さでもあるのですが、小さい子にサッカーを教えて、選手を育てていく。今はユースチームがないのですが、将来的にはユースを作って、バルセロナのような育成システムを目指したいと思っています」
 
──そのためにもトップチームが顔にならないといけない。
 
「そうですね。ここ数年は、とにかくトップチームがJに上がることを再優先にしたい。美しいサッカーとかプレーの内容よりも、とにかく勝って上にあがる。トップチームがJに上がれば、今度は育成年代からトップチームに入るような育成システムを確立したいと思っています」
 
──今年の観客動員数は、一試合平均1,800人ほどでした。この数字を2,000人、3,000人に増やすためには、何が必要なのでしょうか。
 
「もちろん地元の選手が出たり、看板選手と言われるような選手は不可欠だと思います。でもそれよりも大切なのは、勝つということ。サポーターの皆さまは、やっぱり勝つことを望んで足を運んでいます。ですから、地元の選手を育てつつも、良い補強をしながら勝てるチーム作りをしていくことが必要だと思っています」
 
──今季、繋ぐサッカーを目指してきたと思いますが、来季以降も同じようなサッカーを志向していくのでしょうか。
 
「もちろんポゼッションしながら点を取るバルセロナのようなサッカーができたら最高です。でも選手の質という意味では、バルセロナやJ1のチームと同じようなサッカーができるとは思っていません。パスを繋ぎ通そうとするとどうしてもどこかでミスがでます。ファースト・ステージはそのような形での失点も多かった。セカンド・ステージになって修正したように、Jに上がるまでは、カウンターで点を取りにいくようなリスクのない戦いもしながらでないと勝ち切っていくことは難しいと考えています」
 
──来年に向けてメッセージをお願いします。
 
「セカンド・ステージになって、ようやくチームの基盤ができました。今あるものを軸に来季は良い補強をし、もし来年も今年と同じレギュレーションであれば、どちらかのステージで優勝をしたいなと思っています。総合でも4位以内は目指します。そのためにはサポーターの力も必須です。ぜひ来年もここ愛鷹まで来て、大きな声援で選手を後押ししてください。よろしくお願いします」
 

DATA

試合結果

セカンド・ステージ第12節(会場:愛鷹広域公園多目的競技場)
アスルクラロ沼津(1-2)ソニー仙台FC
メンバー)
GK 30.石田良輔 DF 31.尾崎瑛一郎 33.金龍起(キム・ヨンギ) 3.西村竜馬 25.馬場将大 MF 16.中野翔太(→2.東間勇気[後半40分]) 10.木暮郁哉 9.畑直樹(→11.緑悟[後半25分]) 7.村上聖弥 FW 6.真野亮二(→27.真野直紀[後半32分]) 32.蔵田岬平
 

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