静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

今季最終戦を勝利で飾るも、昇格は来年以降に vs ホンダロックSC

-JFLセカンド・ステージ第15節(2015.11.15)-

2015年のJFLも残すところ一試合となった。アスルクラロ沼津の今季でのJ昇格は、前節ファジアーノ岡山ネクスト戦で途絶えたが、JFL参入2年目を良い形で終えるために、また一年間スタンドで応援し続けたサポーターのために、選手たちは全力で勝利を目指した。

鈴木将也・平岡将豪のゴールで勝利!

先制ゴールは、キックオフ早々いきなり生まれた。前半2分。尾崎瑛一郎が蹴ったフリーキックで相手の裏を取った道上隼人が、コーナーキックを獲得。この右サイドからのコーナーキックで、キッカーの蔵田岬平は、ニアサイドへとボールを蹴りこむ。
 
そこへ飛び込んだのは、今季累積警告による出場停止の1試合を除くすべての試合でフル出場を果たしたボランチ鈴木将也だった。左足アウトサイドで合わせての、ビューティフルゴール。アスルクラロは幸先のよいスタートを切る。
 
前半8分には、セカンド・ステージ第7節以来2度目の先発出場となった水木将人が、タイミング良く縦パスを入れると、前線に張っていた平岡がフリック。このボールに反応した岡庭和輝がシュートを放つなど、小気味よい攻撃が何度となく生まれる。
 
前半38分にも素早いカウンターで相手ゴールを脅かした。道上から左サイドを駆け上がった馬場将大にパスが渡ると、得意の左足でセンタリング。このボールが相手ゴールキーパーの頭上を超えて、逆サイドにいた平岡の下へ。平岡はシュートではなく折り返しのパスを選択したが、惜しくも中央にいた蔵田には合わなかった。
 
一方、ホンダロックSCは前半17分にフリーキックからの流れで米良知記がヘディングシュートを放つなど惜しいチャンスもあったが、アスルクラロの守備陣の集中力が勝り、ゴールには至らず。1-0のままアスルクラロリードで前半を折り返した。
 
後半に入っても、アスルクラロのペースが続く。
 
後半7分には、平岡が相手ゴールキーパーと1対1のチャンスを迎えた。このビッグチャンスは決めきれなかったものの、13分には右サイドにできたスペースをうまくついた道上がセンタリングを上げると、中央にいた平岡が飛び込み、頭で合わせて追加点。平岡は2度目のビッグチャンスを見事にものにした。
 
その直後、フリーキックからホンダロックSCのキャプテン宮路洋輔が頭で合わせ、1点差と詰め寄るも、2-1のままアスルクラロが2015年のJFL最終節を勝利で飾った。
 

アスルクラロは成長できるチームだ

筆者が選ぶ今季のMVPは、ボランチで一年間安定したプレーを見せ続けた鈴木将也である。今節でも先制点をあげた鈴木将也は、チームが劣勢に立たされているときにこそ、落ち着き、そして激しく相手に体を当てて相手の攻撃を封じていた。誰よりも「チームのために今できること」に徹していたように思う。
 
1988年生まれの彼は、27歳(最終節現在)というサッカー選手としては決して若くない年齢である。それにもかかわらず、今季開幕当時の彼と最終節の彼を比べたときに、プレーの幅や判断力、ポジショニングなどおいて明らかに成長している。
 
「監督やコーチが質の良い練習を組んでくれ、さらに選手自身も全員が真剣に取り組んでいるからだと思います。僕自身、(アスルクラロの)まわりの選手を見ていて、成長を感じますね」と鈴木将也自身も語る。
 
Jリーグを目指す選手にとって、この点はとても重要なことだ。Jのチームで試合に出場するチャンスに恵まれない選手がいるとすれば、精神的にも技術的にも成長できるアスルクラロのようなJFLのチームは、一つの魅力的な選択肢であるはずだ。
 

チームが選手から学ぶこともある

また、選手からチームが学ぶべきこともあるのではないかと、筆者は感じている。地域リーグからJFLという舞台に昇格するには、全国地域サッカーリーグ決勝大会(通称、地域決勝)がある。この大会でJFL昇格を勝ち取るのが通例だが、一部のチームはレギュレーションの変更やJリーグの再編などのため、地域決勝を経ずにJFLへと参入している。そのうちの1チームが、アスルクラロである。
 
アスルクラロ沼津がチームとして気になるのが、地域決勝という厳しい大会を経ずにJFLにいることだ。(※地域決勝は3日連続で90分フルタイムを戦う。それも一次ラウンドと決勝ラウンドの二度も)
 
「サッカーの技術よりも、悔しさを持った選手、戦う気持ちを持った選手を基準に選手を選んでいる」と吉田謙監督も話していたが、その“戦う気持ち”はどこで生まれるか。色々あるだろうが、この地域決勝での経験も重要な1つであるように思う。同大会の過密日程の是非はともかく、これほど厳しい戦いを強いられるのは、地域決勝以外にあり得ない。その中で「チームのために今できること」をすべきかを学ぶ選手は多いだろう。
 
鈴木将也はこの地域決勝をSC相模原時代に経験している。そのこともまた、彼が「チームのために今できること」ができる選手であるゆえんではないか。地域決勝経験者は、他に鈴木淳もいる。鈴木淳も、チームが苦しい時に何をすべきかがわかっている選手だ。アスルクラロが地域決勝の経験を経ていないからこそ、チームとして彼らから学ぶことは少なくないだろうし、Jを目指す上で、必要な力であるようにも感じている。
 

一戦一戦が必ずチームの財産になる

今季の昇格は果たせなかった。
 
吉田監督も試合後のセレモニーで「悔しいです!」とその悔しさを露わにした。チーム関係者、選手、サポーターなどすべての人の思いは、同じだろう。
 
しかし、誰ひとりとして、暗い顔をしている人はいなかった。下を向いている人はいなかった。J昇格が潰えた後の今節でも、スタジアムへ足を運んでくれた観客は2,199人もいた。
 
ここJFLでの経験は、必ずJの舞台へと上がったときに活きるはずだ。“バネ”と同じように、貯めたエネルギーは必ず大きな力となって炸裂する。この一年間の戦いは無駄ではなかったし、来年一年間の戦いもまた、無駄なことは一つもないだろう。
 
昨年、アスルクラロで活躍した木暮郁哉は、今季からアルビレックス新潟シンガポールに移籍し、活躍しているが、ことあるごとに自身のTwitterでアスルクラロについて言及してくれている。関わった人すべてから愛されるチームであることを象徴するエピソードではないかと思う。アスルクラロとはそういうチームなのだ。来季もたくさんのサポーターが、チームを愛し、アスルクラロを応援しに来てくれることだろう。
 

DATA

試合結果

セカンド・ステージ第15節(会場:富士総合運動公園陸上競技場)
アスルクラロ沼津(2-1)ホンダロックSC
メンバー)
GK 21.大畑拓也 DF 18.尾崎瑛一郎(Cap.) 29.河津良一 3.西村竜馬 5.馬場将大 MF 16.水木将人 7.鈴木将也 10.蔵田岬平(→14.新裕太朗[後半31分]) 26.道上隼人 FW 32.平岡将豪(→13.松尾篤[後半33分]) 8.岡庭和輝(→28.鈴木淳[後半22分])
 
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