静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

破竹の4連勝で単独2位浮上も 「試合内容には満足できない」vs セレッソ大阪U-23

─明治安田生命J3リーグ第12節(2017.6.10)─

3連勝と勢いに乗るアスルクラロ沼津は、アウェイのキンチョウスタジアムへと乗り込み、セレッソ大阪U-23と対戦した。セレッソ大阪といえば、過去に香川真司や乾貴士、現在所属する選手の中でも、清武弘嗣、柿谷曜一朗を輩出するなど、若手の育成に定評のあるチームであるだけに、U-23とはいえ、相手にとって不足はない。

「勇気あるプレー」が
ゴールを呼び込む

「試合内容は決してよくなかった」。そう語ったのは、キャプテンであり、前半14分に鮮やかな直接フリーキックを決めた尾崎瑛一郎。アスルクラロの試合後の恒例ともいえるサポーターとの“勝利のラインダンス”でも、彼の表情が緩むことはなかった。
 
それもそのはずだ。結果だけを見れば、4対1と差がついたが、内容にフォーカスしてみれば、拮抗した試合だったからだ。
 
「目指すところは、まだまだ高いところにある」
 
尾崎のみならず、アスルクラロの全選手やスタッフから、そういった雰囲気が伝わってきた。
 
しかし、効果的なプレーも随所に見られた。特筆したいのは、決勝ゴールのシーンだ。
 
後半20分に同点に追いつかれ、嫌なムードが漂いはじめた23分。尾崎からのクロスボールをニアサイドに走り込んだ太田一輝が頭で軌道を変え、最後は途中出場の薗田卓馬がスライディングシュート。これが見事にゴールネットを揺らし、決勝点となった。
 
このゴールの起点をつくったのはボランチの鈴木将也。鈴木は、「(昨年までの)JFLとは違って、ボールを持ちすぎると捕まってしまうので、少ないタッチでボールを動かそうと意識しています」と試合後に話してくれた。この決勝点のシーンでは、バイタルエリアで危険をかえりみずに、勇気をもってボールを前へと運んだ。結果として、これが得点へとつながるプレーとなった。
 
勝利へのトビラは、こうした勇気あるプレーができるかどうかにかかってくるだろう。実際、セレッソ大阪は、その高い技術力でボールを保持し、アスルクラロ陣内でプレーする場面が多かったが、バイタルエリアでの危険なプレーは少なく、セレッソ大阪U-23の大熊裕司監督も、「特に前半ですが、ゴールに向かっていく勇気のあるプレーが少なかった」と話している。
 

相手よりも“走る”ことで、
一瞬のスキを突く

2点目、3点目のいずれもアシストを記録している太田は、「相手のプレッシャーが速い中で、いかに効果的なプレーをするかを考えないといけない。それには走ることが必要だと思っています。相手よりも走ることで、余裕を持ってプレーすることができる」と語っている。その言葉どおり、3点目は“走力”でもぎとった。
 
後半29分。体力的にきつくなってくるこの時間帯だからこそ、太田は相手の裏にできたスペースに走り込んだ。そこへ菅井拓也からスルーパスが通されると、中央には相手に走り勝った薗田がフリーで待ち構える。太田からドンピシャでクロスボールが入ると、薗田は冷静に相手ゴールに流し込んだ。なお、今節の2ゴールで、薗田は得点ランキングで首位タイとなっている。
 
「得点王というのは、もちろん狙っています。だけど今日のゴールは僕だけのものではありません。途中交代した染矢君や(渡辺)亮太君を含め、前半からのメンバーが走り回ってくれたおかげで、途中から入った僕が走り勝つことができた。だから、みんなのゴールだと思っています」(薗田)
 
チームでいちばん得点を取っている薗田がベンチスタートだったことに、やや驚いたが、それは「体力の落ちてきた後半に試合が動くだろう」と予想した吉田謙監督の采配だったのだろう。
 
思えば、昨年の夏場の試合でも、吉田監督の同様の采配が見られた。そのときも後半から走力のある中村亮太を投入し、アスルクラロは勝利を手にしていた。このとき、中村に「後半からの出場で悔しくないか」と聞いたことがある。そんな、ややいじわるな質問に対して、「この暑い時季、相手にとって、僕が後半から出ることは本当に嫌でしょうね」と彼は自分の役割を明確に自覚し、「チームに貢献したい」と話していた。こんなやりとりから、吉田監督への信頼の厚さがうかがえた。
 
これから体力的にきつくなってくる夏のシーズンをむかえる。そうした中では、今節のように、監督の采配が試合の勝ち負けを左右するはずだ。アスルクラロを指揮して3年目となる吉田監督の先を見通した采配に今後も期待したい。
 
そして、次節(6月18日15時キックオフ@愛鷹)はブラウブリッツ秋田との1位・2位決戦をむかえる。この試合で勝利を手にすれば、首位を走るブラウブリッツ秋田との勝ち点差は1となり、いよいよJ3の舞台で、首位に躍り出ることが現実味を帯びてくる。まさに、見逃せない一戦だ。
 

PICK UP

キンチョウスタジアム

キンチョウスタジアムは、収容人数約18,000のスタジアムである。ヤンマースタジアム長居と並んで、セレッソ大阪のホームとなっている。
 
キンチョウスタジアムには2つの特長があると思う。
 
1つは、球技専用であること。陸上用トラックがない分、観客席とグラウンドの距離が短く、高い臨場感が味わえる。
 
もう1つは、駅から近いこと。地下鉄御堂筋線長居駅から徒歩5分という立地で、キンチョウスタジアムが位置する長居公園には、サッカー観戦に限らず、たくさんの市民が、思い思いに休日を楽しむ姿が見られた。
 
静岡県のサッカースタジアムといえば、清水エスパルスのIAIスタジアム日本平やジュビロ磐田のヤマハスタジアム、あるいは日韓ワールドカップでも使用されたエコパスタジアムがあるが、いずれも駅から歩いてすぐとは言い難い。
 
もし、静岡県東部の沼津駅から徒歩圏内にこのようなスタジアムがあったら……。きっと多くのサッカーファンやサポーターで賑わうことだろう。
 
文・取材/遠藤由次郎
 

DATA

試合結果

J3リーグ第12節(会場:キンチョウスタジアム)
セレッソ大阪U-23(1-4)アスルクラロ沼津
 
アスルクラロ沼津メンバー)
GK 20.石井綾 DF 18.尾崎瑛一郎 22.徳武正之 28.谷口智紀(→4.田中舜[後半0分]) 2.藤嵜智貴 MF 15.菅井拓也 7.鈴木将也 17.太田一輝 50.染矢一樹(→19.薗田卓馬[後半15分]) FW 29.渡辺亮太(→16.小牧成亘[後半21分])11.前澤甲気
 
セレッソ大阪U-23メンバー)
GK 45.茂木秀 DF 29.舩木翔 37.森下怜哉 42.瀬古歩夢 49.齋藤遼 MF 30.大山武蔵(→34.阪本将基[後半30分]) 35.沖野将基(→13.丸岡満[後半13分]) 38.西本雅崇 43.喜田陽 FW 36.斧澤隼輝(→47.有水亮[後半35分]) 40.岸本武流
 
 
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