静岡県東部からJリーグへ-アスルクラロ沼津の挑戦-

静岡県代表の誇りを胸に天皇杯にアスル旋風を巻き起こす! vs 京都サンガF.C.

─天皇杯2回戦(2017.6.21)─

2017年4月。天皇杯の静岡県予選を兼ねた静岡県サッカー選手権大会を勝ち抜き、チーム史上初となる天皇杯への出場権を得たアスルクラロ沼津。天皇杯は、既知の通り、さまざまなカテゴリーのチームが参加し、かつトーナメント方式という一発勝負の大会だ。普段のリーグ戦とはひと味もふた味も異なる雰囲気がある。下位カテゴリーのチームや選手にとっては、“名”を上げる絶好のチャンスである。それはJ1やJ2を目指すアスルクラロも例外ではなく、非常に貴重な戦いの舞台であるといえる。だからこそ、一つでも多くの勝利を手にし、全国にアスル旋風を巻き起こしたい。

静岡県代表という誇りを胸に挑んだ一戦

先の静岡県予選では、準決勝では東海社会人リーグ2部に所属する藤枝市役所サッカー部と、決勝戦では共にJ3リーグを戦う藤枝MYFCと戦い、アスルクラロがその代表の座を勝ち取った。
 
そして、4月22日に静岡県代表として挑んだ天皇杯第1回戦の相手は、福井県代表のサウルコス福井。同チームの面々には望月一仁監督、鴇田周作、中野翔太、松尾篤、御宿貴之と、アスルクラロに縁の深いチームなだけに、苦戦が予想されたが、尾崎瑛一郎のかわりにキャプテンマークを巻いた河津良一による虎の子の1点を守り抜いたアスルクラロが、見事に勝利を手にし、“格上”であるJ2の京都サンガF.C.への挑戦権を獲得した。
 
6月21日。普段のリーグ戦とは異なり、天皇杯2回戦は平日(水曜)のナイトゲーム。チームは6月18日にブラウブリッツ秋田と対戦したばかりであり、さらに6月25日にFC東京U-23との対戦が控えているということもあり、先発メンバーを大きく変えて挑んだ。
 
藤枝市役所サッカー部との試合で貴重な決勝ゴールをあげた河津良一や、同試合でアスルクラロ加入後、公式戦初出場を果たした伊東輝悦、そのほかリーグ戦では出場機会に恵まれていない松藤正伸や渡邉志門といったメンバーが先発に名を連ねた。
 
「(リーグ戦に比べて)メンバーを落としたという気持ちはさらさらありません。全員、僕の中ではベストメンバーです」という吉田監督の言葉通り、アスルクラロは、ほぼフルメンバーで試合に臨んだ京都サンガF.C.に対して、一歩も引けを取らずに戦った。
 

小牧の決勝ゴールで“下克上”に成功!

「サンガは、早いタイミングで強力な2人のフォワードにボールを入れ、起点をつくってくるだろうと話していました。だから、僕たちはなるべくディフェンスラインを高く保って、コンパクトにプレーしようと心がけました」と、右サイドでディフェンスラインに入った河津が話してくれた通り、前半は相手の思うようなプレーをさせず、膠着した試合展開になった。その証拠に前半のシュート数はサンガが2本、アスルクラロが1本で前半を折り返す。
 
後半に入ると、下位カテゴリーのチームを相手に、なかなか決定機が作れないサンガのほうに少しずつだが焦りが見えてくる。すると後半7分。ゴールキーパー大西勝俉が蹴り込んだロングフィードに対し、サンガのディフェンス陣がハイボールの処理にもたついた。その隙に、小牧成亘がボールを保持し、そのままスルスルとディフェンスの間をすり抜けていき、左足を振り抜く。
 
「相手ゴールキーパーのニアサイドが空いているのが見えたので、冷静にそこにシュートを打ちました」と小牧が語ったように、このシュートが見事に相手ゴールネットを揺らした。
 
このゴールでのリードを守りきったアスルクラロが、この日の勝者となった。試合後、吉田謙監督は語気を強めて「我々は静岡県の代表としてこの地に来た。そして見事、勝つことができた。“静岡県にアスルクラロ沼津あり”ということを、示すことができて嬉しいし、チームを誇りに思っています」と語った。
 

PICK UP

3回戦の相手は横浜F・マリノス!

この日、公式戦デビューを果たした静岡県代表の名にふさわしい選手がいた。それは後半42分から出場した後藤虹介だ。先発出場を果たした田中舜と同じく、中学生時代には吉田監督からの指導を受けた“教え子”である。
 
「我々は静岡県代表でありながら、静岡の東部地区を代表としたチームでもある。そうした意味では、今日試合に出た田中や後藤、そして今日はメンバーに入っていませんでしたが京都サンガで活躍する内田(恭平)選手などが活躍してくれていることで、我々が27年もの間、地元・沼津で育んできたものが実り始めているんだなと感じています」(吉田監督)
 
そんな静岡県代表として次に挑むのは、J1を戦う横浜F・マリノスだ。7月12日、ニッパツ三ツ沢球技場で19時キックオフとなっている。
 
3回戦以降の会場決定方法について、日本サッカー協会は「対戦カードの下位カテゴリーチームが所属する都道府県の会場を優先して開催することとする」と発表していた。しかし、「会場設備・収容能力不足などその他諸事を考慮した場合」(日本サッカー協会)には、対象外となるともされ、その結果、ニッパツ三ツ沢球技場となっている。
 
アウェイの地での開催となった点について、筆者自身プラスになると考えている。それは、京都サンガF.C.戦の後に、河津が語ってくれた次の言葉があるからだ。
 
チームが得点を取ったシーンで、河津は得点者の小牧と共にゴール裏で待つサポーターの下まで全速力で駆けつけていた。その真意について尋ねると、「点を取ったら絶対サポーターのみなさんのところに行くと決めていました。だって、今日は平日じゃないですか。平日のこの時間に京都まで見に来てくれているということは、みなさん会社を休んだり、早退しているわけですよ。そんなみなさんに対して、僕らが恩返しできることって、全力でプレーして、勝つことだけですよね。そういう感謝の気持ちを示したかった」と語ってくれていた。
 
おそらく、次節も少なくない数のアスルクラロサポーターが、三ツ沢の地に駆けつけてくれることだろう。そうした光景や体験というのは、サポーターや選手を含めたチーム全体の一体感を高めてくれるに違いない。そういう意味で、下克上を起こすために“みんな”でアウェイの地へ乗り込むという経験は、とても貴重なものであると感じるのだ。
 
次の試合で勝利を収めれば、いよいよ“アスル旋風”が全国に吹き始める。まずは、昨年の天皇杯で話題となった静岡県代表Honda FCが勝ち進んだベスト8へ。さらにその先へと突き進み、J2、J1への足がかりとしてもらいたい。
 
文・取材/遠藤由次郎
 

DATA

試合結果

(会場:西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場)
京都サンガF.C.(0-1)アスルクラロ沼津
 
アスルクラロ沼津メンバー)
GK 31.大西勝俉 DF 4.田中舜 21.渡邉志門 27.松藤正伸 MF 6.沓掛勇太 8.河津良一 14.白石智之 16.小牧成亘(→29.渡辺亮太[後半22分])17.太田一輝 25.伊東輝悦(→11.前澤甲気[後半36分])FW 19.薗田卓馬(→23.後藤虹介[後半42分])
 
京都サンガF.C.メンバー)
GK 21.清水圭介DF 3.高橋祐治 6.本多勇喜 15.染谷悠太 26.下畠翔吾(→25.麻田将吾[後半21分])30.石櫃洋祐 MF 5.吉野恭平 20.伊東俊(→22.小屋松知哉[後半8分])FW 9.ケヴィンオリス 13.岩崎悠人 31.大黒将志(→10.エスクデロ競飛王[後半14分])
 
 
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