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現代サッカーに欠かせない中盤/MFとは、どんなポジション?

  • 日本サッカーMF論
  • なぜボランチはムダなパスを出すのか? ~1本のパスからサッカーの"3手先"が見えてくる~
  • フットボールサミット 第6回 この男、天才につき。 遠藤保仁のサッカー世界を読み解く
  • 日本の木組
  • ボランチ30 “ボランチ”とは何か?


選書 幅 允孝(ブックディレクター)

Profile

日本サッカーMF論

藤田俊哉/杉山茂樹(実業之日本社)

昨年、現役を引退した日本を代表するMF藤田俊哉。Jリーグ開幕翌年、ジュビロ磐田がJ1に昇格した年から所属し、ステージ優勝6回、年間優勝3回、アジアクラブ選手権優勝という黄金期の中心として活躍した。その藤田とサッカージャーナリスト杉山茂樹が、それぞれの目線で同じテーマを書き合ったMF論。日本のプロサッカーの初期、まだまだ情報も足りていなかった日本では、古いサッカー観で戦術が練られ、語られていた。MFの役割もしかり。現場の試合経験を通して語る藤田は、日本が、MFにいい選手が集中する中盤天国となった理由を、従順な日本人の性格が、保険的な選択肢を持ちながらプレーできるMFというポジションを指向したからだと言う。対して杉山は、黄金のカルテットなど“ブラジル人への技術的コンプレックスを最大のモチベーション”に、日本サッカーは足元の技術を高度に発展させるも、中盤至上主義/総中盤化という副産物/没個性をも生み出したと語る。
さらに杉山は、日本のMFはピッチにボールの美しい軌跡の絵を描けないとも言う。時間的、空間的ズレを演出する全体の動きがまだまだ少ないとも。一方藤田は、「4-2-3-1」というポジションにおける「3」を担う香川や乾のような日本人選手たちを、“中盤の概念を変えた”と評し、自分が辿りつかなかったこれからの攻撃的MFの姿を彼らに見ている。

なぜボランチはムダなパスを出すのか?

~1本のパスからサッカーの"3手先"が見えてくる~

北健一郎(白夜書房)

ポルトガル語である“ボランチ”という言葉は、“ハンドル”や“舵”を意味する。サッカーにおいては中盤下がり気味、つまりかつて(今も使うけど)ディフェンシブハーフとして括られていたポジションのことを指している。現在、世界最高のボランチ、バルセロナのシャビと日本最高のボランチ遠藤保仁を主な参考事例に、ボランチの一見ムダに見えるパスを通して、彼らの役割を具体化した本書。「現代サッカーは、(中略)アバウトなプレーだけでは勝つことはできなくなり、論理的に組み立て、プレーすることが勝利の必須条件となりつつある」。その最たるものがバルセロナとガンバであり、二人のボランチがそのチームのカギを握っていると著者は考えるのだ。
本書に記されたボランチを読み解く10の考えをまとめるとこうなる。“ボランチはセンターサークルから出るな”と言われるように、彼らはゲームを中心でコントロールする。3次元の立体的な視野で幾通りもの状況判断をし、緩急のパスを使い分けながら、攻撃のスイッチを入れたり、ボールを戻して攻撃を作りなおしたりする。それも全力ではなく、7,8割の走力で。
遠藤は成功率80%以下のパスは出さないという。危険な一本に賭けるのではなく、一見余計に見えるパスを経ることで、危険な道が突如開けてくる。いいボランチは、必ずしも近道をしない。結果としてそれが最短で最適であったことが、いいボランチを証明するのだ。

フットボールサミット 第6回 この男、天才につき。

遠藤保仁のサッカー世界を読み解く

カンゼン

日本代表で必須のプレイヤーと言えば誰だろうか。守護神川島や点を獲る香川を挙げる人も多そうだが、必須という意味なら、フィールドの中心にゆったり構える遠藤保仁ではないだろうか。“この男、天才につき”と銘打たれた本書は、一冊まるごと遠藤保仁特集。サッカー業界を代表する書き手たちが、プレー分析はもちろん、チームメイトや指導者、果ては兄弟にまで行ったインタビューや詳細なデータを用いて遠藤を全方位から捉えようとしている。
冒頭、西部謙司は遠藤をコンピューターに例え、情報収集能力とそれを分析する演算能力にこそ凄さがあると語り、代表監督時代から遠藤に対して厳しかったオシムは、遠藤をゲームの“パトロン=主人”にふさわしいと思うからこそ不満を口にし続けたと語る。「課題や障害を、積極的に乗り越えようとはしない。それこそ彼が実現すべきことだ」と。しかし、どうもどの書き手も行き着く答えは似ている。マイペースで、走っていないと思われているがそんなことはなく、2,3手先を常に考え、判断力に優れ、高度なボールを止める技術、蹴る技術を持つ男、ということ。驚いたのは、清水英斗の論で引用されたディフェンスデータ。2011年、遠藤のタックル数は88回で9位、成功数は75回で5位。成功率では1位となる。こぼれ球奪取数も141で1位。つまり、遠藤は圧倒的にボールタッチの機会が多い。彼は、ファンタジスタでもゲームメーカーでもなく、ゲームコントローラーなのだ。

日本の木組

清家清(淡交社)

ボランチが前線にボールを供給する際、“楔(くさび)”となるパスを出すことが多い。ポストプレーとも言えるそこからの一連のプレーは、相手DF(及びゴール)を背負った状態の選手にパスを出し、そこを起点として攻撃を展開、組み立ていくことを意味する。
そもそも楔とはV字型の木材や金属のことであり、それを隙間に打ち込むことで、“物を割る”ことと“物と物とを圧で接合する”という役割がある。ふたつの相反する役割を持ったこの道具の名前が、サッカーに転用されているのはとてもおもしろいことことだ。そこから空間的に展開するという意味では確かに“割る”であり、DFの意識をポストプレーヤーに集中させるという意味では“接合/接近”に近い。本書は、建築家の清家清が、日本に脈々と受け継がれてきた伝統の木組という木材建築法を美しい写真と共に解説している。楔という形に限らない様々な“継ぎ”技術は、その形だけでも純粋に美しい。それぞれオス型とメス型に削られた木材を嵌め込み合うことで、木材は信じられない程の強度を得る。嵌めこむ前に水分を10%以下に乾燥させた木材同士を嵌め込み、空気中に晒すと20%近くまで水分を吸収して膨張し、接着面はきつく締まるのだという。
チームの状況をコントロールするMFは、チームの空気を締めも緩めもすれば、一本の楔で全てを変えることもする。ボランチは、チームという木材を自在に組み立て、堅固な建造物にしていく際の大黒柱になっている。

ボランチ30

“ボランチ”とは何か?

日本スポーツ企画出版社

ボランチという言葉がすっかり定着した2003年、言葉の発生当初まで遡り、ボランチとはどんなポジションを意味するのか、さらにはボランチとは本当に存在するポジションであるのかを解明しようと本書は作られた。結論から言えば、ボランチとは厳密な意味でのポジション、守備的MFのことを意味するのではないということだ。攻撃か守備かではなく、攻撃では基点となり、守備では豊富な運動量で守りを統率する。ブラジルサッカーにボランチの概念を浸透させたクロドアウドが語る、そうした考え方を本物のボランチとするなら、ヨーロッパには本物のボランチは“存在しない”。そもそも、ヨーロッパにボランチに相当する言葉がないらしい。かろうじてスペインに“ピボテ”という言い方があるくらい。イタリア、イル・ジョルナーレ誌のクラウディオ・デ・カルリが選んだ「ボランチ30」にも、これがボランチであるという固定観念はない。マウロ・シルバからアルベルティーニ、ロイ・キーン、ヴィエラにジェラード。そしてロビー・サベージまで。実に多彩なボランチ/守備的MFたちだ。
「4-2-3-1」というフォーメーションが一般化したいま、「2」の存在はとてつもなく大きい。時にゼロトップという状態にもなるこのフォーメーションにおいて、ゲームの動きをコントロールするのはトップ下「3」の真ん中だけでなく、二人のボランチのどちらかが担うことになるのだから。

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幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。
国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやTSUTAYA TOKYO ROPPONGI、LOVELESSなどにおける本のディレクションや、d-labo(スルガ銀行ミッドタウン支店内)などのライブラリー・ディレクションを手掛ける。ほか、編集、執筆、ディストリビューション等、本周りのあらゆる分野で活動中。最近では、渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。
BACH : http://www.bach-inc.com

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