背中押します。あなたの「サッカーの夢」を叶える本。

053

サッカーにまつわる経済/経済的効果が気になります

  • スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える
  • サッカービジネスほど素敵な仕事はない たった一人で挑戦したFCバルセロナとの取引
  • サッカーで燃える国 野球で儲ける国 スポーツ文化の経済
  • 「Jリーグ」のマネジメント ―「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか
  • ヤバい経済学


選書 幅 允孝(ブックディレクター)

Profile

スポーツイベントの経済学

メガイベントとホームチームが都市を変える

原田宗彦(平凡社)

石原慎太郎前都知事から猪瀬直樹現知事に変わる時も、焦点のひとつは2020年の東京五輪招致だった。震災復興、景気回復への願いを込めての招致であるが、なぜ五輪開催が日本の経済のためになるのだろうか。本書は、そうしたメガスポーツイベントとホームチームの存在が都市に及ぼす、経済的な影響力、可能性を論じている。IOC委員長のピーター・ユベロスとアディダス社長ホルスト・ダスラーによって、マーケティングの観点からスポーツを眺めた「スポーツ権益の再販」というビジネスが完成する84年のロサンゼルス五輪は、五輪商業化の先駆けだ。
98年仏W杯、地元の人々もあまり期待していなかった仏代表チームは、あれよあれよという間にブラジルを下し、優勝を手にした。その時のフランス国内視聴率はなんと93.3%。シャンゼリゼは150万の人で溢れ、シラク大統領はチーム全員と監督にレジオン・ドヌール勲章を授与している。フランス国内の利益こそ5億フランと言われているが、サッカー連盟の登録者は20万人もの増加があったという。そして日本では非開催国ながら1800億円の特需があった。五輪、W杯以外にも、国内ではユニバーシアードがあり、サッカーのホームチームによる地域経済の活性化、相撲の地方巡業など、様々なスポーツがただ観る楽しみにとどまらない意味をそこに含んでいる。“観る”スポーツの経済効果ばかりが取り沙汰されるが、最近の“やる”スポーツという視点は、今後ますます重要になってくるだろう。

サッカービジネスほど素敵な仕事はない

たった一人で挑戦したFCバルセロナとの取引

浜田満(出版芸術社)

サッカーとお金のつながりの多くは、選手の給料や移籍金、スタジアムでの入場料やユニフォームの販売といった現場で生まれている。著者の浜田満は、海外クラブチームの日本展開を請け負う会社でサッカー仕事のキャリアを始め、バルサのライセンス商品の開発、オフィシャルショップの開店等をおこない、上司とともに『キャプテン翼』の大空翼をFCバルセロナに正式入団させるという驚きの展開まで関わった。
その時のつながりを活かし、バルサのソシオ受付の日本代理店として独立。バルサ来日に合わせ、準備期間わずか3週間、2週間限定で募集を始めると、1時間で300人の募集があったという。その後、来日試合終了後も継続して増加、日本にファンがいるのかと不安視していたバルサ幹部は喜び、契約は継続となった。ソシオになるためには年間€135(現在€155)の支払いが必要であり、浜田は契約1年目のみ、€135の25%を手数料として受け取ることになっていた。2週間で500人を超えたソシオ加入で、当時約230万円(€1=135円)の粗利があり、バルサも683万円の利益がこれから継続して入り続けることになった。カンテラに日本人として初めて入団した久保建英(しかも10歳で!)は、09年、浜田が横浜で開催したFCバルセロナキャンプに参加しMVPに選ばれたことがきっかけだった。久保はおそらく今後、ものすごい数字の金額を稼ぎだすだろう。浜田は自らをファンの代弁者であり、ファンとクラブの結び役だという。大きな産業になればなるだけ、媒介者の存在はますます大事になるのだ。

サッカーで燃える国 野球で儲ける国

スポーツ文化の経済

ステファン・シマンスキー/アンドリュー・ジンバリスト(ダイヤモンド社)

気になるタイトルである。最近の天文学的な移籍金の話しだけを聞いていると、サッカーも儲かってるじゃないか!と言いたくなるのだが、儲かっているのは一部のビッグクラブのみで、構造的には儲からないようになっているようだ。スポーツを文化的側面と経済的側面から論じた本書は、アメリカ人のジンバリストが野球を、イギリス人のシマンスキーがサッカーを書き、“野球は利益という狭い焦点をもった独占的な産業として発展してきたのに対して、サッカーは競争の激しいクラブを集めた包容力のある連盟として発展してきた”として、論が進められる。
リーグ制と移籍を巡る、具体的な数字と逸話がどんどんと展開され、どうにか選手たちに支払う給与を抑えようとしていた経営者たちの格闘が垣間見える。ヨーロッパに限って言えば、クラブの給与総額の順位がそのままチームの順位になる確率は9割近い。一方野球は、2~5割程度。サッカーの方が相場との関係が強く、選手は分相応の給与をもらっていることになる。しかし、もし高額の給与を支払い、リーグ降格になった場合、悲惨なことになる可能性が高い。イギリスで支払不能になったクラブは「財産管理」をし、資産を投げ売り、買収先を見つけなくてはいけない。できなければ閉鎖だ。00~04年、イングランドの92のプロクラブのうち、19が支払不能になり、うち3つのクラブは失敗を繰り返してさえいる。放映権料など、富の再分配をどれだけできるのか。とはいえ独占的で儲けにくくとも、弱小チームがジャイアントキリングし、大興奮できるサッカーだからこそ、世界規模で愛されてもいるのだ。

「Jリーグ」のマネジメント

―「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか

広瀬一郎(東洋経済新報社)

元電通マンで、トヨタカップやワールドカップなどサッカー関連のイベントを多数プロデュースしてきた著者。Jリーグ経営諮問委員会の委員も務め、Jリーグを中からも外からも知る人物が書いた、Jリーグ「百年構想」の「制度設計」の裏側。
93年のJリーグ開幕から20年。Jリーグの成り立ちを追い、制度がしっかりと継続運営可能かどうか検討するにはちょうどいいタイミングかもしれない。どこにどれだけの経費をかけ、売上を確保するのか。普通の企業が当然やることを徹底してやることがどうしたって必要になる。Jリーグのロゴ制作で、博報堂が最初に1億円と脅しながら3000万円の提案をし、ありえないとなり最終的に1000万に落ち着いた。さすが代理店という、ボッタクリの精神ではあるが、開幕前年からJリーグは空前の好景気だった。博報堂は、3年間2億円という公式スポンサー権を8社に何の苦もなく売ってきたのだ。そんな時代でもあったということ。
驚いたのは、スポーツマーチャンダイジングの見学・研修のために参考にしたのが、ヨーロッパのサッカーリーグではなくアメリカのNFLだったということだ。具体的な商品展開やアイディアを習得するとともに、「ファンとの接点」という、マーケティングの基礎である日常的な顧客コミュニケーションの制度化がなされていく。日本のスポーツは“学校体育”的であり、マネジメントの考え方がなかなか育たない土壌にあった。各地方にクラブができ、育成部門も持つところが増えている。アルビレックス新潟のように、サッカーに限らないスポーツ運営を行い、海外にも目を向ける。Jリーグにはまだまだ進化の余地がたくさんありそうだ。

ヤバい経済学

スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー(東洋経済新報社)

「90年代のアメリカで犯罪が激減したのが中絶の合法化のおかげとは?」「銃とプールと危ないのはどちらか」「麻薬の売人はなぜいつまでも母親と住んでいるのか」「相撲取りと八百長のインセンティブ」。本書の項目は、気になって仕方がないこんな文言でうめつくされている。起こった出来事の表面をすくい、理解したつもりになっていることが、経済学的思考法を使うことで一気に違った顔を見せ始める。原因と結果を、インセンティブ(=人の意思決定や行動を変化させるような要因)を拠り所に論理的に考えれば、相撲取りが八百長をすることは必然的なことになってしまうのだ。実際に八百長報道が明るみに出る前に、偶然にも本書はそのことを説明してしまっていた。神聖なスポーツと呼ばれる相撲の勝敗ですら経済学で分析できてしまう。
本書にサッカーの話題は登場しない(続編の『超ヤバい経済学』には“サッカー選手になるには何月に生まれると有利?”という項目があるが、これはスポーツ全般に言えそうだ)。本書の射程はサッカーにも応用できるのではないだろうか。例えば、生まれた土地のサッカーチームを応援するヨーロッパのサッカー文化の中で、自分と関係のないチームを応援し続ける人とのその後の違いなど。その街での生きやすさにさえ関わるサッカーとファンの関係を、経済学的に説明する本が待ち望まれる。

閉じる

幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。
国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやTSUTAYA TOKYO ROPPONGI、LOVELESSなどにおける本のディレクションや、d-labo(スルガ銀行ミッドタウン支店内)などのライブラリー・ディレクションを手掛ける。ほか、編集、執筆、ディストリビューション等、本周りのあらゆる分野で活動中。最近では、渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。
BACH : http://www.bach-inc.com

ページの先頭へ