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個人事業主としてのサッカー選手と交渉について教えてください

  • 世界基準の交渉術 ~一流サッカー代理人が明かす「0か100か」のビジネスルール~
  • サッカースカウトマン
  • オールマイティ
  • プロ交渉人―世界は「交渉」で動く
  • 影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか


選書 幅 允孝(ブックディレクター)

Profile

世界基準の交渉術 ~一流サッカー代理人が明かす「0か100か」のビジネスルール~

ロベルト佃(ワニブックス)

サッカー選手とクラブを繋ぎ、交渉の窓口となる“代理人”。本書の著者であり、FIFA公認の代理人であるロベルト佃は、アルゼンチン生まれの日系3世。95年、横浜マリノスのアルゼンチン監督招聘を機にサッカーに関わるようになった佃は、その後、'01年に代理人業を始め、中村俊輔、長谷部、長友、岡崎といった、いまも海外の一線で活躍する選手たちを海外に送り出し、いまもサポートし続けている。
日本人選手の市場価値が高まってきたとはいえ、まだまだ十分ではなく、日本人の中にはプロスポーツにビジネス的な関わりをもつことを“いやらしい”と感じる人もいまだに多いと佃は言う。選手が最高のキャリアを積むために何をすべきか、タフな交渉を繰り返してきた経験とノウハウが本書には記されている。常に駆け引きの連続である代理人業。佃は絶対に嘘をつかず、勘違いをさせるのだという。嘘ではない答えで、相手の思いたいように思わせておくことによってリスクを回避する。驚いたのは、彼は交渉時にメモを一切とらないということ。佃は自分の記憶に留まらないものは重要ではないのであり、自分のキャパシティが及ばないことはしないことにしているのだそうだ。選手との相談は最後の局面のみで、交渉事に熟慮は必要ないのであり、考えに時間が必要なものは素人。その場でどれだけ対応できるかの引き出しを事前にいっぱいにしておくこと、それこそが交渉に臨むべき姿勢なのだ。

サッカースカウトマン

平野勝哉(出版芸術社)

今年70歳を迎える著者の平野は、鹿島アントラーズの前身である住友金属工業蹴球団時代に選手、マネージャーを経て総監督まで務めた人物。鹿島アントラーズ設立後は、97年からスカウト担当部長に就任し、小笠原満男を始め中田浩二、本山雅志、岩政大樹、内田篤人などを獲得し、“伝説のスカウトマン”とまで呼ばれている。
スカウトの仕事はとにもかくにも、まず選手を見ること、見つけること。目をつけた選手以外にも、その選手周辺には来年以降の原石が眠っているかもしれないと、平野は年間250~300試合を観てきた。週に1日休んだとしても、1日1試合を観ている計算になる。高校生を対象とするスカウトは、目を養うことはもちろんだが、交渉役として学校の先生や指導者、親と人間関係を築いていくことも非常に大切な仕事。不安定なプロの世界への誘いに不安を感じる親へは、正直に誠実に現状と希望を伝える。強いチームであればあるほど試合への出場機会は少なく、成り上がることは簡単ではない。ABCの選手契約条件にも触れ、給料も想像ほどはもらえないことも伝える。本書で知ったのだが、アントラーズは、契約後3年間は成長を待つ時間としているのだそうだ。信じて獲得した選手としっかり付き合い、責任を持って成長を期待するという方針は、想像している以上に大きいことな気がする。平野引退後も大迫や柴崎が入団するなど、その遺伝子は確実に受け継がれている。

オールマイティ

本城雅人(文藝春秋)

「選手、球団、マスコミ、そのすべてを操る全能(オールマイティ)の代理人」と呼ばれる主人公の善場圭一。金の亡者と言われ忌み嫌われる一方、選手に向けられる好機と悪しき視線を、盾となってすべて受け止め、選手たちからは絶大な信頼を得てもいた。かつて代理人をしていた瀬司英明が失踪。その捜索を依頼された善場は、瀬司が残したリストから高校同期のライバルたちを訪ねていくうち、かつてのある事件に気づいてしまうというミステリーなのだが、元「サンケイスポーツ」の新聞記者だった著者だけに、プロ野球の裏事情がとてもリアルに描かれている。
海外では当然のこととなった契約更改や移籍にまつわる大金のやりとりが、日本ではまだまだダーティなものであり、スポーツ選手はお金に拘らない人間であるべきだという思いが依然として強い。現役時代が短いプロスポーツの世界で、凝縮された時間を過ごすためにもビジネス的にお金のやりとりは必要になる。善場のような、たとえ代理人である自分が万人に嫌われる悪役になろうともという精神は、かっこいいという表現がハマる。ミステリーという要素でいえば、どこか弱い気もするのだけれど、代理人がどんな心理で選手たちの前に立ち、生きているのかは一冊読み終えたころには頭に入っている。

プロ交渉人―世界は「交渉」で動く

諸星裕(集英社)

1999年から2010年まで、コメンテーターとして出演していた「とくダネ!」で見たことのある方も多いであろう諸星裕。出演時の肩書きは桜美林大学の副学長であったが、彼が活躍した舞台は大学に留まらない。アメリカの刑務所での教育専門官としての勤務を始め、スポーツ、国際放送、国際ビジネスなど関わった分野は非常に多岐に渡り、そうした経験が、非政府関係の数少ない国際交渉スペシャリストという彼の立場を作り上げてきた。夏冬合計7回にも及ぶ五輪やW杯など、各種スポーツ国際大会の実施及び放送のコーディネーターや開催招致ロビイストなど、我々が見えていない舞台裏こそが彼の活動領域であり、契約に至るまでの道筋を作ることが仕事である彼を、最後の書面の契約時に見ることは少ない。
本書で最もページが割かれているのが、時間を追うように語られる日韓W杯開催に向けたロビイスト活動。アベランジェ会長を始めとした各国21人の投票権を持つ理事を、国ごとの特性、個人の性格を考慮しながら進める説得と事前の情報収集は、非常にスリリング。ネットワークを駆使し、時に相手の弱みにつけこみ、上昇志向をくすぐり、徐々に外堀を埋めていく。共催という結論は知っているからこそ、裏側で起こっていたやりとりが意味を変えて読めてくる。郷に入りては郷に従いつつ、低きに流れないこと。矜持を持って臨む、強さを感じる交渉術。

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

ロバート・B・チャルディーニ(誠信書房)

人が何か行動を起こす時、そこには何かの原因と結果がある。ところが実際は、明確な動機がなくても人は何らかの影響力によって、“動かされ”てしまう。しかもこの影響力の問題は、ほとんどすべての人が何らかのかたちで経験したことがあるはず。こんな経験がないだろうか。「たいして欲しくもないと思っていた服が、超限定のレアなものだとわかって買ってしまった」「お笑い番組で、録音で足された笑い声につられて笑ってしまった」「ずっと売れ残っていた宝石を、二倍の値段にした途端売れた」。
心理学者のチャルディーニは、セールスマンや募金勧誘者、広告主などの世界に潜入し、「承諾誘導」、つまり相手に“イエス”と言わせ商品を買わせたり、サービスを利用してもらったりすることのテクニックや作戦を学び、人が何かを「承諾」することの心理的メカニズムを解明している。その秘密は、返報性/一貫性/社会的証明/好意/権威/希少性の6つの原理に分けられることがわかった。選挙もアムウェイも食品売り場の試食も、こうした原理の組み合わせや応用なのだ。これでわかるのは、サッカー選手が自分を売り込むときに必要なのは、結局過度に大きく見せることではなく、そこに至るまでの一貫した行動と姿勢であり、人として持つべき礼儀であり、愛される愛嬌であり、自分だけの個性なのだという、ある種当然の答えなのだった。

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幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。
国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやTSUTAYA TOKYO ROPPONGI、LOVELESSなどにおける本のディレクションや、d-labo(スルガ銀行ミッドタウン支店内)などのライブラリー・ディレクションを手掛ける。ほか、編集、執筆、ディストリビューション等、本周りのあらゆる分野で活動中。最近では、渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。
BACH : http://www.bach-inc.com

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