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竹田聡一郎コラム 日々是蹴球

カメラ/FinePix S100FS 提供/富士フイルム株式会社

竹田聡一郎(たけだそういちろう)

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第百九十一試合

ニッポンと鹿島のボール

今年も“スルガ杯”ことスルガ銀行チャンピオンシップを観てきた。ゲームレポートはサッカーダイジェストに書いたので省かせてもらうが、ウニベルシルダ・デ・チリは“南米のバルセロナ”に恥じないチームだった。常に機能的にボールを持ち、サイドは厚く、失点はセットプレーと個人技のみ。カップを持ち帰っても何もおかしくないゲーム内容だった。

でもそれは裏を返すと、劣勢の時間帯が長かった鹿島が、それでも集中力を保ち、PK戦を含め全選手が高い集中力を保ったともいえる。彼らの勝因は鹿島っぽさを貫いたことだったような気がした。Jリーグの勢力図は93年からだいぶ塗り替えられ、常勝軍団は降格し、名門は世代交代に苦しむ。今季でいうとサンフレッチェのパスサッカーは無駄が少なく、洗練されてきた。セレッソの中盤はアイデア豊富であり、仙台のフリーランニングの量と質には驚くばかりである。それでも、鹿島というチームが時に「面白くない」「前時代的だ」という批判にさらされながらも、最終的にはもっとも多くのタイトルを持っているのだ。「一体、どのクラブが10個以上のカップを並べることができるんだ?」と開き直る資格を持つ唯一のチーム、それが鹿島アントラーズでもある。

鹿島の偉大さと小憎らしさを噛み締めていると同時に、五輪しかり、世界のチームや選手がこうしてニッポン相手に本気で勝ちにこようとしてる事実が響く。この夏、僕らニッポンのサッカーは、ここ鹿島で南米王者と渡り合い、グラスゴーではマタやアルバを沈黙させ、イエテボリでは香川真司がユーロMVPとユニ交換を行った。僕らの国のトップリーグもいつの間にかハタチになり、それはそれは大きな広がりを見せている。ミーハー的に喜んでばかりいる時代は去り、この日、はるばる地球の裏側からやってきたチリの選手たちに容赦のないブーイングをくらわせた鹿島サポのように、僕ら観る側もちょっと高いところに目を向けるべきなのかもしれない。

さてさて、ちょっと気が早いかもしれないが、ナビスコ杯のベスト4はFC東京、清水、鹿島、柏である。このうち王者となるチームがまた来年、南米のタイトルホルダーを迎え撃つ。

今年、先制のヘッドをブチ込んだ岩政は、「今日の試合もそうだったけど、海外チームや選手は球際の最後の一歩で足が出てくる。それは口でいくら説明しても体感しないと分からない。Jではなかなか見えないもののひとつ」と、この大会の意義を語る。

スルガ銀行の岡野光喜社長は、本当に気のいいサッカー好きだ。「スルガ杯は大阪で始まって、東京で開催して、大分にも行って、去年は静岡。日本各地のいろんな場所に行って、その土地のファンと一緒に世界レベルのゲームを楽しめる。それが何よりも楽しみです」なんてことを言う。

来年はワールドカップも五輪も南米選手権もない。でもACLとスルガ杯は、間違いなくある。その事実のなんと頼もしいことか。最後になりましたが、鹿島アントラーズの選手、サポーター、関係者のみなさん、国際タイトル獲得、おめでとうございます。Jリーグのチームが海外の、それも南米のトップを相手に勝利したことを日本人として誇りに思います。

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竹田聡一郎(たけだそういちろう)

1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、このコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。

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