いま、味スタにいます。

竹田聡一郎コラム 日々是蹴球

カメラ/FinePix S100FS 提供/富士フイルム株式会社

竹田聡一郎(たけだそういちろう)

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第二百九試合

天皇杯のボール

12月23日の正しい過ごし方としては皇居に行くのも、君が代を歌い上げるのも、日の丸弁当をほおばるものいいかもしれないが、今年は天皇杯の準々決勝があったので観戦に行った。味スタにて鹿島×千葉というカードである。ジャイアントキリングが大きな名物となっているこの大会で、ジェフはJ2以下のカテゴリーから最後の生き残りであったが、なんせ相手は16冠の試合巧者で練達である。ちょっと分が悪いように思えた。

実際、千葉は高い位置に効果的なボールを入れることができず、攻撃の中心である谷澤達也は長い時間孤独を味わった。単純に地力の違いとも言えるが、このあたりの押さえるべきところは押さえる、ツボの熟知こそが鹿島たるゆえんだろう。なんてことを、今日は記者席ではなく自由席のチケットを買って入ったので、1杯700円の生ビールを立て続けにあおりながら思う。大迫勇也ってあんな推進力あったっけ? 柴崎岳はふてぶてしくなったもんだ。高橋峻希は浦和に帰って平川の右サイドを継ぐのかなあ。どっちが勝ってもいい試合で、こうして勝手にビール片手にいろんなことを考える時間を世界三大至福のひとつに数えたい。

試合は64分の大迫弾で動いた。ドゥトラのドリブルを半ばかっさらう感じでペナルティエリアに入ると、右足を振って、この試合当たりまくっていたGK岡本昌弘のニアを冷静に抜いた。ブラジル人のボールを横取りするなんて、なかなかのメンタルである。思わず僕も「おおお大迫~」と鹿島サポにつられて歌う。ビールもお代わりだ。

リードした鹿島は小笠原満男と柴崎のところで余裕を持ってボールを回しはじめたので、僕はツイッターで「もう何も起こらなそうだ」とかつぶやいた。結果だけみるとその通りだったのだけど、ロスタイムになんだかよく分からんが、左サイドから入ったボールに対して鹿島ディフェンスがうまく対処せず、それによって生まれたエアポケットに米倉恒貴が飛び込む。なんとか曽ヶ端が弾いて試合終了のホイッスルを聴いたが、おお、サッカーにはやはり予断は許されないのだ、と戒めになった。そして鹿島は強い。名門や古豪が降格や世代交代に苦しむ中、もっとも高値安定をしているチームのひとつであろう。もはやオリジナル10を誇れるのは鹿島、横浜、清水、名古屋のみ。その4チームのサポーターがちょいとうらやましくもある。

さて、今年もあと2試合。その勝者2チームは元日に決勝を迎える。したたかなオリジナル10同士の対決だろうか。降格した西の名門が最後に意地を見せるか。日刊に「ラブパワー弾」とか書かれた増嶋竜也がまたヒーローになったりするのか。

また、天皇杯はこのサイト「I DREAM」の主であるスルガ銀行が特別協賛をしている。決勝に併せて大会を盛り上げた「SURUGA I DREAM Award」の発表と表彰がある。それも含め、僕はスルガ銀行というイチ地方銀行がサッカーに真剣に向き合っている姿に激しく共感を覚えるし、そこでコラムを書かせてもらっているという事実をかなり誇りにしている。フリューゲルスの年があったし、あのパク?チソンが輝いた年もある。今年もきっと名勝負が生まれるだろう。惜しまれながら引退を決めた、永遠のサッカー小僧・ゴン中山は「正月からサッカーできる選手って、20数人だけなんですよね。その幸せは格別です」と言った。92回目のチャンピオンはどこだろう。楽しみだ。

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竹田聡一郎(たけだそういちろう)

1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、このコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。

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