いま、漢和辞典を持っています。

竹田聡一郎コラム 日々是蹴球

カメラ/FinePix HS50EXR 提供/FUJIFILM

竹田聡一郎(たけだそういちろう)

Profile

第四百四十二試合

ボールと名前

この前、育成年代の試合を観ていたら、試合前の選手紹介で「10番鈴木レアル君」(苗字は仮名)というアナウンスが響いて、「ふうん。変わった名前だな」と一度は聞き流したが、「ん? レアル!?」とノリツッコミというか二度聞きというか、ともかく慌てふためいてしまった。
 
レアリィ? とか痛いギャグを言っている場合じゃない。なんと書くのだろう。零在だろうか、あるいは玲歩だろうか、はたまた麗亜流だろうか。キラキラネームを大きくふかした、QBKネームである。
 
昔はサッカーっぽい名前といえば翼や翔くらいだったが、翼と聞いて思い浮かぶ選手は、いたら申し訳ないんだけど、少ない。むしろカープファンの僕としては水戸啓明出身の扇の要・會澤翼が浮かんでしまった。
 
あとは同級生に蹴人(しゅうと)君がいた記憶があるが、あれは今は少ないのだろうか。名前には流行りもあるだろうから、過去と比較してみる。 
 
まずは98年フランスW杯のメンバーだ。
 
伸幸、晃、豊、正巳、永輔、徳男、素弘、年宏などと渋い名前が続く。ワグナーは別としても、新しいっぽい名前は輝悦や英寿、能活くらいだろうか。
 
先日の欧州遠征はどうだろう。
 
なるほど、永嗣、佑都、麻也、秋、航、和輝、元気、蛍、拓磨などと、今っぽいというか一筋縄では読めないというか、現代を感じる名前が並ぶ。紳太郎や源、弦太あたりは一周回ってカッコいい。
 
約20年でこの変遷だ。さらに10歳ほど下に目を向けてみる。
 
すると、うお、いきなりGK鈴木彩艶である。なんて読むんだ。ざいおん、らしい。ガーナ人の父を持つらしいのだが、最先端だ。決して忘れないのでビッグになってほしい。そのあとも暢希(のぶき)、由勢(ゆきなり)、拓歩(たくむ)など、2000年以降の生まれは油断ならない。山崎大地君なんていうのが来るとホッとするくらいだ。
 
さらに怜、冬一(とういち)、陽(ひなた)と続く。アタッカー陣は尭士(あきと)、建英(たけふさ)、光毅(こうき)だ。僕は半分くらい読めなかったが、新学期に担任の先生は泣き出したりしないのだろうか。
 
もちろん、親が愛情と願いをもってつけた名前をいじるつもりはない。十数年でこうも変わるもんだなあ、という話だ。個性はいいことだし、覚えてもらいやすいし、友達もすぐに呼んでくれそうだ。
 
ただ、埼玉でサッカーのコーチをするアカギにその話をしたら、「俺はバルサ君を知っている」と言うではないか。おお、すごい。ぜひどこかでレアル君と対戦して、クラシコ的マッチアップをしてほしいものだ。
 
そうなると、どこまでいくんだサッカーネームという感じもしてくる。聞けば、アンリ君やジダン君もいるらしい。アンリ君はなんとなく当て字ができそうだけど、ジダン君はむしろ審判の才能とかがありそうだ。ピルロやセスクが好きなお父さんはどう名付けるんだろう。こうなると、週刊少年ジャンプに昔、『リベロの武田』というギャグサッカー漫画があったけど、その主人公の武田弾丸(たま)も別に珍しくないのかもしれない。
 
漢字の面白さと奥深さは、読みが多岐に渡り、一字ごとに意味を持つという理由に他ならない。
 
だから、もうここから先は悪ふざけの域かもしれないけど、「外出」と書いてノイヤーとか、「剛強」でマノラスとか、「突太」でベイルとか、「自由」でクーマンとかも面白い。「滝」でベイルとかどうだろう。面白いだけで誰もつけないし、ほとんどの人は意味も分からないだろうけど。
 
そのうち、大亜伍成(ダイアゴナル)とか、怒陽悦太(ドッピエッタ)とか、樹尋(ジュビロ)とか、そんな名前のサッカー小僧が登場するのだろうか。樹尋くんのお父さんが埼玉に転勤になったら、お父さんは絶対に単身赴任するだろう。
 
最後にタケダクイズです。これらのQBKネーム(もちろんファーストネーム)は、なんと読むでしょう。みんな日本代表クラスの選手や関係者です。
 
 Q1.旅人
 Q2.整心
 Q3.刹那
 
答えは僕のツイッター(@takedasoichiro)まで。全問正解した、たくましい想像力を持った方には、なんかあげます。
 

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竹田聡一郎(たけだそういちろう)

1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、このコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。

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