サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

千葉県船橋市で過ごした中学時代をサッカーに明け暮れた。
現在進行形の作家が作品を提供する場”NOW IDeA”を東京/南青山にオープンしたUTRECHTの江口宏志氏に、サッカーと本について話を聞いた。

サッカーをやってるなんてとても言えなかった

中学生時代と高校生時代はサッカー部でした。ポジションはウィング。千葉の船橋で育って、社会人になって就職した会社では、静岡の藤枝に転勤して2年過ごしました。こう言うと、どれだけサッカーが上手いのかと思われますが、こういう環境だと周りのレベルが高くてサッカーをやっているなんてとても言えなかったですね。高校時代は近くの市立船橋とは練習試合すらやってもらえなかったですから。今はもっぱら見るほうです。先日は高校サッカー選手権の決勝を見に国立へ行ってきました。高校サッカーは応援席まで含めて一丸となって同じ方向を向いているのが面白いですよね。それぞれの高校の個性に意思を感じますし。僕は本に携わる仕事をしていますが、本を作る、文章を書くということも好きですが、本を探すこと、紹介するのも同じくらい好きです。「サッカーもプレーするよりも面白いことがあるのです」と人に知らしめたいですね。まぁ、下手だった選手のいい訳ですが。

ちょっと変わった視点からサッカーを眺めてみる

海外に本の買い付けに行った時でもサッカー関連のものは気になります。

サッカーを真正面から扱った本、例えばマラドーナの自伝とか、クライフのサッカー理論とかではなく(そもそもそういう本は扱ってないですが)、文系の人がたまたまサッカーを素材にしたもので面白いものを見つけると嬉しいですね。サッカーって世界の共通言語だし、その人それぞれの見方がある。いろんな解釈をして遊べる素材であり、共通の思い出やイメージ持っているから、作品を作る際のプラットフォームとして非常に機能するのではないでしょうか。面白い本だと、このサッカー俳句(FOOTBALL HAIKU)という写真集。アイルランドの出版社からでているものです。「日本文化がついに世界のサッカーに影響を与えた!」といっては過言ではあるのですが(笑)、要は1行の言葉が書かれたTシャツを着た選手3人を写して、俳句を作ってしまおうというもの。

海外では、3行詩だと基本俳句として成立しているということです。これもサッカーが共通言語になっているからこそできる遊びではありますよね。僕が気に入っているのは、オランダのハンス・ファンデル・マールという人の作品。草サッカーの風景を撮影したものなど、何冊かサッカー関連の写真集を出しています。中でも僕が一番好きなのは、この“KEEPERS”という本。キーパーだけをひたすら撮っていて、他の20人のフィールドプレーヤーは、まったく出てこない。ただ、草サッカーのキーパーが一人ぽつんとゴールの前で佇んでいるのがなんとも哀愁を誘っていいんですよ。プレーの躍動感とかまったくなくて、ページをめくるたびに静謐な感じがしていくというか、いい本です。あと、本とは関係ないですが、キーパーのセービング集を先日見ました。スーパーゴール集とかはよくあるじゃないですか。そこでもキーパーは引き立て役。でもこのDVDはキーパーが主役。
視点を変えるだけで、ゴールシーンも全然違ったものに見えてくる。サッカーでヒーローになる、ワールドカップに出るって本当にごく一部の人だけじゃないですか。でも、世界中の男の子が一度は思う夢だと思います。でも、当然誰もが出られるわけではない、ほとんどの人たちはサッカーで一流プレーヤーになるってことをあきらめてしまう。僕もそうと言えばそうですし。ちょっと屈折した、ひねくれたものが好きというのもありますが、こういう人達がサッカーにあらたな魅力を付け加えていくのかなと思いますね。僕が今、本屋でやっていることは、新しい視点で本を紹介するということ。そういった本を探しに海外を色々行きますが、サッカー関連の書籍はどこに買い付けにいっても(アメリカでさえ)、見つかるので、そういったちょっとひねくれた本を見つけ出して紹介していきたいですね。サッカーの幅広さ奥深さを伝えていくことも、すごーく長い目で見れば日本代表強化にもつながるはずですし!?

江口宏志 プロフィール

江口宏志(エグチヒロシ)

江口宏志プロフィール

1972年、鳥取生まれ。2002年、代官山にセレクトブックショップ『UTRECHT』をオープン。2005年中目黒に移転。インテリアショップやホテルなどのブックセレクトも行う。2008年表参道に現在進行形のアーティスのエキシビジョンスペースを併設するブックショップ『NOW IDeA』をオープン。サッカーはもっぱらビール片手のスタジアム観戦で楽しむ。http://www.utrecht.jp/

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