サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

映画『Sweet Rain死神の精度』やドラマ「ロス:タイム:ライフ」で、2008年最も活躍した監督の一人に数えられる筧昌也。中でもドラマ作品にサッカー特有のロスタイムという概念を導入し、人の“死”というドラマ性と、実況やテロップなどサッカー中継の要素とを軽やかに融合させた「ロス:タイム:ライフ」は、画期的なドラマとして話題をさらった。 監督筧昌也は、現実のサッカーに対し、どんなドラマを見ているだろうか。

悔しさが、サッカーへの愛を支えています

小中学校とサッカーをやっていましたが、やっている友達が多かったとか、楽しそうだったとか、そんな理由でした。プロになりたいというわけでもなかったし、高校のころから映画とかマンガとか物作りの仕事に就きたかったので、サッカーはあくまで遊びでした。そんな中でも、ドーハの悲劇はかなり大きな経験でした。これだけ盛り上がっておいて行けないとわかった時の気持ちといったらなかったです。でも、もしあそこで行けていたら「好き度」が低くなっていたのかもしれません。出られなかったことで、妙な緊張感を持って、それからのJリーグも見れましたから。仏W杯後、映画作りが忙しくなり、一度サッカー熱が冷めてしまいました。サッカーの神様に「すいません」という感じなのですが、日韓大会が近づいて来ると熱が戻ってきて、今度は逆に勝手に緊張してきてしまって(笑)。だって、死ぬまでで日本でもう一度W杯やることなんてないかもしれないじゃないですか。

でも、ふと今、なぜサッカーを見続けてきたのかと考えてみると、ドーハの時も、日韓W杯も、要は悔しかったわけです。ロスタイムでの失望しかり、トルコとの負け方や韓国の躍進とか。すごい悔しかったです。それで、それ以降、日本代表の試合の95%は観てるようにしています。年初めに、まずカレンダーに書きますからね。「VS タイ」みたいに(笑)。

無意識と雰囲気が作るサッカーの熱狂

監督という職業柄もあるとは思うんですけど、一見、感性で作られているように見えて、論理的に作られている、そういうものが好きなんです。サッカーは、個々の瞬発力でやっているようで、実はものすごいパターンの練習をして、0.1秒のタイミングを無意識レベルで動けるように練習しているわけですよね。僕ら演出家も俳優さんもリハーサルを何度か繰り返します。でも撮影本番でないと分からないことは沢山ある。だから結局、ある種ライブである「本番」にパッと何かを閃くことができるかどうかって大きいんです。どちらもその瞬間が連続するわけですから、役者さんもサッカー選手もすごいですよね。僕も準備をした上で、かつ、なるべくライブに強い監督でいたいです。

ロスタイムの人生論 - 人は死を前にどんなプレーでゴールを決めるのか

人が死ぬ間際、決められた時間の中で何ができるのかという切迫感と、何年かに一回起こるドーハのような印象に残るロスタイムを繋げてみたらおもしろいんじゃないかと考えて「ロス:タイム:ライフ」シリーズを制作し始めました。実況やテロップを入れて、サッカー中継自体をパロディにしてしまい、当初はサッカーファンだけに喜んでもらえば良いくらいの気持ちで作っていました。

ライフワークにしたいんです。その都度、ご一緒したい役者や脚本家と一緒に作れれば出会いの機会にもなるし。人様に飽きられても自分が飽きるまでダラダラやろうと思っています(笑)。そう思えるのも、ひとえに趣味であるサッカーを仕事に活かしているからなんですよね。また、映像作品においてはサッカーそのものを描くよりも、ちょっと視点をズラした方が面白い作品が撮れると思います。今、僕の中での最大限が「ロス:タイム:ライフ」なんです。サッカーの試合は1シーンもないけれど、サッカーへの愛を込めています。実況・解説は最たる要素ですね。何より連続ドラマ版の時の青島達也さん(実況役・フジテレビアナウンサー)は最高でした。もう超天才です!(笑)いつか、サッカーそのものを撮りたいという気持ちもあります。その場合、スポットライトを浴びている選手ではなく、練習生やトライアウト選手等に興味があります。サッカーというメジャースポーツだからこそ、そういうところをフィーチャーしたいですね。

筧昌也 プロフィール

筧昌也(カケヒマサヤ)

筧昌也プロフィール

03年、『美女缶』がゆうばり映画祭グランプリ等を受賞し、04年劇場公開。翌年には「世にも奇妙な物語」にて妻夫木聡を主演に迎えセルフリメイク。連続ドラマ「ロス:タイム:ライフ」(08.2~CX)では原案、総監督、脚本を務める。08年春、初長編映画『Sweet Rain 死神の精度』(主演:金城武)が劇場公開される。その他、雑誌「anan」でコラムと絵の連載を持つ等、多方面に活動している。

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