サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

J1で戦うアルビレックス新潟の下部組織にあたる、アルビレックス新潟シンガポール。東南アジアの地で奮闘を続けるクラブのCEOの是永大輔氏は、おそらく世界でも最も若いクラブの社長であろう。そんな彼に、サッカークラブの運営について、また異国の地でビジネスすることの難しさ、意義を聞いた。

シンガポール国内リーグについて

Sリーグとは1996年に始まったシンガポールのプロサッカーリーグです。現在はシンガポールのチームに加えて、日本、韓国、ブルネイから、またシンガポールのU-23ナショナルチームが参戦した12チームで開催されています。Sリーグができる前は、シンガポール代表チームがマレーシアリーグに参戦していました。シンガポールはマレーシアから独立した国ということもあって、双方のライバル意識がとても強く、リーグ自身も凄い盛り上がりでした。ところがマレーシアリーグに参加していた最終年にシンガポール代表がリーグ優勝を果たすと、マレーシア側から八百長疑惑がかけられてしまう。シンガポールは結局リーグを脱退してしまうこととなりました。そして意気揚々と立ち上がったのがSリーグ。ところがこれが何故か盛り上がらない。理由の一つは、リーグ内のライバル意識の欠如。シンガポールは車で30分も走れば端から端に行ける狭い国。みんなご近所さん感覚なので、国内間でのライバル意識というのはあまりない。だからスタジアムも閑古鳥が鳴いている状態。サッカーは国技のはずなんですけどね…。

とにかくそこで、ライバル意識を引き出すために海外のクラブも参加させようという考えが出されたわけです。そしてシンガポールサッカー協会からJFAにオファーがありました。「シンガポールリーグに参戦できますよ。どこかやりませんか?」という話。それにアルビレックス新潟が手を挙げたわけです。そんな話が持ち上がっている頃、新潟でたまたま「ITとサッカー」というお題目で講演をさせていただきました。新潟のスタッフの方に「シンガポール、誰かいい人いませんかねえ?」と目の前で言われ、「はい!ここに!」と。アルビレックスの池田会長も何かで僕の名前を知っていてくれていたようで話は早かったです。話をもらったのが確か6月。8月くらいに決めて11月にはシンガポールに来ていました。 

アルビレックス新潟シンガポールの存在意義を

手を挙げてみたものの、実はシンガポールには来たことがなかったので、“暑い・東南アジア・法律厳しい”くらいしかイメージがなかった。Sリーグなんて知るわけがない。だから来る前はあの手この手でムチャクチャ調べました。その上で「こういう存在であるべき」というビジョンを作り、そこから派生するアイデアを練っていきました。 日本での仕事と大きく違うのは、お客さんの存在がリアルになったということです。モバイルをはじめとしたITのビジネスは、「数」の要素が非常に強い。でもサッカークラブのビジネスは、face to faceというか、愛情みたいな形の無いものが何よりも重要。ですので、横の広がりも重要ですが、縦に掘るという作業がそれ以上に大事だと思っています。さらにシンガポールでは小さいコミュニティの中でのビジネスなので、あちらを立てればこちら立たずということがたくさんある。もしかしたら全部がそうかもしれない。クラブ運営は、大きな流れも見据えながら事業を進めなければならないので、短期的には「おかしい!」と思われることもあるかもしれません。そういう中では、やっぱり誠意。表面的に取り繕ってフラフラするのではなく、まっすぐに進んでいれば応援してくださる方も増えてきます。

毎日を過ごしながら、皆さんのおかげ、ということを痛感しています。 昨季からのクラブのスローガンは「The reason.」というものです。直訳すると「その理由」。多くの人々にとって、シンガポールに日本のサッカークラブがあることに意味はないかもしれない。けれど、色んな方のサポートがあってここに存在できている。だから多方面に対して意味を作っていかなければならないと思っています。そのために、選手たちが「どうしてここにいるのか」、クラブも「どうしてここにあるのか」、それらの理由を表現しなければならないと思っています。 サッカークラブは公共性の高い団体です。だからサッカークラブだからサッカーだけをしていればいい、というのは大間違い。もっともっとたくさんの人に、色んな方法で勇気や感動を与えることができるクラブ。これがテーマです。 「The reason.」の答えの一つは、「日本とシンガポールの架け橋」になる、ということ。アルビレックス新潟シンガポールの活動の中で、そう感じていただける方を一人でも増やしていきたいと思っています。

是永大輔 プロフィール

是永大輔(コレナガダイスケ)

是永大輔プロフィール

アルビレックス新潟シンガポールCEO

1977年生まれ。日本大学芸術学部卒。IT企業でモバイルを中心としたサッカービジネスに携わり、日本最大のサッカー有料メディアを作る。また、サッカージャーナリストとして日本代表および海外サッカークラブの試合を取材しながら世界各地を周った。一方でFCバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールといった海外クラブとのビジネスも立ち上げ、現在はアルビレックス新潟シンガポールのCEOを努めつつ、シンガポールサッカーリーグ、Sリーグの理事も兼任する。

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