サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

ダウン症、自閉症の子供たちを中心とした絵の教室アトリエ・エーを主宰している赤荻徹さん。絵画教室を始めるきっかけになったのは、ダウン症児のサッカー教室。サッカーが教えてくれたこととは?

ダウン症児のサッカー教室を初めたきっかけ

ダウン症児のサッカーチーム“able FC(エイブル)”を始めて、今年で7年になります。そもそもこのチームに携わるようになったのは、当時彼女だった僕の妻が、杉並区の広報誌にダウン症児のサッカー教室のコーチ募集というのを見つけてきてくれたからです。僕は両親が教員で、とくに母が養護学校につとめていたこともあって、幼いころから障がいを持つ子と一緒に育ってきました。大学でも教育を専攻していましたが、卒業後は映画会社に就職。でも、ことある度に、教育や福祉への思いについて彼女に語っていたので、気にしていてくれていたのでしょう。中学時代にサッカーをやっていたので、早速応募し、2002年のエイブルのスタートからコーチとして参加しました。コーチを始めた頃、チームの子供が自宅に泊まりに来たことがあったのですが、あまりに楽しかったので、サッカー以外でも何か出来ないかなと考え、絵の教室 (atelier A)もはじめることになりました。現在は、月3回はエイブルFC、月1回はatelier Aと毎週日曜日に活動しています。

サッカーが世界を熱狂させる理由

よく言われることですが、サッカーはボールさえあれば、誰でも参加できる。これは、なにより素晴らしいことです。スタートはボールを蹴ること。それからパス。シュート。パス交換…。パス相手ができて、そして敵との対戦…と、かかわる人数が増えていくほどに面白い。この面白さは観ているほうにも伝わるから、最初はただ蹴るだけの子供も、2度目、3度目くらいに なるといつのまにかパスに入ってくるようになったりします。サッカーはとてもシンプルだけど奥が深いスポーツです。パスは相手を思って蹴らないといけないですし、ましてや試合になると、お互いの心が通じ合わなくてはいけない。心が通じ合ったときの嬉しさと楽しさは得難いものがあります。また、ある程度サッカーに慣れてくると、システム論的なことも自然と出てきます。パスをもらいやすいように位置を考え、自分の利き足を生かすためには、どのポジションがいいかとか。エイブルFCの子供たちも試合ではそれぞれの得意なポジションを自然に見つけていってくれます。中学時代のサッカー部では必死なだけでしたが、今はサッカーの素晴らしさを毎回味わっています。大げさに言えば、サッカーがなぜ世界を熱狂させるのかが分かってきました。ボールを使ったコミュニケーション、言葉がなくても伝わるといことを実感しました。

一緒に汗をかくだけで心の距離がグッと近づく

サッカー教室での子供たちとの関係も素晴らしいものです。同じフィールドに立って、一緒に汗をかくと立場がフラットになって交じれる。これはなによりも心と心の距離がグッと近づく気がします。心と心を近づけるには、スポーツ、とくにサッカーはもってこいのものです。一緒に汗をかくと、障がいに対する概念がサァッと変わっていきます。思い込み、先入観を一度なくして、それぞれのアプローチを理解することが大切だということを、こうした活動を通して知っていただければと思っています。サッカー教室に一度参加してもらえれば、色々言葉にする必要がなくなるほど、それぞれのあり方のひとつに障がいがあるということ、つまり僕とあなたの違いのひとつ程度のものだということがわかって来ると思います。軽い気持ちで参加したことからはじまったエイブルの仲間たちとの関係は7年間に渡ります。月3回という頻度は、友人の誰よりも会っていることになり、まさに親友となりました。本当に彼らとは、気の合う楽しい関係が築けています。最初はとても小さな集まりでしたが、継続しているうちに少しずつ人が増え、絵画教室にも派生するなど、たのしい輪がますます広がってきています。こういった色々な人の楽しさが混じり合った、エイブルやatelier Aの空気が自然にフワッと流れ出て、広がっていけばいいなーと思っています。

 

赤荻徹 プロフィール

赤荻徹(アカオギテツ)

赤荻徹プロフィール

アトリエ・エー主宰
映画配給会社勤務の傍ら、2002年よりハンディキャップサッカーのチームであるable FC(エイブル)のコーチ、2003年よりダウン症、自閉症のこどもたちを中心とした絵の教室atelier A(アトリエ・エー)を主宰。2006年には編集長を務める雑誌 「⇔special」創刊。
http://atelier-a.petit.cc/

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