サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

00年末に現役を引退。現在はサッカー解説者をはじめ、ラジオパーソナリティー、サッカースクールコーチ、(財)日本サッカー協会特任理事など、幅広いジャンルで活躍中。高いコミュニケーション能力を生かし、現役選手のみならず、あのベンゲル監督とも電話で話せる間柄を持つ。世界基準を知っている中西哲生氏に聞くことは、岡田武史監督率いる日本代表が秘める可能性について。いつものidreamより、少し熱くサッカーを語る。

ポイントは初戦のカメルーン戦

よく「(引退してから)あまりサッカーを見る時間がないんじゃない?」と聞かれるんですが、海外も日本のサッカーもしっかり見ていますよ。そうしないと、こういうお仕事のときにしゃべれなくなってしまいますから(笑)。では、いきましょうか。今年のW杯・南アフリカ大会で、日本はこれまでの4大会のなかで一番厳しいグループに入りました。初戦のカメルーンとは、過去の対戦成績を見ると日本優位ですが、アフリカ大会で地元ですし、カメルーン代表のタレント軍団は日ごろからヨーロッパでプレーしていますから寒さも問題ありません。第2戦のオランダは15人くらいまでの選手がワールドクラス。日本としてはベストなパフォーマンスを発揮できるように調整しないといけません。第3戦のデンマークは、オランダ、カメルーンと対戦した後に日本と戦うことになります。その時点でおそらく勝ち点1か勝ち点3を取っている可能性が高く、デンマークは日本との試合で勝ち点を積み上げないといけない状況ですから、相手は全力で向かってきます。やはり、初戦のカメルーン戦がポイント。最低でも引き分けは必要です。

監督のメッセージが分かる交代を

日本が勝つために必要なことは1試合の試合運びの精度を上げることです。06年ドイツ大会を思い出してください。このとき、日本は2試合(初戦のオーストラリア戦、第3戦のブラジル戦)で先制しながらも、1-0のときの試合運びが良くなかったために、追いつかれ、そして逆転されました。日本としては、先制した後にその相手を受け止めてから前に出るのか、前線からの守備で相手に抑えにいくのか、もしくは日本がボールを持ったときに攻撃に出るフリをしてボールをキープしていくのかなど、戦い方を事前に考えて、選手の意識を統一しないといけません。サッカーには、リードしているときにあえて攻めなくてもいい時間帯があります。ですが、日本代表のこれまでの戦い方を見ていると、ブロックを作って守備をすることが、あまり得意ではない。これができないとW杯で勝つことは難しくなります。あとは、監督がメッセージ性のある交代をすることも重要です。W杯という大舞台では12、13、14人目に出てくる選手のクオリティーで試合が決まります。例えば、昔であれば中山(雅史)さんのようなタイプの選手。今の代表で攻撃のカードとして期待しているのは石川直宏。彼のダイナミックな動き、スピードのある2列目からの飛び出しは世界の舞台でも魅力的。サイドに流れてチャンスも作れるし、ミドルシュートもある。岡田監督にはぜひ守備固めの選手も含めてW杯本大会の前に実戦で意図的な交代を試してもらいたいです。95年に僕が所属していた名古屋グランパスエイト(当時)でベンゲル監督(現アーセナル監督)が見せた交代策は秀逸でした。攻撃は森山、守備のときは僕がピッチに入っていく。その交代で、ピッチにいる選手が「点を取りに行くぞ」もしくは「守って勝つぞ」という監督のメッセージを汲み取ることができました。日本代表でも交代選手が入ることで、みんなのスイッチが入って、戦い方が統一されるような試合運びを見せてほしい。個人的にはこの瞬間がサッカーの醍醐味だと思っています。

後半15分を過ぎたあたりのよく見られるベンチワークの駆け引きは、W杯本大会を見ていくなかで、面白いポイントです。また、中高生世代のクラブユースでもW杯のような方式でやるべきだと考えています。トーナメントではなく、必ず予選3試合で戦ってから、決勝トーナメントにする。4チームの予選から2チームを抜けられるというレギュレーションはW杯だけでなく、CLもオリンピックもすべて同じ。日本は3試合をトータルで考える能力が不足しています。そうすれば引き分けの文化も育まれますし、子供のころから世界基準の戦い方に触れておけば、彼らが日本代表選手になったときにW杯の戦い方に必ず生きてくるはずです。

日本がW杯で優勝するために

今はサッカー以外の仕事も多くなりましたが、テレビでもラジオでも、一般の社会の方々がサッカーに触れるように、できるだけサッカーの話をするように心がけています。02年の日韓開催のときは盛り上がりましたが、あれはJリーグができたときに起きたブームに近いものでした。まだサッカーは、日本では社会の一部ではありません。もっとサッカーが広くいろんな人たちに取り上げられるようにしていきたい。だからこそ、僕の夢も遠く聞こえてしまうのですが、いつか日本がW杯で優勝する姿を見たいと本気で思っています。そのために自分ができることは、サッカー界の歴史を少しでも進ませること。子供にサッカーを教えているときも、常にそういう気持ちで教えています。そういう気持ちで日々の仕事をしていけば、自分が90歳のときに日本がW杯で優勝する姿を見られるかもしれない…。そうなれば、もう思い残すことはありません!

中西哲生が選んだベスト11

左利きJリーガーベスト11

11人の選考理由
「これ、かなり深いですね(笑)、誰をどうやって配置するのか。兵働は僕が監督だったら、絶対に呼びます。兵働はサッカーをよく理解しているし、キックのクオリティーも高く、種類も豊富。中村俊輔をあえて右SBに置いたのは、日本の左利きのなかで右のキックが一番うまいから。右サイドから右足でクロスボールを上げられる選手は彼がベストだと思う。本田には真ん中でトップ気味にやってほしい。家長にはタメを作ってほしいから、あえて右に配置。
サッカーで左利きの選手の重要性はあまり語られていませんが、左利きがチームに何人いるかどうかで、パスコースの選択肢が変わってくる。左SB、ボランチ、右サイドというように、斜めに左利きの選手を配置するのが理想。右利きが11人いれば、どうしてもボールは左に行きやすい。ポイントに左利きを置くことが重要」

中西哲生 プロフィール

中西哲生(ナカニシテツオ)

中西哲生プロフィール

スポーツジャーナリスト

1969年、愛知県生まれ。同志社大学卒業後、プロサッカー選手として名古屋グランパスエイト、川崎フロンターレで活躍。2000年末、現役引退。引退後はスポーツジャーナリストとして、日本テレビ「ズームイン!! SUPER」、TBS「サンデーモーニング」、テレビ朝日「Get Sports」などのテレビ番組でコメンテーターを務めるほか、全国各地でサッカー教室を行い、サッカーの普及に努める。2008年7月、(財)日本サッカー協会・特任理事に就任。また2009年4月より、TOKYO FM(JFN系列)「中西哲生のクロノス」メインパーソナリティーを務める。

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