サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

サッカーのある場所ならば世界中どこへでも旅してまわる、スポーツライター杉山茂樹。サッカーにまつわる多くの著書があることでも有名だ。海外滞在日数は年間200日以上という彼だからこそ語れる、サッカーの面白さとは。

移動することで見えるサッカーの輪郭

最近では、この10年間世界各地をまわって書きためたサッカー観戦記をまとめて、『杉山茂樹のワールドサッカー「4-2-3-1」観戦ツアー』という本も刊行しました。こういう本を書いたりすると、評論家や戦術家、サッカー研究者のように見られることがありますが、僕としてはそういうつもりは全くありません。所詮は現地で試合を見ることが大好きな単なるサッカーファン。多いときでは年間240日くらい海外で生活を送っていて、これまでに訪れた国は60カ国を超えます。そんなに海外にいるならば、いっそ向こうに住めばいいと思うかもしれませんが、住みたくはないんです。それは、あくまでも外部であり、第三者である視点を常に持っていたいから。例えば、日本からバルセロナへ行き試合を観る。すると何を思い出すかと言えば、日本を出る前に最後に観た試合なんです。バルセロナに来るとむしろ日本のことを思い出す。バルセロナからミュンヘンへ行ってもまだ、日本の試合のイメージが残っている。試合の残像がどんどん薄いトレースで重なっていって、連なりが出来てくる感じです。そうすると地域によってどういった差があるのかがだんだん分かってきます。移動することではじめて輪郭が見える。相対化できるんですね。だから、戦術なんかを学ぼうと思っているわけではなく、かっこよく言っちゃうと「ついで」に見えちゃっただけなんです。

サッカーの美しさが分かる場所

どこでサッカーを観るのが一番幸せかと言えば、バルセロナにあるカンプノウ。ここの記者席って正面スタンドの最上段に設置されているんです。それで、ピッチにせり出すようにゴンドラ席みたいになっている。完全に駒になっているからこそ、誰にも感情移入することもなく冷静に観ることができるんです。それと、バルセロナのサッカーの魅力は何と言ってもデザイン性。その美しさは思わずスケッチしたくなるほどです。彼らは上下によく動くから、ダイナミックでグルーヴ感があります。サッカーの美しさというのは、造形美であり集団美であることを改めて感じられるスタジアムですね。記者席が最上段にあるのは、うちのクラブの魅力が一番分かるのはこの場所だから、ここから観てくれということなんでしょう。

喋るスポーツ

なんでサッカーが世界中で一番人気があるスポーツかって言ったら、喋るスポーツだから。サッカーは感想もバラバラで、正解がありません。点も入ってせいぜい2~3点。だから、「たられば」で語れてしまうんですよ。もし、あいつがあそこで1点決めてたら…って。例えば、アルゼンチン対日本が1-0で、実質もの凄い差があるんですが、1-0って言うと接近して見えるじゃないですか。ラグビーで言うと60-0くらいなんだけど、サッカーなら1-0なんですよ。敗者でも夢を語れる。言い訳が平気で正当性を持ってまかり通るんです。

日本サッカーが盛り上がるために

ワールドカップで日本代表は三戦全敗するかもしれないですが、三連敗したらサッカーは冷えるみたいなことがよく言われていますよね。

僕はそこに問題があると思うんです。だって、200チームが参加した中の、上位32チームに選ばれているんですから。出場できるだけで、出られない168チームからしたら何て羨ましいんだろうってなりますよ。どうして負けたら日本のサッカーの人気がなくなるかって言ったら、そこに「喋る」ってことが入っていないからだと思うんです。負けたら文句を言えばいいんですよ。それが反動のエネルギーに繋がるんですから。例えば、イングランドやオランダがユーロやワールドカップの予選に落ちたら、人気が落ちるかって言ったら全くですよね。むしろ次点の方が盛り上がるくらい。負けることによって、文句が出ることによってまともになるんです。負けても誰も何も言わないことほど恐いことはありません。サッカーは言論の自由の象徴なんですから、日本でもみんながもっと意見を発することで盛り上げていく必要があるんじゃないかと思います。

杉山茂樹が選んだベスト11

インタビューしたことのある監督ベスト11

ポジションは現役時代のものです。この人達はみんな強烈かつ人間としての幅が広い人たちでした。

杉山茂樹 プロフィール

杉山茂樹(スギヤマシゲキ)

杉山茂樹プロフィール

1959年7月8日生まれ、静岡県出身。東京都在住。AB型。大学卒業後、フリーライターとして取材活動をスタート。得意分野はサッカー。ヨーロッパが厚め。82年のスペイン大会以降、7大会連続でW杯を現地取材している。モットーは「タテマエよりホンネ」。愛称はスギッチ。最近はサッカー番長ともいわれている。

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