サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

90年代より音楽評論家として執筆を開始し、自ら運営を始めたレーベルやイベントを通じて、日本のブレイクビーツ、エレクトロニックミュージック・シーンの前進に大きく貢献してきた原雅明。そんな彼も、実はサッカーに学び、サッカーと共に生きる一人である。

本当はずっとプレーがしたかった

野球少年だった僕が初めてサッカーにふれたのは、小学校高学年のとき。当時、日本サッカーリーグ(JSL)に参加していた日立製作所サッカー部が、僕が住んでいた世田谷近辺の小学生たちを集めてサッカースクールを開いたんです。どうしてそれに参加しようと思ったのかは全く覚えていないけれど、そこで初めてボールを蹴ってからというもの、僕は完全にサッカーの虜になってしまったんですよ。それからは、親に連れられてJSLの試合にも通ったし、バイエルン・ミュンヘンの来日試合でフランツ・ベッケンバウアーの生プレーも目撃しました。今では考えられない放送形態だったけど、海外リーグの試合を前後半2週にまたがって放映していた「三菱ダイヤモンドサッカー」(TV東京)の時間を心待ちにしているような少年だったんです。でも、そこからずっとサッカー漬けというわけにはいかなかった。中学校にサッカー部がなかったんですよ。小学校の頃に一緒にプレーしていた先輩たちも、サッカーができないもんだからグレちゃったりしていてね(笑)、僕もそこで一度サッカーから遠ざかり、今の仕事に繋がるような経験を蓄積していったというわけです。だから、ずっとサッカーができる環境で育っていれば、こんな仕事はしていなかったと思うんですよね(笑)。

Jリーグ開幕でサッカーに最接近

再びサッカーに急接近するきっかけは、やはりJリーグの開幕です。その頃になると、戦術やプレーの連携・質といったサッカーのディテールの部分が面白くなってきた。とにかく点をとっちゃうゲルト・ミュラーのような選手に憧れて、一人の選手ばかりを追いかけてサッカーを見ていた幼い頃とは違い、もう少し試合全体を俯瞰することができるようになっていたんでしょうね。だから、チームや試合の全体像が記憶に残るようになったのは、意外と最近のことなのかもしれません。僕はJ2時代からFC東京のファンですが、ほかに覚えているチームで好きだったのは、90年代のバルセロナとか、ズデネク・ゼーマンが監督をしていた頃のローマとか…。でも、それとは別に、自分でボールを蹴っていた頃の記憶もよみがえってきて、やっぱりプレーがしたくなったのもこの頃なんです。そんなわけで、なんとか人を集めて自分のチームを結成し、何度も対戦したのが田中フミヤ(テクノDJ/ミュージシャン)くんのチーム。最初はお互いに結成間もないチームで、試合内容も白熱していたんだけど、半年ぐらいするとすごく力の差がついちゃった。向こうのチームにブラジル帰りの人が加わったんですよ。ずるいでしょ!?でも、相手キーパーがピエール瀧さん(電気グルーヴ)の時はいい試合をしましたよ。瀧さんだと、ゴールに入れさせてくれる感じだったから(笑)。ほかにも、ドイツからよんだマーカス・ポップ(オヴァル)をサッカーに誘ったら、オタクな見た目とは裏腹にめちゃくちゃサッカーが上手かったとか、面白いことはたくさんありました。最近また、プレーの機会が減ってしまっているのが残念ですね。

クラブ経営から学ぶことは多い?

今の仕事とサッカーの繋がりって、あまりないように思えるんですけど、それでもサッカーから学ぶことは多いんです。そもそも、自分のサッカーチームに集まってくれていた人との関係性って、イベントを1つオーガナイズする時の出演者・スタッフとの関係性に似ているところがあるんですよ。

お金を目的とした仕事上の付き合いだけじゃ語れないし、かといってプライヴェートで仲の良い友達との付き合いとも少し違う。試合とかパーティーとか何か目的があって、そのために集まった人間が限られた時間を共有する。ある意味ドライだとは思うけれど、それは本当に貴重な関係性だと思いますね。それに、いま僕はインディペンデントで音楽レーベルを運営しているのですが、これからのレーベルというものは、一部の大手を除いてみんなどんどん規模を小さくするしかないと思うんです。サッカーの世界でもいま、資本や戦力の偏りが問題になっていますが、僕らも同じなんです。だから、J2やJFLのクラブ経営なんかは本当に参考になるんじゃないかと思うんですよね。この時代に、サッカーをサッカーとして、音楽を音楽として、成立させ、根付かせるためにはどうすればよいか? 企業社会を上手く渡り歩きながら、生き残り、続けていくための方法を考える上で、中小クラブから学ぶことはたくさんあると思います。

原雅明が選んだベスト11

20代前半メンバーでの新代表

Wカップが終了しました。いろいろあったけど、結果的には、今回の日本代表の試合は全般的に良かったと思うのです。これからの可能性を感じさせるものでしたし、何より直前まであれだけしらけ気味になっていた日本の僕らを、もう一度奮い立たせてくれたんですから。ただ、それだけに違うメンバー選考もありえたのではと多くの人が思ったのではないでしょうか。そういう気持ちも汲み取りつつ、日本がやってきたサッカーを次に託すための、20代前半のメンバーでの新代表のフォーメーションを考えてみました。代表での実績がないとか、本来のポジションではないとか、いろいろ現実的な理由は無視した上での選出なんで(FC東京関係のメンバーが多いぞというのも)、その辺はおおらかな気持ちで見てください。僕はこのフレッシュな並びにとてもワクワクした気持ちを覚えます。

原雅明 プロフィール

原雅明(ハラマサアキ)

原雅明プロフィール

corde inc.代表/音楽評論家

音楽ジャーナリスト/ライターとして執筆活動の傍ら、soup-disk及びdisquescordeレーベルの運営、イベント・プロデュースなどを手がけ、近年はLOW END THEORYの日本ツアーのオーガナイザー、非営利ネットラジオ局Dublab、Creative Commonsのアート・プロジェクトINTOINFINITYの日本側キュレーターも務める。単行本『音楽から解き放たれるために──21世紀のサウンド・リサイクル』(フィルムアート社)。カルロス・ニーニョ率いるTurn On The Sunlightのリリースと来日公演を今秋に企画。
http://intoinfinity.org http://corde.co.jp

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