サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

毎週金曜日にJ SPORTSで放送されている、凝縮された今のフットボール事情を伝える「Foot!」。その番組内で毎週紹介されるユーモラスなイラストを描いているのが、イラストレーターの内巻敦子さんだ。プレーに限らない、人間味溢れる選手の行動や表情を巧みに掬いとったイラストは、サッカーへの愛情と自由な向き合い方を感じさせる。

はじまりは中村俊輔選手

勝手なイメージで申し訳ないのですが、Jリーグ発足当初のJリーガーに“夜のハットトリック”と表されたようなチャラいイメージがあったのです。ところが2000年のシドニー五輪を友人の家で観た時、初めてまともに中村俊輔選手を見て、自分の中のサッカー選手のイメージとあまりにかけ離れた姿にびっくりしたんです。黒髪のマッシュルームカットで体の線も細く大人しそうな佇まいなのが、プレーが始まるととたんに活き活きとし、負けず嫌いだな~と感じさせる姿が印象的でした。何だか気になって、俊輔選手を中心にJリーグを観るようになり、それから急激に海外にハマっていきました。ここまでサッカーにハマり、イラストを描くまでに至る全てのきっかけをつくってくれたのは中村俊輔選手なので、良いときも悪いときもずっと応援すると決めています。偶然にも「Foot!」で初めて映して頂いたイラストは、スコットランドプレミアリーグ特集のセルティックと俊輔選手でした。それまで好きでイラストを描きためていたのですが、何かと節目に役立ったり、助けられているような事が何度かあります。以前正社員として勤めていて、今もお仕事を頂いてお世話になっている広告制作会社では、入社時の面接で社長さんが俊輔選手のイラストを気に入って下さり採用して頂いたという事もあったんです。
きっと優秀には見えなかったであろう私をイラストだけで採用してくださった社長さんってすごいなと思いますし、とても感謝しています。そして何とその後、その会社のお仕事の関連で、あるCMにエキストラで出させてもらい、ついにご本人にお会いした事があるんです。CM制作会社さんに資料として、私が過去録ってきた試合映像をお貸しして協力したらエキストラに駆り出して頂き、控え室でほんの少しだけお話させて頂きました。勝手に描いていた俊輔選手の絵と思いのたけをお子様へのプレゼント付きで渡して、「すいません、怖いですよね、勝手に知らない人がこんな風にイラストを描いてて」って言ったらすごく笑って下さって、明るくていい方でした。ほんの数分、あくまで1ファンとしてお話させて頂いただけなので、ご本人は覚えていらっしゃらないかと思いますが、私にはとても大切な思い出です。そのあとどうやって家に帰ったのか、よく覚えていません。私はサッカーを見ていて、どんなに的確なダメ出しや批判よりも、悔しい気持ちでプレーし続ける選手のほうを尊敬したいなと思っています。プレッシャーのなかで、少なくとも私よりみんな努力をしているんじゃないかと想像できるから。俊輔選手をずっと見ていて、いろんな経験を経て精神面も行動も変えていくことができるんだと感じることがあって、私も頑張ろうとよく思います。

「Foot!」

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「Foot!」でイラストを使って頂くようになったきっかけは、一度ロケで使われた渋谷のサッカーカフェでイラストの展示をした事でした。試しにと番組にDMを送ってみたら、たまたまそのカフェでスタッフの皆さんが打ち合わせをする予定があり、絵を見て下さったんです。その後カフェ店主さんを通じてFoot!の皆さんや倉敷保雄さんにお会いする機会を頂き、最初はイラスト投稿みたいな感じでかなりゆるく始まりました。いま海外選手で描いていて特に好きなのは、アルシャビンですね。彼のプレーで好きなのは、なんか不思議とゴール前に侵入していってしまうところ。個人的にドリブルが好きなんです。俊輔選手も跳ねるようなドリブルに特徴がありますよね。私の好みの選手は、フォームや動きに特徴があって、どこか無駄な動きをしていたり、あまり整然とまとまりすぎていない選手です。例えばジダンはとんでもなく上手くてすごいけど不思議な動きをするし遠目でもすぐジダンだと分かる。レコバなんかバタバタしたドリブルで無理矢理左足にもっていって無駄のオンパレード、でもすごい。ちなみにレコバにはイタリア旅行した際に直接ファンレターを渡した事があり、俊輔選手に次ぐ、とてもエキサイティングな思い出です。

アルシャビンの愛すべき素直?な性格

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私が観ていて好きなのはプレーだけでなく、選手やお客さんやベンチの表情とか動きです。そこだけ見ていてもいいくらい好き。1試合通してみると、選手も監督も人間なので、ふっと人間性のでる瞬間がある。その瞬間が間抜けなシーンだったりするんですよ。だからピッチサイドにカメラが行く時はプレーよりも集中しちゃいます(笑)。アルシャビンなんか、ほんと目が離せないですよ。必ず何かやっていますから。一昨シーズン、チームに怪我人が多くFWに駆り出されてお疲れだった時期に、へとへとで途中交代する際、テクニカルエリアにいたべンゲルが、アルシャビンがちょっとプーッとむくれた感じ(彼にとっては天然で素直なだけでそんなつもりはないと思うんですけど 笑)でベンチに下がるのを、指示を出しながらも振り返って気にしていたんですね。でもアルシャビンはベンゲルの方を見てあげない(笑)。その時のアルシャビン越しのベンゲルのぼやけた映像が面白かった(笑)。ベンゲルはきっと「アルシャビン、つれないな~」とか思っているんだろうなと妄想してみたり。男の人って戦術とか語るのが好きですけど、私も含めて女性サッカーファンが、選手のキャラクターとか見た目から興味をもって入る見方にも楽しみってあるじゃないですか。勝敗や内容に腕組みして試合を観るのはサッカーの醍醐味の一つですけど、ただ好きーっていうだけで1試合わくわくして観れるっていうのもすごく幸せなこと。そういう意味で、プレミアリーグはお客さんの雰囲気やよくベンチを映してくれるカメラワークとか映像に色んな楽しみがあってすごくいい。降格が決まったチームなのに、泥くさいゴールを泣きながら喜んでいるぽっちゃり体型のおっちゃんファンの映像とか最高です。映った瞬間、ああこのおっちゃんはこれまで、ビールと揚げ物が美味くて仕方なかったんだろうな~、そしてこのチームが好きで仕方ないんだな~とか考えながら観て、ぐっときたりします。いろんな状況でも、みんなサッカーを楽しんでいていいなあ~と私もテンション上がります。

my dream

現実的な夢は、本を出すことです。2冊出したいなと思っている本があって、1冊はいまHPのDiaryの4コマに載せているような、アルシャビンを見てて思うことをまとめたいんです。その本を作って、いつか本人に見てもらえたりしたらとてもうれしい。彼に関してはどんどんアイディアが湧いてきます。プレーだけじゃなくてただ見ていても楽しいから、選手としての価値だけじゃなくこういう風にあなたを好きな人もいるんだよということを伝えたい。これ、ちょっと怖いですかね…。もう1冊は、ちょっとまだ温め中なので、こちらは不言実行でぜひ実現させて皆さんに見ていただけるように頑張ります。非現実的な夢だと、マルコの着ぐるみを着てピッチにマスコットとして立ってみたい。各チームの専属マスコットのお友達という設定とかで(笑)。元気のない選手のそばにちょっと寄ってみたりとか。着ぐるみを作る布も買ってあるので、今度売り込んでみようかと(笑)。自分のサッカー好きをもっと色々な形で表現できるようになるのが夢です。

内巻敦子が選んだベスト11

F.C.リベーロ・ポルトフィーノ、ベスト11

リベーロはイタリア語で“自由な”という意味で、ポルトフィーノは私の好きなイタリア・リグーリア州にある小さな入り江の名称です。お金持ちがひっそり訪れるリゾート地なので、こんなチームを作れるオーナーが現れるかもという架空のチーム。「つっこみどころ満載な出来事がたくさん起きそう」イレブンです。めちゃくちゃなチームですが、楽しいと思います。FWはスアレスとレコバの“ウルグアイ・前歯の系譜2トップ”です。MFにマイペースなアルシャビンと負けん気が強いウィルシャー。くねくねゆらゆらバレロンに、サッカーにはまるきっかけとなった中村俊輔選手。アンカーにはオルティゴサ。彼が画面に映るとほのぼのとしちゃいます。前が自由過ぎてDFは大変そうですね。GKはウルグアイ代表のムスレラ。監督は80歳のジョゼ・モウリーニョにお願いしたいです。そしてマスコットにマルコ。悩みに悩んで、控え選手にFWのパンディアーニとトケーロの2トップ。オルティゴサの交代枠でディエゴ・ペレス。ルシオの交代枠でウルグアイ代表でのキャプテンシーが熱いルガーノ。そして故・松田直樹選手。いつも何かを表現しようとしていて、何かを感じさせてくれる選手でした。どんどん前に上がってしまいそうですね。

内巻敦子 プロフィール

内巻敦子(ウチマキアツコ)

内巻敦子プロフィール

東京在住。以前は広告制作会社に勤務。07年からサッカー番組「Foot!」のサッカーイラストを描いている。その他、海外サッカー雑誌「footballista」の倉敷保雄さん月イチコラムや、集英社「小説すばる」の西村淳さんの連載エッセイのイラストを担当。その他最近の仕事では、バンド「TOTALFAT」の似顔絵ステッカーなど。J SPORTSオンラインショップにてポストカードセットとFoot!コラボのマグカップ・トートバッグが販売中。

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