サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

サッカー情報の老舗ウェブサイト「サッカー瞬刊誌 サポティスタ」。スタジアムでビラを配っていた95年から、98年という早い段階でウェブ版を開設。現在も多様な意見の受け皿として、様々な話題を喚起するカンフル剤として日々情報を更新しています。アイドルライターと二足の草鞋を履きながら、今あるべきサッカーの姿を提案、検証し続けているサイトの編集長・岡田康宏が語る日本サッカーが進むべき道。

ビラからフリーペーパー、そしてウェブへ。

サポティスタは元々、95年に浜村真也という人間がたちあげたサポーター・ネットワークです。当時、浜村さんは入替え戦の早期導入を訴えるビラをスタジアムで配っていました。96年にロフトプラスワンで浜村さんが企画した「サポーターのリーダーは何を考えているのか」っていうイベントにお客さんとして参加したんです。浜村さんをイベントで紹介されて、ちょっとしてから一緒にチラシを配ったりし始めたんですが、浜村さんは活動家タイプの人で、昔のアジビラみたいなものを配っていたんですね。それじゃいくら書いても読んでもらえないから、「サポティスタ」をタイトルにしてもっとフリーペーパーのようなものにしましょうと提案して、競技場でしか読めないサッカー情報誌「サポティスタ」が始まりました。98年フランスW杯からはウェブも始めます。「ほぼ日」とか「Nakata.net」と同じくらいのタイミングでしたね。2000年くらいからは実質的な編集を僕がやっていて、サッカースクールやコミュニティを作ったりする方に興味が移った浜村さんが辞め、僕が主体のメディアとしてやっていくことになりました。
サポティスタの活動と並行してライブハウスのロフトの出版部門で編集者として働いていたんですが、まだブログがない時代にブロガー的に情報発信していたのをおもしろがってもらって、そのまま物書きになり、いまにつながっていくことになります。

サッカー界を撹拌するために。

サポティスタの編集方針として変わらないのは、サッカーの試合そのものを取り上げるのではなく、社会を巻き込んで社会との関係の中で考えるということです。試合そのもののことはあまり載せていません。場外乱闘的というか、どうやったらサッカーがもっとおもしろくなるかということを考えています。浜村さんは90年代以降の青年運動の一つの形としてサポーターがおもしろいんじゃないかと考えていたんです。いま考えてみると、Jリーグは地域密着や地域振興と切っても切れない関係だし、若い世代のコミュニティや世代を超えた交流には便利な場所であるという意味であながち間違いではなかった。形は変わりましたけど、当時から社会やコミュニティみたいなことがおもしろくてずっとやっている感じはあります。

僕は自分の考えを伝えることではなく、議論の素材となるような問題提起をしていきたいんです。自分で動かすのではなく回転を早くするというか、潤滑油的なものなんですよね、サポティスタは。サッカー界は小さくて閉鎖的な世界なので、常に撹拌して流動性を高める必要があると思うんです。いわゆるフリーランニングというか、ボールを持たずに動き出す選手っていますよね。必ずしも動き出したところにボールが来るわけじゃないけど、誰かが動き出すことで相手の陣形が崩れて、フリーの選手ができてゴールにつながるような。最初に動き出した選手にはなかなかスポットが当たらないけど、自分はそういう動きができればいいなと。分かる人にはその価値が分る囮的な。

Jリーグが戦うべきは海外リーグではなく、国内の他コンテンツだ。

サッカーと同時にアイドルも好きで、仕事としても関わっています。95年くらいからライブ系アイドルの走りである制服向上委員会というアイドルを追いかけていたんですが、アイドルとサッカーには共通点があって、一貫して考えているのは現場で見たほうが楽しいということ。テレビの中のアイドルには、あまり興味がない。90年代以降、ライブを中心に活動するアイドルたちが出てきます。彼女たちはファンとの関わりがすごく密接で、声援や要望を取り入れながらファンに受けるキャラを取り入れていくという相互コミュニケーションが発生していて、それがおもしろかった。つまりファンはお客さんじゃなくて参加者なんですよ。作り手とお客さんがバラバラなものじゃなく、渾然一体とした中で出来上がっていく。サッカーもそうあるべきで、オシムがずっと言っていた言葉で、「日本のサッカーが本当に強くなるためには、サッカーの社会的価値が上がらなくちゃいけない」というのがあります。トルシエも、サッカーファンだけじゃなく、いかに社会を巻き込んで盛り上がっていけるかについて発言していました。ファンだけじゃなく社会から盛り上げられて初めて強いチームになると。ぼくもそのことは常に意識してやっています。

サッカー好きには、海外サッカーと日本のサッカーを比べる人が多くいるんですが、僕はJリーグが競争している相手は国内の他のコンテンツだと思っています。映画や音楽やライブですね。時間をどのエンターテイメントに使うのかという競争。そういう意味で、日本は時間の取り合いが最も激しい国のひとつ。ゲームも充実しているし、ニコ動のようなお金をかけずに楽しめるコンテンツが山ほどあるわけです。サッカーというくくりじゃなくて、一般のエンターテイメントと同一線上で語ったときに、サッカーっておもしろくて魅力的だとなれば、本当の壁を超えた感じがしますよね。サッカー関係者は世界のサッカーとの比較はできるけれど、日本の他の産業やコンテンツと比べてどういう立ち位置にいるのかにあまり関心がない。それも当然で、みんなサッカーが好きでサッカーコミュニティの中で生きてきたからなんですよね。ぼくは半分足をつっこみながら、半分は外側にいる。世界のサッカーはこうだけど、日本では携帯がこんなに進んでいるよとか、ニコニコ動画でもっとおもしろいことをやっているよという比較ができることが自分の強みだと思っています。

長谷部選手の本『心を整える』が100万部超えたというのは、サッカー選手の言葉がサッカーファンじゃない人にとっても価値のあるものだと感じてもらえるようになってきた証で、根付いたひとつの証でもある。これは中田英寿がずっとやろうとして出来なかったことだと思うんです。日本のサッカーの歴史にとってほんとにすごいのは、選手よりも「キャプテン翼」であり「ウィイニングイレブン」だと思うんですよ。それが日本のコンテンツ力。そういう日本の強みはもっと出していったほうがいいと思うんです。普通に時代に合ったことをやっていけばいいんですよ。何と言ってもJリーグは未だにウェブをメディアとして認めていませんからね。ネットのなかった20年前の規約がそのままになっている。そういうものを柔軟に変えられていない。エライ人が自分でわからなければ、それが分かる若い人に任せればいい。メディアやコンテンツの変遷とシンクロしていくべきなんです。サッカーがうまいという意味だけでないプロフェッショナルがもっと増えてくれるといいなと思っています。そして、その変化についていけるメディアでありたいと思っています。

日本のOSをアップデートするためのサッカー

大きな夢はなくて、自分ができるだけ楽しくやっていくことですかね。サッカーというよりも、日本社会そのもののOSのアップデートができていない今、それを変えていくためにサッカーが有効に活用できると考えています。
日本で暮らす人々がよりよくなるためにサッカーが貢献できるものになればいい。国際情勢を知ることも、授業よりサッカーの方が覚えやすかったりしますよね。ビジネスのことも含め、いろいろなことを知る教材としてサッカーは向いています。ただ勉強しようとするんじゃなくて、楽しんでいたらいつのまにか覚えていたという環境になればいいなと。

岡田康宏が選んだベスト11

「ワーワーサッカー」のためのベスト11

詳しくは『日本サッカーが世界で勝てない本当の理由』に書いているのですが、2002年のW杯でネット上から生み出された戦術「ワーワーサッカー」。トルシエ・ジャパンで言われ続けた得点力不足という現実を受け止めた上で何ができるかを考えた末に生まれたものです。2chはおもしろいですよね。普通はポジションで選手を見るところを、これはチーム内の役割で見るんです。同じポジションでもボールを奪う人と球を配る人では全然違う。正確なフィードを挙げられるからって必ずしも使えるわけじゃなくて、わけがわからないボールが混乱を起こして、こぼれたところからのチャンスということもある。そんな“ワーワースタイル”のベストイレブンです。

岡田康宏 プロフィール

岡田康宏(オカダ ヤスヒロ)

岡田康宏プロフィール

1976年、東京都生まれ。「サッカー瞬刊誌サポティスタ」編集人。編集者、ライター、コラムニスト、評論家。得意分野はサッカーとアイドル。著書・共著に『タレコミW杯』『サッカー馬鹿につける薬』『主審告白』『グループアイドル進化論』など。
http://supportista.jp/

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