サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

撃鉄というバンドを知っている人はまだまだ少ないだろう。けれども、サッカー好きは今後知っておいて間違いはない(はず)。高校のサッカー部だったメンバーで結成された撃鉄のフロントマン天野ジョージは、フットサルのセミプロとして活動し、バンドマンのフットサル大会「音蹴杯」では得点王にも輝いた。サッカーで培った身体性と天性の悪ノリでステージ(や客席)を駆けまわる男が語るサッカー、そしてフットサル。

音楽とフットサル

音楽に専念しようと思って、競技としてのフットサルは2年くらい前に辞めました。いまは30代がメインのチームのコーチとバンドマンチームのメンバーとして活動しています。その前は小学生のコーチとサッカーのクリニックでブラジル人監督の下で働いていたんですが、フットサルコートの責任者が中国人に変わったタイミングで監督が代わり、自分も一緒に辞めることに。そうしたら、そこで教えていた人たちが個人的にでいいから教えてくれないかと言ってくれて。それから仕事として教えています。けっこう時給もいいんですよ(笑)。

3000円を盗まれてやめたクラブチーム

もともと小学校と中学の初めまではクラブチームに入っていたんですが、けっこう強いチームに入ってしまってずっと補欠。そのクラブチームは、中学の時に3000円盗まれたことに衝撃を受けて辞めました。中学の途中からは部活に入り、部内では上手い方ではあったんですが、選抜に選ばれるほどでもなく全国に行くわけでもなく、すんなり高校時代が終わります…(笑)。部活の引退後、先輩に「おまえ、フットサルやりたいだろ」と言われて、断れなくて始めたのがフットサルのきっかけでした。でも、やりはじめたらサッカーよりも向いていたんですよ。フットサルだと、ひとりでも点が取れますよね。力の差があればあるほど自分で試合を決めるようなプレーもできる。もちろんチームプレーありきですけど、コートも狭いしシュートを打つ回数も多かった。もともと、ドリブルやシュートが好きだったというのもあります。ドリブルひとつとってもフットサルは足の裏しか使わなくて、サッカーと違うんですよね。背が小さかったので、そういう小刻みな動きも向いていたのかもしれません。ただ、練習はあんまり好きじゃなかったな。ものすごく走るチームで、1点取られるごとにコート10周の罰があって、試合に出ていないのに連帯責任でずっと走らされていました…。それでも楽しかったんですよ。たぶんちょっとだけサッカーが上手かったんだと思います(笑)。もう少しでも下手だったら、たぶんつまらなくてやめていた。楽しいと思えるくらいには上手かったという、微妙なラインでやってきました。
当時、友達が横浜マリノスを好きだというので、俺も何となく好きかもとなって好きになっていました。人任せ(笑)。サッカーを始めたきっかけの友だちと同じやつなんですけど、幼稚園から一緒で、実はいまのバンドのギター森岡です(笑)。森岡は僕よりもさらにサッカーが下手でした。ドラム以外は、高校のサッカー部で一緒だった3人で結成したバンドで、4人のなかでは僕がいちばん上手いですね、たぶん。

どこならフィットするのか。関東リーグ→都リーグ→関東リーグ→Fリーグ→関東リーグ

高校を卒業して進路を考えていたとき、サッカーをもうちょっとやりたいなと思いつつも、ファッションにも興味があって服飾の学校に行きました。サッカーじゃ飯食えないだろうとも思っていた一方、案外いけるんじゃねえかと思っている自分もいて、高校のときFC東京のセレクションを受けたこともあるんです。イケると思っていたら全然ダメでしたけど(笑)。
卒業後にフットサルを始めて、たまたま練習生として行ったチームが、Fリーグという全国リーグが出来る前のトップリーグ「関東リーグ」で優勝していた強いチームで、当然試合には出られず、人間関係もどうにも殺伐としていてしんどかった。そのチームに耐え切れず、関東リーグの下の東京都リーグのチームに入り直して、そこでは試合に出ていました。順位は下から数えた方が早いチームだったんですけど、その年のリーグ得点ランキングで2位に入って、「あれ、これいけちゃうなオレ」と。改めて関東リーグの違うチームにセレクションで入り、2軍からはじめて1軍に上がるというタイミングでFリーグが開幕。何とか1軍には残ったんですが、やっぱりめちゃくちゃレベルが高くて、また試合に出られなかった(笑)。
並行してバンドもやっていたんですが、試合に出ていたらフットサルを続けていたかもしれないですね。全国リーグのチームに所属はしていても、結局東京都リーグでしか出ていなかった自分が不甲斐なくて、その間の関東リーグでやってみようと2年くらいやっていました。だんだんバンドが忙しくなってきてライブと試合が日曜でかぶり、練習も出たり出なかったりが続いて試合にも出られず、あまりにも中途半端すぎてチームをクビになったタイミングで、メンバーが応募していたフジロックの「Rookie a go go」というステージに奇跡的に合格したんです。全国リーグだったので、他県のチームを紹介してもらったりもしていたんですけど、これを機にバンドに集中しようと思ったんです。

サッカーはバンドと繋がるか

撃鉄はサッカー部のメンバーで作ったバンドなんですが、サッカーの経験は活きていると思います。あ、いや、ウソつきました、活きてないな(笑)。ギターの森岡のポジションはDFで、ベースの田代がMF、ぼくが前より。バンドの役割とポジションとの関係性は、もしかしてあったりするかもですね。ドラムの近藤はサッカー部ではなかったんですが、いまのチームではGKをやっていて、ちょっとうまいんですよ。太った見た目の割には。でも僕は、近藤はGKだけでなくFWにもなれると思っています。あいつはまだ自分を出し切れていない。すごくおもしろいやつで、潜在能力はすごくあると思うんですけど、キャラを発揮し切れていない。サッカーに例えると、GKだけど点を取ることもできる男なのにということですね。キャラクター的にはもっと前に出ていけるはず。キャッチコピーが「いつも言い訳ばかりの喘息持ちドラマー」。追い込まれるとすぐ喘息の吸引器を吸い出します(笑)。

“俺が俺が”の調和具合

サッカーは耐えるスポーツであるとも言われていますけど、僕はそういうのは苦手。点をいっぱい取りたいという前のめりの性格を、チームスポーツというところで上手く抑えてもらえていたのかもしれません。個人競技だったらダメになっていたと思います。サッカーでもフットサルでも俺が試合を決めてやるっていう気持ちだし、その気持ちは今でも何においても変わっていません。試合となればそれぞれがみんなの責任を背負っている部分はあるわけで、大切なのは俺が俺が感をどうチームに馴染ませるか。いまのバンドは俺が俺が感をわりと出せているとは思うんですが、もっともっと出していきたい(笑)。
以前小学生にフットサルを教えていて、すごく上手な子が、上手いからパスを出さずに全部自分で行っちゃったんですね。生意気だなと思って、そういう子は俺が一度直々に止めてやろうと大人の体を当てながら厳しさを教えてやっていました。そうしたらその男の子が味方から全然パスを出してもらえなくなって、自分のミスで点を取られているのに、イライラしてボールを外に蹴りだしたりしちゃった。お母さんも空気を読んで「うちの子、もう外しちゃってください」と言ってくれたんですけど、俺も最後まで責任取ろうと思って、「おまえ、負けていても最後まで諦めんなよ」って言ったんですけど、最後も外に出しやがった。今度は俺がギレて、「ちょっと来い!何なんだよあれ」「だってあいつらクソなんだもん」「おまえがクソだよ。周りがクソとかいうようなやつはサッカーやめちまえ」って、それでもその子は「辞めない」と頑張った。その時ふと思ったんですよ。団体競技でどんなうまいやつがいても、馴染めなかったらだめなんですよね。サッカーからそういうことを学ぶことってあると思うんです、実体験を通して。上手けりゃいいじゃない。怒りながら学びました。自分が、そこで(笑)。

フットサルに恩を返したい

 

フットサルをやってきて、サッカーとフットサルの違いっていちばんは人数だと思うんです。22人て意外と気軽に集められないけど、フットサルだったらだいたい半分で済む。バイト先のスタジオでチームを作ったり、月2回くらいバンドマンフットサルを主催したりしているんですけど、有名なバンドも無名なやつもいて、フットサルをやらなかったら出会わないような人たちがそこで出会うわけです。年も離れているけど、スポーツをやっているときはタメ口でもいいし、そういうのってすごくいいんですよ。自分がフットサルから学んだことも大きいし、バンドマンフットサルとしてフットサルにも返していきたいと思っています。フットサルをやるときは撃鉄のメンバーにも一応声はかけるんですけど、ギターはバイトばっかりで来ないです。ドラムは言い訳しながら、だいたい来ます(笑)。バンドマンのフットサルチームってたくさんあるんですよ。わかりやすいところだとミスチルの桜井さんのチームとか。そういうチームを自分の力で呼べるようになりたいですね。テレビで放送されるような、派手なのがいいですね。
それと実は、関東リーグのフットサルチームのテーマソングと、自分が所属していたFリーグのペスカドーラ町田の応援歌も歌っているんです。そういう今までやってきたこと全部と、これからコラボしていきたいですね。

天野ジョージが選んだベスト11

ベストイレブン

小学校生のとき、Jリーグ開幕当初のベストイレブン。憧れの外国人選手がたくさんいた、僕のサッカー青春時代の幕開けでした。オールスター感謝祭的な(笑)。監督は野球の長嶋茂雄で。やっぱり、夢を与えたいですね。何かが起こりそうで、何が起こっても盛り上がりそう。

フォーメーション:3-4-3
監督:長嶋茂雄(読売ジャイアンツ終身名誉監督)

FW:中山雅史/武田修宏/三浦知良
MF:ラモン・ディアス/ピエール・リトバルスキー/ジーコ/ビスマルク
DF:柱谷哲二/井原正巳/秋田豊
GK:松永成立

天野ジョージ プロフィール

天野ジョージ(アマノ ジョージ)

天野ジョージプロフィール

85年、東京都世田谷区出身・丑年の魚座生まれ・気合い入ってるB型。Eternal Sunshineのサウンドトラックが好き。ギターの森岡にその度胸を見込まれヴォーカルを担当。感情をストレートに解き放つからこそ生まれる鋭い切れ味と桁違いの瞬発力は、フットサルプロチーム所属当時に鍛え上げた肉体から溢れるもの。アクロバティックなステージは、オープニングからトップスピードでハイテンション。http://gekitetu.jp/

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