サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

超攻撃的サイドバックとしてフィールドを駆け抜け、W杯初出場の原動力としても活躍した名良橋晃。現在はユースチームを指導しながらサッカー解説を行い、先日のスルガ銀行チャンピオンシップのための南米チリ取材も行なってくれた。現役から退き、広い視野でサッカーを眺める名良橋の目には、どんなサッカーの未来が映っているのだろうか。

現役引退から4年で見えてきたこと

現役を引退してから4年が経ちましたが、昔と比べてもサッカーを楽しいと思う気持ちは変わっていません。当然プレーすることは好きでしたが、現役の時からサッカーを観るのも大好きでした。現役時代はサイドバック(SB)だったので、どうしてもSBの選手に注目して見てしまっていましたが、引退してからは組織や戦術、監督の采配術のように幅のある見方ができるようになりました。少しずつですが、自分で見方を変えてきた感覚があります。それでもやっぱりSBの選手には注目しちゃいますけどね。

翼くんに憧れて

サッカーを始めた頃は、ボールがあったらどこでもサッカーをやりたい少年でした。今も家に柔らかいサッカーボールがあって、家の中でも蹴っちゃってます(笑)。目の前にボールとか丸いものがあると自然に身体が反応しちゃうんですよ。リフティングしちゃったり。職業病じゃないですけど、昔から近くにあったボールで遊ぶ楽しさが今でもずっと続いているってことでしょうね。
始めたきっかけは、まわりの友達からの影響と、『キャプテン翼』でした。多くの少年がそうだったように、翼くんになりたいと思っていて、マネをして歩道橋でリフティングをしたり、スパイクで出歩いたりしましたよ。人にすごく注目されてしまって、スパイクでの外出はやめましたが(笑)。翼くんは完全にやりすぎ(笑)。なので、当然のように翼くんになる夢は夢のまま終わりました。

SBというポジション

サッカーはボールがありさえすればできて、試合じゃなければ少ない人数でも遊べる。気軽に友達づくりもできる本当に素晴らしいスポーツだと思います。プレイヤーとして感じる魅力はやっぱりゴールですよ。今でこそSBですが、高校まではFWだったんです。足が速かったので、監督に前をやれと言われたのが最初で、当時はボールを持ったらひたすらゴールに向かっていくという、連携とか連動性を全く考えていないFWでした。翼くんに憧れながら、直線的ドリブルの日向小次郎スタイル。一回相手を抜いてゴールする喜びを覚えてしまうと、中毒になっていきましたね。それがいつしかポジションが徐々に下がり、ここまで下がったらキーパーしかポジションないよってところまで下がってきて、SBに。というのも、千葉県選抜で国体出場したときに中盤を任されたんですね。そこでまずひとつポジションが下がります。中盤でも得点する機会はあるので、喜びはまだ感じていたんですが、日本ユースの代表に選ばれたとき、当時の監督にウィングバック的なボジションで使いたいと言われてコンバート。実際トライしてみたら、すごく難しかった…。FWだったのが急に守らなくちゃいけなくなったわけで、守備の間合いや基本的な守備を一からやり直しましたよ。本当に難しかった。でも、FWは、DFを背負った状態でボールをもらうことが多いじゃないですか。それに対してSBは、自分が前を向いた状態でボールをもらえることが多くて、自分の前にスペースがあるので、逆に僕の特長であるスピードが活きるなっていうのを感じたんです。守備は嫌でしたが、その前のスペースを使うことに楽しさを見出してやっていました。それと1対1の守備で相手に勝つという喜びは増えましたよね。結局ベルマーレ平塚に入ってからも、ユース代表でウィングバックをやっていた流れで自然とSBをやることになったんですが、FWをやっているよりもスムーズに平塚というチームに入っていけた気がします。もし平塚でFWをやっていたら、果たして日本代表としてW杯にも出られたかどうか…。そこが僕のターニングポイントじゃないですかね。コンバートを言ってくれた永井良和さんには頭が上がらないですね。

子どもたちは、楽しみながらサッカーをやってほしい

僕は攻撃的なSBとしてやらせてもらって、ポジションにこだわりがすごくあった。いろいろなポジションをやって自分の幅をつくりたい選手もいれば、僕のようにひとつのポジションでプレーし続けたい選手もいると思うんです。いろいろな特徴のサッカー選手がいるなかで僕が感じるのは、日本の若い世代は技術がある分、特徴をもった選手が減っていってしまったんじゃないかという寂しさです。監督としてはユーティリティプレーヤーが増えて、考えの幅も広がるとは思うんですが、観ている方としてはこの選手は得点力があるとか、ヘディングが強いとか、そういう個性という視点で見れる選手が減ってきてしまっている。いまの代表選手でいえば、長友選手は運動量があってっていうのがわかるじゃないですか。そういった個を強く意識した選手がでてきて欲しいなっていうのはすごく思います。
南米の選手は1対1でボールを持ったら、どうフェイントを使って、どのルートを行けば相手を抜けるかを考える。若い選手ならネイマール、ちょっと前ならロナウジーニョ。メッシもそうですが、技術やパスセンスはもちろん、遊び心もすごくある。スペインだったらイニエスタとかシャビとか。指導者もいろいろな方がいます。最近はサッカーに詳しい指導者が増えてきましたけれど、昔はサッカーを知らない体育の先生が監督をしていたくらいでした。だからこそ逆に選手が自分たちで考えながらプレーをしていたとも思うんです。今は指導者の方が色んな横文字を使って、考えながらプレーしろと言っていますけれど、昔は指導者に引出しがなかった分いやでも選手が考えていました。指導者が全て指示を出すのではなくて、自由にやらせること。本当に必要なことを一つ二つ言って、後は自分たちでやらせるようなことも必要になってきているのかなと。昔だったらボールを持ったら全員抜いてゴールまで行っちゃうよ、みたいな選手もたくさんいました。サッカーは点を多く獲った方が勝つスポーツだからこそ、そういうアイディアも大切だと思うんです。子どもたちの中には指導者やお父さん、お母さんの目線を気にしてしまう選手もいるんですが、それはよくない。自分が楽しまないとやっていても充実感はないと思う。サッカーを楽しめる選手たちが増えていけば、これからもっともっと良い結果がでてくると思います。

指導者として、サッカーをやってきたものとして

若い世代の選手を育てたい。サッカーの技術だけではなく、人間的にも素晴らしい選手を育てていきたいなというのはあります。もちろんプロの監督にも興味があるんですが、トップチームの監督は完成された選手を相手にしているから、主に勝つことや戦術の指導になってしまう。でも、育成は未完成の選手たちを相手に個を育てていくことができる。個人を育てながら、チームの結果も出していきたい。今後変わっていくこともあるかもしれないですが、今はそういう選手を育てていきたいという気持ちが一番です。
もっと大きな視点で言うと、男子の日本代表はW杯で決勝トーナメントにいき、五輪ではベスト4に入った。なでしこに至っては世界一になった。僕たちの時代と違って追われる立場になってきたいま、サポーターの見る目もすごく厳しくなってきています。W杯優勝も現実的になってきていると思うので、代表選手だけでなくサポーターやマスコミも日本サッカーを盛り上げて、優勝するにはどうすればいいかを一人ひとりが考える時代になってきたのかなとも思うんです。惜しい試合っていうのはもうなしなのかなと。惜しい試合をどうやったら勝てるのかという意識を持っていってほしい。

名良橋晃が選んだベスト11

ふたりのSBから始まるベスト11

両SBから始まる、SBの攻撃的なスタイルを活かした攻撃的なチーム。なので、まずジョルジーニョとロベルト・カルロスは決定。あと、この方を入れないと怒られると思うので、ジーコ。トニーニョ・セレーゾもですね。監督は僕でお願いします。とはいえ、こんなメンバーでやれれば、監督はもはやいらないかな(笑)。

フォーメーション:4-3-3
監督:名良橋晃

FW:エデル・アレイショ・デ・アシス/エドソン・アランチス・ドゥ・ナシメント(ペレ)/マヌエウ・フランシスコ・ドス・サントス(ガリンシャ)
MF:ロベルト・リベリーノ/アルトゥール・アントゥネス・コインブラ(ジーコ)/トニーニョ・セレーゾ
DF:ロベルト・カルロス/ニウトン・サントス/ジョゼ・オスカー・ベルナルディ/ジョルジェ・デ・アモリン・カンポス(ジョルジーニョ)
GK:クラウディオ・タファレル

名良橋晃 プロフィール

名良橋晃(ナラハシ アキラ)

名良橋晃プロフィール

1971年千葉県生まれ。現役時代は鹿島アントラーズやベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)でプレー。日本代表として、フランスW杯出場経験を持つ。引退後は指導者資格を取得する一方で、JFAアンバサダーとしてサッカーの普及に尽力。また、Jリーグや海外リーグのサッカー解説者としても広く活躍している。

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