サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

シンガー、モデルなど多方面で活躍するマルチタレント峰麻美は、年間70試合以上観戦し、Jリーグ応援番組【サポレポPodcast】【J.Chan】にもMCとしてレギュラー出演。ROVERS FCの公式応援マネージャーやカンボジアンタイガーFC公式アンバサダーを務める一方、その毒舌ぶりから「美し過ぎるフーリガン」とも呼ばれている。良薬口に苦し。ベガルタ仙台サポの峰が語る、厳しくも真摯なサッカーへの想い。

仙台に縁もゆかりもない私がベガルタ仙台サポーターになった

もともと事務所に所属して、音楽活動を主にやってきた人間でした。ところが、2011年の震災で事務所の音楽関係の事業が一旦止まってしまった。そんな時、SNSでサッカー好きを公言していたら声をかけていただいたのが、仕事としてサッカーに関わった最初でした。
茨城出身で仙台に縁もゆかりもない私がベガルタ仙台サポーターになったのは、阿部勇樹選手と関口訓充選手がきっかけ。アテネの時から阿部勇樹選手がすごく好きで応援していたのですが、ジェフからレッズに移籍になった時、どうしても浦和を応援する気持ちになれなかったんです。フィーリングがちょっと違う、というか。同じ頃、ベガルタがJ1に昇格できるかという時期で、自意識過剰に「このチームを応援するべきだ」という気持ちになったんです。09年当時、関口選手はまだ所属していて、代表に選出されるかとまで言われていた好調期でした。同い年ということもあって「この選手を応援したい」と思えたことと、天邪鬼なので、有名選手を応援するより「自分が見つけた!」という気持ちでいられる選手の方が嬉しいし、応援しがいがあるというのもありました(笑)。それで関口選手を応援し始め、そのまま仙台の試合をひとりで観に行くようになったんです。
 

応援するクラブが強い弱いというのは、結果でしかありません。

ベガルタを良いチームだと実感したのは、忘れもしない2011年、震災の年です。前年の2010年、14位でギリギリ残留できたくらいのチーム力だったので、「まぁ、昇格したばっかりだし、こんなもんか」と正直思っていました。ところが翌年、開幕して1試合終えたところで、忌まわしい震災があってサッカーどころじゃなくなりました。サポーターの中にも亡くなった方もいたし、身内を亡くした方だっていらっしゃったはずです。そんな被災地を本拠地とするベガルタの選手たちは、現地で泥まみれになりながらボランティア活動をしていました。ただお金を寄付して終わりではなく、そういうことを経験したことで、サポーターの想いも選手の想いも、もちろんフロントスタッフの想いもひとつになった。「前年14位だし、今年は10位ぐらいが目標。できれば一桁」くらいの目標に定めるのが順当、もっと言ってしまえば「今年も残留したい」で終わっていたような目標だったはずが、重圧を感じつつも皆がひとつになって戦い、結果クラブ史上初の4位にまで登り詰めることができたんです。実力だけでそこまでいけたかというと私は違うと思っていて、サッカーはメンタルスポーツだし、自分のために頑張るのって限界があると思うんです。どんな仕事でも誰かのために頑張ると、自分が思う以上の力が出せる気がするので、そういう力が働いて最高順位につながったんじゃないかな。あの2011年というのは、クラブとしても、人としてもそういうのを見られたことが本当に大きかった。実際私の友だちにも身内を津波で亡くされた方もいましたし、そういう方たちがベガルタの試合で一喜一憂して、その時だけは辛い気持ちを忘れられていたあの感覚。不幸が起きてしまった以上はそれをプラスに捉えるしかなくて、それが「こんなにうまくいっていいのか」というぐらいうまくいった年だった。翌年は優勝できませんでしたけど、2位というさらに上にいけた。みんなが、責任と前年4位のプライドも持ちつつ戦えたし、チームだけでなくサポーターの心構え、選手の心構え、見ている方の気持ちの入り方も違った。ベガルタは、スーパーなチームではないけれど、そういうひとりじゃ絶対できないことをみんなでやっているチームなんですよね。
だから応援するクラブが強い弱いというのは、結果でしかありません。もちろん負けるのは嫌だし、優勝できるのならしたいけれど、それは最終的な積み重ねの結果。強いから弱いからという感覚ではなくて、みんなでという感覚です。その時にできたサポーターの友だちとは、今ではベガルタの試合がなくてもディズニーランドに行ったりして遊んでいます。きっかけはたまたまだったかもしれないけど、自分が仲良くしている友達が一生懸命応援しているクラブを私も一緒になって応援したいんです。
 

正直ゴール裏からだとオフサイドすらわからない(笑)

ベガルタや日本代表の試合は、チャントを歌ったり、選手のコールをしたりしながら絶対ゴール裏の席で応援します。黙って観ているより声を出して、点が入った時はハイタッチして、ピョンピョン跳ねて喜ぶ。変なジャッジが入った時は叫びます。ゴール裏って、自分を解放できるというか、ストレス発散の一面もあるんですが、声を出してみんなで歌って楽しめる場所だと思うので、恥ずかしいとは全く思いません。ただ、ゴール裏からだと正直見にくい(笑)。点が入ったのは何となく見えつつも、他の観客の喜び方で分かるぐらいなんです。ゴール裏で見るのは雰囲気を楽しみたいというのが大きくて、冷静に見たい試合はメインやバック、もしくはテレビでも観ます。その方がやっぱりボールの流れ自体は見やすい。奥行きを判断できないので、正直、ゴール裏からだとオフサイドすらわからない(笑)
 

どんな時でもベガルタを応援してきた人たちがさじを投げる瞬間

ベガルタの試合で一番あたまに残っているのは、2012年の札幌戦です。悪い意味で絶対忘れられない。2012年は前年の4位があって、序盤からずっと首位で走ってきていたんです。ところがやっぱり夏はベガルタ恒例の衰退期が…。サポーターは、普段おとなしそうな人たちでも感情を解放して、喜ぶ時は全身で喜ぶし、ふがいない試合をしたら自分の応援している選手であってもブーイングもします。ただあの時の様子は違いました。前年に震災があり、選手もサポーターも、ベガルタが強くなることで、震災で傷ついた人たちがちょっとでもポジティブになれるんじゃないかという、地域を背負うような気持ちでまとまっていたと私は勝手に思い込んでいた。試合結果としては、2-1だったので惜敗ではあったと思うんです。でも、その時の札幌は最下位で、当時J2だった山形を別にすれば地域的、心理的に1番近いチームというのもあって、「ビリの札幌に負けるはずがない」とどこかでみんなが思い、なめていたところもあったと思う。自分としては「負けてむかつく」とは思っていたけれど、一致団結していたはずの他のサポーターたちが急にバラバラになって、選手に野次の域を越えた、活字にしたくないぐらいの罵声を浴びせ始めたんです。試合中に応援を止めて横断幕を片付けてしまっていました。前年の震災で失ったものもたくさんあるけれど、諦めずにがんばって生きていこうという想いがあったのに、こんなになっちゃうんだという衝撃。2対1だったら、正直残り数秒までまだ結果は分からないじゃないですか。ブザービートで点が決まっちゃうことだってある。最後まで諦めちゃいけないと思っていながらも、みんな感情がついていかなかったのかもしれません。震災もJ2の入れ替え戦で辛い思いをした時もずっと見てきた、どんな時でもベガルタを応援してきた人たちがさじを投げる瞬間、というのを見てしまった。その時「あ、この人たちは人生を賭けて応援しているんだ」というのを知った気がしました。選手たちも負けたくて負けているわけでは絶対ないですし、もちろん勝つつもりで戦っているんだけれど、たぶんサポーターも優勝争いへの可能性について気負い過ぎていたのかも知れないですね。
 

大きな都市やチームになると、選手とサポーターで考えていることに温度差がある

サポーターのなかでも多少の温度差もあったと思います。先陣を切っていたのが応援を先導しているコアと呼ばれる人たちで、太鼓のバチを叩き付けていた。Jリーグのもったいないところで、自然発生系の応援ではなく、先導する人たちがチャントや選手の名前を決める権利があるような状況。戸惑った人も中には絶対いたんですよ。「まだ終わってないんだからやろうよ」という気持ちの人たちが、実際行動に移せたかというとそういうことはなくて、一緒になって怒った人も、「え、どうして止まっちゃったの」くらいの感覚の人もいて、温度差は確かにあったと思う。前年も残留争いで苦しみましたし、8戦を勝ちなしで始まったんですけれど、その時も空気は悪かったなー。だけどブーイングしたい人と「次がんばれば良いじゃん」と拍手で選手を迎える人とで別れたんですよね。だけど札幌ドームの時は、拍手をする人がひとりもいなかったと思います。そんな状況で選手を見るのも辛かった。
サポーターと選手、チームの関係性は、クラブの特色や規模によってかなり違うと思いますけれど、ベガルタに関して言うと、良い時は選手に無茶振りができるほど仲がいいんですが、時に近すぎるのも違うのかなと思うんです。難しい問題なのですが、地方の限られたサポーターしかいないチームであればもっと近くてもいい、という気もします。サポーターと選手の間に立つこの仕事をしてわかったのは、ベガルタくらいの大きな都市やチームになると、選手とサポーターで考えていることに温度差があるということなんです。サポーターは悔しい負け方をした時、「気持ちが見えない」とか言うんですけれど、選手にとって「気持ちが見えない」なんてことは実際にはなくて、彼らはそれを仕事にして生きているわけで、死に物狂いのはずだし、「負けても悔しそうに見えない」と言われても絶対悔しいに決まっている。そこは分かり合えるところじゃないし、歩み寄れもしないと思うので、ある程度距離はあった方がいいと思っています。
対戦するチームとそのサポーターに関しても、憎しみに近いものはあると思いますよ。でもはっきり言って、サッカーのサポーターはいろいろなことを根に持ち過ぎです。私も人のことを言えないですけれど、みんな歩く年表みたいになってますから(笑)。特に相性の悪いチームとか、「あの試合で負けたから降格した」とかキーになった対戦相手のことを本当に覚えているし、何年経っても「あー、あの98年のやつでしょ」とか「あいつ元気かなー?」とか(笑)。歴史が短い分、それをずっと見てきたという自負があるんでしょうね。
 

中国のチームのようにお金をかけているチームはどんどん大きくなってきている

Jリーグは、外を見る、外に発信していくというのがまだまだ足りないと思っています。外資のスポンサーが解禁になったばっかりですけれど、まだまだついてきていません。親会社があるチームで、そこを超えるような胸スポンサーは簡単につくものではないと思うんです。ACLを見ていても、中国のチームのようにお金をかけているチームはどんどん大きくなってきているし、大きくなればなる程注目も高まって、いい循環が生まれていくはず。フォルランとは言わないですけれど、ワールドクラスの選手をJの開幕当初ぐらいに連れてこられれば、国内外でJの知名度や関心は広がると思う。一番足りないな、と思うのはそういうビッグネームの外国人選手を取ってくる気概のあるチームですかね。
 

カンボジアは、サッカーでお金を稼ぐという概念がまだない

わたしがアンバサダーになったカンボジアリーグのチーム「カンボジアンタイガーFC」は、オーナーが日本人で、日本のビジネスモデルをカンボジアで使おうとしています。あっちはサッカーでお金を稼ぐという概念がまだないんだそうです。つまり観客として試合を観に行って楽しむという習慣や概念がなく、それゆえサッカー選手がそれで飯を食うという方向にならない。しかもお金がもらえないからすぐに諦めてしまうんだそう。Jリーグだと「2-0なんて危険なスコア」と言われるくらい、しょっちゅうひっくり返る点数ですけれど、あっちの人たちはお金にもならないし客も見ていないから、2-0になったら歩き始めてしまいます。そういう国があるアジアにおいて、日本はサッカーの超先進国なわけで、引っ張って行くような立場にいないといけない。Jのビジネスモデルを使ってカンボジアンタイガーFCを盛り上げれば、それに乗っかる他のチームも現れるだろうし、それによってリーグ自体が活性化する。カレン・ロバートがオーナーをしている千葉県社会人2部「ROVERS FC」というチームの公式応援マネジャーもやっているのですが、関係者以外にはほとんど知られていないので、まず認知度を! という点でローヴァーズとカンボジアンタイガーはまったく同じ。お金がなくてまともな生活ができない人たちがたくさんいる国で、サッカーをちゃんとビジネスにして「サッカーがお金になる」と認識されれば、下世話な話かも知れないですけれど、みんな頑張るじゃないですか。そうしたステップアップの夢を描けるようにすること。Jリーグはカンボジアサッカーとも提携を始めたので、日本のピークを過ぎた選手の移籍先としてカンボジアがひとつの受け入れ口になる可能性も出てくると思うし、時間はかかるかもしれませんが、もうちょっと頑張ったら逆に輸入パターンも出てくるはず。私は、何も知られていないカンボジアのサッカーを、カンボジアンタイガーを中心に日本で広めたい。ニコ生でカンボジアンタイガーFCの番組をやっているのですが、カンボジアンタイガーのことだけを発信しても観ている人たちはあまり興味が持てないと思うので、カンボジアや東南アジア、要はアセアンまで幅を広げて、日本じゃないアジアの国、特に発展途上国のサッカーを取り上げています。日本でもバックパッカーでアジア地域に行く方々もたくさんいらっしゃるので、そうした皆さんが「アンコールワットを観に行こう」の延長で「そういえばカンボジアのサッカーも観に行こう」と、ひとつの選択肢になるように発展できればと考えています。
 

「カンボジアってほとんどのチームがプノンペンらしいよ!」

正直なところ私も勉強しながら番組をやってるんです(笑)。というよりも、こちらから一方的に教える姿勢ではなく、視聴者の方と一緒に私が驚きながら学んで、話していく。「あのね、この前聞いたんだけど、カンボジアってほとんどのチームがプノンペンらしいよ!」とか(笑)。実際12チーム中11チームがプノンペンなんですよ。こういう話って、Jリーグのチームが地域密着で全国に点在している日本ではみんな想像できませんよね。そういう情報がそのまま自分の驚きになるし、それはつまり視聴者の驚きでもある。ローヴァーズもカンボジアンタイガーも、新鮮なものをなるべくリアルタイムで、興奮冷めやらぬ衝撃のまま発信できたらいいですね。
 

ベガルタ優勝。いや、言い過ぎました。

子どもも大人も含めて、日本の全国民が一度はスタジアムか競技場で試合を観たことがあるくらいまで裾野が広がるといいですね。サッカーの試合を自分の意志で観に行く時代になってくれたら。
あとはベガルタ優勝。いや、言い過ぎました。今年は残留できればいいです…。現実を見据えた上での夢をつくっていかないと、ただの妄想で終わっちゃう。いや、でも難しいですね。残留とか言っちゃうと「お前はもっと上を目指さないのか!」とか言われるな…。優勝はできるならもちろんしたいけど、最近は守りに入りすぎて「数年以内に優勝」と言っています。今年とは言い切らない(笑)。悲しいかな、女性は現実的なので…。男の子みたいに「優勝するんだよ!」というよりは、「いやいや、まずは残留でしょ。ベガルタのレベル考えて」となってしまうんですよね
 

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峰 麻美 プロフィール

峰 麻美(ミネ アサミ)

峰 麻美プロフィール

茨城県出身。シンガー、モデルなど多方面で活躍するマルチタレント。その毒舌ぶりから「美し過ぎるフーリガン」の異名を持つ。フットボールチャンネル運営のJリーグ応援番組「J.CHAN」でMCを担当。ROVERS FCの公式応援マネージャーやカンボジアンタイガーFC公式アンバサダーも務めている。ベガルタ仙台サポ。
 

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