サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

清水エスパルス、浦和レッズ、名古屋グランパスなどで活躍した元日本代表・三都主アレサンドロ。2016年に現役を引退した現在は、故郷ブラジルで自身が立ち上げた団体「INSTITUTO ALEX SANTOS」の代表を務め、スポーツの力を借りながら子どもたちの健全な育成環境の構築に取り組んでいる。団体を立ち上げた思いやユニフォームに描かれた犬の理由を聞きながら、8月15日に行われる「スルガ銀行チャンピオンシップ2017SAITAMA」の展望についてもプレーヤー目線で存分に語ってもらった。

スポーツを通じて子どもたちに夢を

2014シーズン限りでFC岐阜を離れた僕は、2015年の2月にブラジルへ戻りました。その後は親孝行もできるように地元のマリンガFCでプレーをし、2016年まで現役生活を続けました。もともとサッカー選手だった父親や母親は日本で僕のプレーを見る機会も少なかったので、両親の前でサッカー選手・三都主アレサンドロを2年間も見せることができて、少しは親孝行ができたのかなと思っています。
昨年の9月に現役最後の試合を終えた後は、次のステップに踏み出したいと、2016年12月に「INSTITUTO ALEX SANTOS」という機構・団体を立ち上げました。サッカーはもちろんのこと、柔道や空手、キックボクシング、柔術、カポエラ、ストリートダンスなど、スポーツを通じて健全な子どもが育つようにサポートをする団体です。
日本の場合は朝から午後の遅くまで学校に通うことができますが、ブラジルの子どもたちは午前か午後のいずれかの時間帯しか学校に通わず、自由な時間も多いため、非行に走ってしまうケースが少なくありません。特に家庭が裕福ではない子どもたちは窃盗やドラッグに手を出してしまうこともあるため、スポーツに打ち込むことで非行の道に走ることを食い止められるように、僕たちの団体は活動しています。
子どもたちがスポーツに夢中になれる環境を整えるために、ブラジルで所有している別荘にあったグラウンドやジム、そしてプールをトレーニング施設としてリフォームし、今では練習場として活用しています。畳が敷かれた柔道場もあります。ユニフォームやボール、柔道着など必要なものをそろえるにはお金がかかるので、今はスポンサーの力を借りながら必要な道具をそろえています。現在、この事業に賛同してくれるスポンサーはブラジル国内の企業だけですが、今後はさらにこの事業を大きくしたいと思っていますので、日本で賛同してくださる企業がいる場合はぜひ力を貸してほしいですし、営業もしていかなければいけません。
今、僕が着ているウェアの首元には日の丸を形どったデザインが入っています。これは日本をリスペクトしてのことです。イメージカラーのブルーはもともと僕が好きな色であることと、日本代表のブルーの意味も含まれており、日本との縁を忘れずにいたいという思いを込めています。
また、この犬のキャラクターは忠犬ハチ公の秋田犬をイメージしたものです。日本でハチ公の映画を観た際にすごく感動をして、主人が来るのを駅で根気強く待ち続けるハチ公のような精神力が人間を成長させると思い取り入れました。またこのキャラクターの舌も、日本との縁を大事にするという意味で日の丸をイメージしています。僕たちの団体に所属している子どもたちは「僕たちは秋田犬のチームだ! 頑張ろうぜ。ワンワン!!」と掛け声をかけるくらいすごく気に入ってくれているんですよ(笑)。
僕は小さなクラブでスカウトされて日本にやって来ました。決して裕福な家庭に生まれたわけではありませんが、日本でチャンスをもらって、日本代表選手にまで登りつめることができました。スポーツの世界は厳しいです。必ずしも道が切り開けるとは限りませんが、スポーツの力を借りながら、多くの子どもたちにチャンスを与えたいと思っています。まだインストラクターの数も限られているため、あまり大規模に生徒を募集していません。現在は150人程度しか所属していませんが、今後は500人、1000人と子どもたちをサポートできる団体にしていきたいと思っています。それが今の僕の夢です。
 

スルガ銀行チャンピオンシップはスピーディーなゲームになる

浦和レッズvsシャペコエンセは、どちらのチームのことも知っている身(04年~06年、08年~09年夏まで浦和レッズに在籍)としては純粋に楽しみです。
アウェイに乗り込んでくるシャペコエンセですが、あの痛ましい飛行機事故のことを考えると、今でも心が痛みます。友人のケンペスが乗っていたので、その報せを聞いたときはとても悲しい気持ちになりました。ですが、チームはファン・サポーターのためにも先に進まなければなりません。シャペコエンセはチーム再建を余儀なくされましたが、それでもまたブラジル全国選手権に出場するなど、短期間で立て直せたことは本当に素晴らしいことだと思います。今の選手たちからはシャペコエンセのユニフォームを背負う責任と重みが伝わってきますし、僕としては亡くなった選手やクラブスタッフ、彼らの分も一日一日を大事に生きていきたいと思っています。
昨年の12月にはジーコ主催のチャリティーマッチが、ブラジルサッカーの聖地・マラカナンで行われました。ジーコを始め、僕が小さい頃に憧れていたジュニオールやチッタ、そして現役選手であるネイマールなども参加し、シャペコエンセのサポーターも含めて数多くの人たちが詰め掛けていました。シャペコエンセ・コールでスタジアムは一体化していましたし、7万人近いお客さんがマラカナンに集まっていました。個人的には初めてマラカナンでプレーできたので、ジーコには本当に感謝しています。
試合展開の予想ですか? 大会に優勝したチームしか立てない舞台ですし、浦和はアジアの意地、シャペコエンセは南米の意地、それぞれがぶつかり合う白熱した攻防になると思います。シャペコエンセはシャープで守備も堅く、攻撃もすごく速いチームです。両ウイングの選手はスピードがあって、ドリブルが得意な選手がそろっています。展開の速いゲームになるんじゃないですかね。
シャペコエンセは大きな街にあるチームではありませんが、サポーターとクラブが一体となっている情熱的なチームです。そういったチームを相手に浦和がどう戦うのか見モノですし、間違いなく良い勝負になると思いますよ。
最近の浦和は、リーグ戦でも毎年のように優勝争いを繰り広げており、優勝を義務付けられたクラブとなりました。ファン・サポーターやメディアなど周囲からの期待もすごく大きいですが、それをプレッシャーと感じずにこの大きな舞台でのびのびとプレーしてほしいですね。
個人的には6万人が入った満員の埼玉スタジアムでシャペコエンセを迎えてほしいなと思います。2006年のJリーグ最終節でガンバ大阪と優勝を争った試合は約6万2000人の観衆が詰めかけていました。満員のお客さんがスタジアムを埋めてくれると、負ける気がしませんでしたし、実際に当時の浦和はホームで負けませんでした(リーグ戦ホームゲーム、15勝2分)。6万人が入ると、スタジアムを包むオーラも違います。その空間は「浦和の強さは埼スタにある」と思えるものでした。
僕は強い浦和に戻ることを強く願っています。この「スルガ銀行チャンピオンシップ2017 SAITAMA」という難しい国際試合に勝つことで自信もつけて、その後のJリーグやACL(AFCチャンピオンズリーグ)で良い成績を残せるように頑張ってほしいですね。
 

三都主アレサンドロが選んだベスト11

今まで一緒にプレーした選手ベストイレブン

テーマは「今まで一緒にプレーした選手ベストイレブン」。エスパルス、浦和、名古屋、日本代表と、一緒のチームでプレーした選手から選びましたが、11人に絞るのはすごく難しかったです。
ゴールキーパーはナラ(楢崎正剛)。日本代表でも名古屋でも長く一緒にプレーしました。尊敬できるゴールキーパーだし、「なんでこんなシュートを止められるんだ?」というほどのセービング技術がある。だからこそ、長く現役でプレーできるんでしょうね。
ヤマ(山田暢久)はもう引退したけど、J1で500試合に出ているし、ナラはJ1で600試合以上、中澤も500試合出場を越えている。彼らはJリーグの出場試合数がすごいですよね。長期のけがをせずにコンスタントに出続けているのは素晴らしいことです。
齊藤俊秀さんは相手に突破されるのを見たことがありません。この人の精神力は強いし、体を投げ出してでもゴールを死守するプレーはなかなか見られるものではありません。それだけすごいディフェンダーでした。
リベロには浦和と名古屋で一緒にプレーした闘莉王を選びました。ディフェンダーだけど、前での仕事ができる貴重な選手だし、ディフェンダーにしておくにはもったいないぐらい。攻撃参加を含めて、リベロのポジションがいいかなと。チームの心臓部とも言える中盤はサイドに僕とヤマ、中には中村俊輔、稲本潤一、ヒデ(中田英寿)と、この5人で担います。ヒデはボールを取られないだろうという安心感があったし、稲本は2002年日韓W杯のときのようなパフォーマンスで攻守に存在感を発揮してくれるはずです。
前線はエメルソンとワシントン。タメを作るならばワシ。一人で突破するならばエメ。強さと速さのある2トップです。この二人は止められないでしょう。
11人に入らなかったメンバーも豪華ですよ。例えば、清水でプレーしたオリバ。どこからでもシュートまで持ち込める「なんだコイツは?」みたいな選手でした。あとは名古屋で一緒にプレーしたケネディ。高さと言えばケネディでしょ。身長が2メートル近く(194cm)あるのに、ジャンプ力がある。正確なボールが彼に入ったら相手選手は勝ちようがない。ちょっと卑怯ですよ(笑)。ケネディの存在は。
 
フォーメーション:3-5-2
 
括弧内は選んだ選手と三都主アレサンドロさんが一緒にプレーしたチーム
 
GK
楢崎正剛(名古屋、日本代表)
DF
齊藤俊秀(清水)、田中マルクス闘莉王(浦和、名古屋、日本代表)、中澤佑二(日本代表)
MF
山田暢久(浦和)、三都主アレサンドロ、稲本潤一(日本代表)、中村俊輔(日本代表)、中田英寿(日本代表)
FW
エメルソン(浦和)、ワシントン(浦和)

三都主アレサンドロ プロフィール

三都主アレサンドロ(サントス アレサンドロ)

三都主アレサンドロプロフィール

1977年生まれ。1994年、ブラジルから高知県明徳義塾高校にサッカー留学のため来日。1997年、清水エスパルスに入団。左サイドのスペシャリストとして頭角を現す。1999年には史上最年少の22歳でJリーグMVPを獲得。2001年11月日本に帰化。2002年日韓W杯、2006年ドイツW杯では日本代表に選出。2016年、ブラジルで現役を引退し現在は「INSTITUTO ALEX SANTOS」の代表に就任。
 

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