サッカーを愛して止まないあの人の ゆめのはなし

ドイツW杯に出場するなど、実績と人気を備えた日本を代表する右サイドバック・加地亮。惜しまれながら昨季(2017年)限りでスパイクを脱いだが、彼が選んだセカンドキャリアは、なんとカフェ店員。その「CAZI CAFE」でこれまで経緯や、サッカーとカフェ店員の意外な共通点などを語ってもらった。そして、「ゆめのはなし」史上もっともキレッキレのベスト11の全容は!?

「美味しいものを食べて欲しい」シンプルな願いが客足を伸ばした

カフェがオープンしたのは7年前です。嫁が始めたのですが、彼女には実家が民宿という背景はあるものの、経営のこと営業のことに詳しいというわけでもなかった。このあたりには子供連れで外食できるお店が少ないこともあって、「ダメだったらやめたらええやん」みたいな感じでスタートしたのを覚えています。当時まだ僕は現役でしたので、将来ここで働くなんて想像もしてなかったですね。
今はおかげさまでお客さまも大勢来ていただけるようになって、従業員も増えました。でも、テレビや雑誌で取り上げられたからとか、何か特別なきっかけがあったわけではありません。本当に少しづつですが、徐々に来てくれるようになった。理由があるとしたら味で勝負できていたのかな、とは思います。
僕らの故郷の淡路島には、魚も鶏も野菜も美味しいものが多いです。よく「淡路島のいいPRになってますね」なんて言ってくれる方もいますが、それよりも単純に「美味しいものを食べて欲しい」という思いが強いですね。
僕がカフェで働き始めたのは、引退してからです。この春ですね。
引退に関しては多くの方が「まだやれるんちゃうか」と言ってくれました。確かに、言葉は悪いですが、適当にだましだまし現役生活を延ばすことはできたかもしれません。でも、ピッチの中はもちろん、私生活も含めてすべてにおいて100%サッカーに向き合えるか、やり切れるか、そう考えると妥協してしまいそうな自分もいたんです。その考えが頭をよぎる時点で「ああ、これは退いた方がいいな」という結論になりました。いいシーズンの時は「来年も頑張ろう。こういうトレーニングに挑戦して、あんなプレーを増やそう」というイメージが自然に浮かぶんですけどね。
ただ、その一方でセカンドキャリアは正直、特に考えてなかったです。よく「指導者にはならないんですか?」と聞かれますが、今のところまったく考えてないですね。サッカーを教えるのは対人間ですから、それぞれ感情も性格もみんな違う。難しいですよ。あとはどちらかといえばまだ指導されたい側なので。
とはいえ、生きていかないといけないので、今はシフトに組み込まれて皿洗いして賄い食べて。僕は幸いこのカフェがあったのですっと入りましたが、「引退後はこれをする」と決めてたわけではありません。やっぱり、引退後のことをあれこれ考えながら現役生活を過ごすのは難しいですから、セカンドキャリアへの取り組みはJリーグの課題の一つでしょうね。
 

カフェ店員・加地亮の日常とサッカーとカフェの共通点

だいたい毎朝、7時前後に起きます。9時前には自転車で出勤して11時の営業開始までひたすら掃除です。オープンしてからはドリンクを作ったりかき氷を作ったりしながら皿洗いですね。
ランチが終わると一度、休憩をもらって洗濯したりとか子供の宿題見たりして、家のことを済ませてから夜のオープンの17時前後には店に戻ってきて、また皿洗いです。最後までいたら賄い食べて、終わるのは23時を過ぎた頃、帰宅は24時くらいですかね。労働時間は現役時代より圧倒的に長いです。現役の時は早く寝て早く起きて、食事もしっかりしたものを決められた時間にという規則正しい生活だったので、今のリズムをつかむまでは正直、きつかった。「働くって大変やなあ」と38歳で知りました。
でもこの年齢になって初めてサッカー以外の同僚ができると、「意外とサッカーと一緒やな」と気づいたりもします。サッカーに監督がいてコーチがいて選手がいるように、カフェには店長がいて社員がいてアルバイトがいる。高いパフォーマンスを発揮するためには段取りを踏まないといけないし、それぞれがお互いのことを知らないといけないし、現場では気を利かせて助け合わないといけない。そして何よりもお金を払ってくれる方を満足させないといけない。これはきっと、いろんな仕事に共通するんでしょうね。日々、勉強させてもらっています。
だから、今は楽しいです。現役時代のサポーターやファンの方々が来てくれるのは嬉しいですが、さらにその方々が「美味しかったです」とか「雰囲気も良かったです」とか言われると最高です。「ああ、皿洗ってて良かったなあ」と思いますね。「あの試合のクロス、すごかったです」と言われるより、ワールドカップに出られたことより嬉しいです。
夢ですか? うーん、「夢」というにはあまりにささやかですが、普通に生きていけたら。おいしいメシを食って、しっかり働いて、よく寝る。その普通の暮らしが最高の幸せだと思っています。ちなみに僕が最近、好きなおいしいメシは店のメニューにもある、淡路牛を使った煮込みハンバーグです。ぜひ食べに来てください。
 

加地 亮が選んだベスト11

エッジが効きすぎてるベスト11 「声だけでかいヤンキー」とは誰だ!?

GKの松井謙弥は石原軍団っぽい彫りの深い顔だちだけどシャクレ気味なので、一見、おもろいんですけど、それだけですね。出オチです。サブには岡山で一緒で、マニアックなプロレスのモノマネをやっていた松原修平。ファン感でやった岩政大樹のマネはややウケくらいでした。
最終ラインの右は俺です。最強におもんないのは僕だと自覚してますから。CBはツネさんと戸田。ツネさんはみなさんの抱いているイメージ通りで、あまりにクールすぎてやっぱり面白くなかったですね。もう一人は「戸田」と呼び捨てですが、もちろん名解説者の戸田和幸さんではありません。滝川二で一緒だった、戸田良行という誰も知らない男です。顔は肉マン、身体は豚汁のスッポンマーカーとしてごく一部のストライカーに恐れられていました。左はアレサンドロしかいないでしょう。自分から発信せずに誰かがウケたものに便乗し何度も繰り返し言うパクリ屋です。あと、UNOが死ぬほど弱かった。残りが1枚や2枚ならまだしも、6枚も7枚もまだまだカードを持ってるヤツに「あと何枚? あと何枚?」と何度も確認する。「まだかなりあんで。自分で数えろや!」とよく怒られていましたね。
中盤の右サイドは安田ミチ。彼はシンプルに言って、大阪によくいてる “テンション上げて喋って自分で笑っておけば何とかなる” と思っている、声だけでかいヤンキーですよ。ファンの皆さんは決して錯覚しないでください。髪型だけは若干、おもろいですけどね。その実の弟・晃大が中央です。彼は兄と対照的も対照的で、もう「無」ですね。空気より薄いんちゃうかな。リアクションも薄い。誰かが何か言ってもうっすら笑ってるくらいかな。左の秋吉は、ボールをキープしてしっかりさばいてくれる中盤のいい選手なんですけど、ピッチの外でボケることボケること全部おもんない。ヨーロッパリーグを渡り歩いていて、今はヴァンラーレ青森にいます。
FWはまず右にセレッソに同期で入った宮川大輔。芸人の宮川大輔さんと同姓同名というだけで対談していましたが、おもんなかったですね。センター右には“Mr. おもんないストライカー”といっても過言ではない播戸竜二で決まりでしょう。大トリは阿部吉朗。いつ会っても安定のおもんなさは、むしろ清々しいくらいです。
このひどいイレブンを指揮する監督は滝川二高の恩師・黒田さん。カレーが大好きでご飯やうどんはともかく、ラーメンも「カレーラーメン」が大好きな愛すべきカレー親父で、俺たちはみんなで「あれ、カレーかかってれば何でもいいんちゃうか」と陰口を叩いたものです。頑張れ、黒田和生! 俺たちはみんなカレー親父のこと、大好きです。
 
【加地亮が選んだベスト11】
最強におもんない選手で作ったベスト11
フォーメーション:4-3-3
監督:黒田和生
GK:
松井謙弥
DF:右から
加地亮、宮本恒靖、戸田良行、三都主アレサンドロ
MF:右から
安田理大、安田晃大、秋吉泰佑
FW:右から
宮川大輔、播戸竜二、阿部吉朗
 
 

加地 亮 プロフィール

加地 亮(カジ アキラ)

加地 亮プロフィール

1980年1月13日、兵庫県南あわじ市生まれ。滝川第二高校卒業後、セレッソに入団し、大分トリニータ、FC東京、ガンバ大阪などでキャリアを積む。ジーコ、オシム、岡田武史といった歴代の代表監督にも重用、代表キャップも64を数え、06年のドイツW杯にも出場。MLS移籍を経て、17年はファジアーノ岡山でプレーし、同年オフに引退を発表した。18年春からCAZI CAFEのスタッフとしてドリンクと洗い場を担当している。箕面の食べどころ「CAZI CAFE」(http://cazi-cafe.com/
 

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